著者
村上 道夫 大沼 進 柴田 侑秀 高田 モモ 小林 智之 後藤 あや 保高 徹生
出版者
一般社団法人 日本リスク学会
雑誌
リスク学研究 (ISSN:24358428)
巻号頁・発行日
pp.SRA-L-22-021, (Released:2022-12-26)
参考文献数
30

The environment surrounding surveys requiring the cooperation of participants has been changing, with increasing awareness of the need to protect personal information and the use of online surveys. Issues such as how to respond to inquiries from participants, what should be communicated to relevant bodies in advance about the survey, and how to provide incentives and feedback to participants are important to ease tension and prevent conflicts between participants and researchers, or between researchers and relevant bodies, and to increase the public trust in researchers and the science. Based on the authors’ experiences, this letter summarizes notes for conducting surveys that require participants’ cooperation. As the social impact of research has been gaining increasing attention, it is expected that practical tips and views on conducting field surveys are widely shared.
著者
安藤 香織 大沼 進
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.1607, (Released:2017-09-13)
参考文献数
27

本研究では,北海道,東北,関東,中部,関西の5地域の大学生を対象とした質問紙調査により,東日本大震災後の節電行動の規定因を検討した。東日本大震災後には日本全国で電力供給量不足が深刻となり,節電の呼びかけが行われた。駅や公共施設などでは照明を暗くするなどの節電が行われた。先行研究では,周りの多くの他者がその行動を実行しているという記述的規範が環境配慮行動に影響を及ぼすことが指摘されている(e.g., Schultz, 1999)。本研究では,公共の場での節電を観察することが記述的規範として働いたのではないかという仮説を検討した。質問紙調査の有効回答数は計610名であった。分析の結果,公共施設等での節電の体験,他者の実行度認知共に個人の節電行動に有意な影響を及ぼすことが確認された。また,震災による価値観の変化,エネルギー問題の深刻性認知,計画停電の体験,地域の電力不足の認知も節電行動に有意な影響を及ぼしていた。災害後で電力供給力が逼迫しているという特殊な状況下においても記述的規範が節電行動に影響を及ぼすことが確認された。最後に公共の場で節電が個人の節電行動に及ぼす効果についての議論を行った。
著者
森 康浩 小林 翼 安保 芳久 大沼 進
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.160-171, 2016-03-18 (Released:2016-03-28)
参考文献数
42
被引用文献数
2

The purpose of this study is to investigate extrinsic and intrinsic motivation factors relating to long-term household energy-saving behaviors. Sixty-nine households from Asahikawa City, Japan, participated in a one-year energy-saving project, reporting monthly actual energy use of electricity, gas, and paraffin oil. Participating households also completed a questionnaire at the beginning, the half-way point, and upon completion of the one-year project. Results showed that intrinsic motivation such as enjoyment and interest impacted both self-reported and actual energy use. Moreover, intrinsic motivation at 6 months had an effect on behavior at one year. Meanwhile, extrinsic motivation, provided in the form of points, failed to impact behaviors, although extrinsic motivation at 6 months affected intrinsic motivation at one year. The role of extrinsic motivation as initial participation encouragement, and the effect of intrinsic motivations on long-term behavior are discussed.
著者
中谷内 一也 大沼 進
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.187-200, 2003-03-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
37
被引用文献数
2 2

本研究の目的は, 千歳川放水路計画を取りあげ, 人々が環境リスクマネジメントの政策決定においてどのような合意形成のあり方を望むのかを検討することである。札幌市民から無作為抽出した成人324名を対象に質問紙調査を行った。調査結果から以下のことが明らかにされた。(1) 近傍一般市民の環境アセスメントへの広義の信頼を改善するためには, 事業者の不誠実な行為へのモニタリング機能を整備することが有効である。意図への期待が損なわれているときに, 専門的能力の高さをアピールしても効果はない。(2) 近傍一般市民が好意的に受け取る紛争解決方法はかなり強い当事者主義であり, 決定プロセスのどの局面においても利害関係者の意見を入れることを望む。これらの結果からもたらされるリスクマネジメント実務への示唆を検討した上で, さらに, 理論的な問題を議論した。
著者
足立 千尋 大沼 進
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.65-71, 2021

本研究は 2020 年 7 月に施行されたレジ袋有料化の影響を調べるために,札幌市内のコンビニエンスストアの店頭にて次の観察調査を行なった;1-1) 有料化前後での人々の行動の変化,1-2) 有料化を導入した店舗と導入していない店舗でレジ袋辞退率の比較,2) 有料化後もレジ袋を購入する客の購買時の特徴の調査。調査 1 は 2020 年 6 月から 8 月に店頭にて実施し,観察による 554 のデータを得た。有料化前後において有料化を行なった店舗とそうでない店舗で辞退率が大きく異なっていた。調査 2 は 9 月に実施し,4,289 のデータを得た。レジ袋辞退率と購入者の属性の関連について分析を行なった。その結果,レジ袋辞退率に関して以下のような買い物客の特徴が確認された;a) エコバッグ持参率は全体的に低く,b) 弁当やそれに準ずるものを購入するときや購入点数が多いときに辞退率が低かった,c) 声掛けがない場合のほうが辞退率が高かった。
著者
北梶 陽子 曽根 美幸 佐藤 浩輔 小林 翼 大沼 進
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.115-122, 2016-11-30 (Released:2016-11-30)
参考文献数
26

This study investigated the effects of imagining others on cooperation in a one-shot Prisoner’s Dilemma (PD) game. There are two ways to imagine others’ perspectives: “imagining the other” or considering how the other person feels, and “imagining the self” or projecting oneself onto the other person. Participants were assigned to one of three conditions: a) the imagining-other condition, b) the imagining-self condition, and c) the control condition (thinking about a landscape). Participants played a one-shot PD game and completed the social value orientation (SVO) scale, which measures one’s cooperative tendency. Results showed that the cooperation rate was higher in the imagining-other condition, and participants in the imagining-other condition expected that the partner would cooperate and that the partner thinks they would cooperate. In contrast, in the imagining-self condition, no significant differences were observed about these variables. Furthermore, the cooperation rate increased mediated by two-way expectations in the imagining-others condition, while it was not observed in imagining-self conditions. These results show the importance of imagining others not as a reflection of self, in increasing expectation of mutual cooperation and promoting cooperation.
著者
安藤 香織 大沼 進 安達 菜穂子 柿本 敏克 加藤 潤三
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.1816, (Released:2019-03-26)
参考文献数
40

本研究では,環境配慮行動が友人同士の相互作用により伝播するプロセスに注目し,調査を行った。友人の環境配慮行動と,友人との環境配慮行動に関する会話が実行度認知や主観的規範を通じて本人の環境配慮行動の実行度に及ぼす影響を検討した。調査は大学生とその友人を対象としたペア・データを用いて行われた。分析には交換可能データによるAPIM(Actor-Partner Interdependence Model)を用いた。その結果,個人的,集合的な環境配慮行動の双方において,ペアの友人との環境配慮行動に関する会話は,本人の環境配慮行動へ直接的影響を持つと共に,実行度認知,主観的規範を介した行動への影響も見られた。また,ペアの友人の行動は実行度認知を通じて本人の行動に影響を及ぼしていた。結果より,友人同士は互いの会話と相手の実行度認知を通じて相互の環境配慮行動に影響を及ぼしうることが示された。ただし,環境配慮行動の実施が相手に認知されることが必要であるため,何らかの形でそれを外に表すことが重要となる。環境配慮行動の促進のためには環境に関する会話の機会を増やすことが有用であることが示唆された。
著者
佐藤 浩輔 大沼 進
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.94-103, 2013

The current study investigates the influence of social factors, such as self-interest and involvement, on trust and its determinants, in the context of public decision-making in government, through two scenario experiments. In both experiments, participants' involvement (high/low) and, subsequent interest in the high-involvement condition (agreed/opposed) were manipulated and two trust models were compared: a traditional model, which regards expectation about intention and competence as the component of trust; and an SVS model, which regards perceived salient value similarity as the primary determinant of trust. Two hypotheses were tested: 1) conflict of interest diminishes trust and value similarity; 2) expectation of the government's intention consistently predicts trust in government, regardless of self-interest. The results supported both hypotheses. Implications of value similarity in the context of public decision-making are discussed.
著者
MILLER Alan・S 山岸 俊男 大坪 庸介 山岸 みどり 大沼 進 ミラー アラン
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究の主要な成果は、以下の4点にまとめられる。(1)信頼と社会的知性との関連について。囚人のジレンマ(PD)における他者の行動予測の正確さが、共感4因子のうちの、想像性因子とのみ関連しており、他の因子とはほとんど関連していないことが明らかにされた。PDで協力行動を取った人物の顔写真と、非協力行動を取った人物の顔写真の再認において、後者の写真の再認率が前者の写真の再認率を上回ることが明らかにされた。(2)集団所属性に基づく信頼について。集団所属性にもとづく内集団成員に対する信頼が、内集団成員に対するポジティブなステレオタイプによって支えられているのではなく、集団内部に一般的互酬性が存在するという直感的な集団理解により支えられていることが明らかにされた。(3)信頼関係形成プロセスにおけるリスクテイキングの役割について。信頼関係形成に際して、リスクの程度が外的環境により決定される状況と、リスクの程度を自分で決定できる状況とを比較することで、リスクテイキングのオプションが信頼関係の形成を促進することが明らかにされた。(4)情報の非対称性が存在する社会関係での信頼行動を支える評判システムの役割について。情報の非対称性が存在するインターネット・オークション市場を再現した実験を実施し、適切な評判システムが存在しない限りレモン市場化が確実に発生することが明らかにされた。更に、単純な評判システムではレモン市場問題の有効な解決をもたらされないことが確認され、適切な評判システムを支える条件についての示唆が得られた。これらの研究成果は、リスクテイキングを中核とする信頼行動を生み出す心理的プロセスと、社会制度の両面から、信頼社会形成のための条件を明確にしている。
著者
安藤 香織 大沼 進
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.128-135, 2018 (Released:2018-03-03)
参考文献数
27

本研究では,北海道,東北,関東,中部,関西の5地域の大学生を対象とした質問紙調査により,東日本大震災後の節電行動の規定因を検討した。東日本大震災後には日本全国で電力供給量不足が深刻となり,節電の呼びかけが行われた。駅や公共施設などでは照明を暗くするなどの節電が行われた。先行研究では,周りの多くの他者がその行動を実行しているという記述的規範が環境配慮行動に影響を及ぼすことが指摘されている(e.g., Schultz, 1999)。本研究では,公共の場での節電を観察することが記述的規範として働いたのではないかという仮説を検討した。質問紙調査の有効回答数は計610名であった。分析の結果,公共施設等での節電の体験,他者の実行度認知共に個人の節電行動に有意な影響を及ぼすことが確認された。また,震災による価値観の変化,エネルギー問題の深刻性認知,計画停電の体験,地域の電力不足の認知も節電行動に有意な影響を及ぼしていた。災害後で電力供給力が逼迫しているという特殊な状況下においても記述的規範が節電行動に影響を及ぼすことが確認された。最後に公共の場で節電が個人の節電行動に及ぼす効果についての議論を行った。
著者
杉浦 淳吉 大沼 進 広瀬 幸雄
出版者
NPO法人 日本シミュレーション&ゲーミング学会
雑誌
シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.27-37, 2021-06-25 (Released:2021-06-30)
参考文献数
27

本研究では,論争のある社会問題について当事者の選好を参照しながら意思決定を行うことを通じて政策決定とその評価の熟慮のプロセスについて学ぶゲーミング・シミュレーションを開発した.ドイツのノイス市における路面電車に関する問題について取り上げた.ノイス市では,中心地の狭い通りを走る路面電車の路線について,市民の利便性の点から存続させるか,安全性などの点から撤去するかの論争があった.開発したゲームの実践において,参加者は,最初に路面電車の問題の背景について講義を受けた後,2~5名からなるグループごとに,2009年にノイス市で実施された社会調査をもとに作成された市民のプロフィールカード3名分を参照しながら6つある論点について優先順位をつけ,3つの選択肢(存続,単線化,撤去)から1つを選んだ.特定の価値だけでなく,市民全体の価値の意見分布に関する熟考を促すために,個々のプレーヤーの優先順位づけした論点がグループで選んだ選択肢と合致するほど得点は高くなるようにした.ゲーム後のディブリーフィングでは,各グループの選択と得点結果を実際のノイス市での政策決定と比較しながら議論した.振り返りの結果から,各自の優先順位と市民プロフィールをもとに議論し,市民全体の意見分布も加味して多様な価値をバランスよく取り入れることで利害対立を避けることができていたプレーヤーほど得点は高くなっていた.最後に,実際の当事者の意見を参照しながら意思決定を行う本ゲーミングの応用可能性について議論した.
著者
北梶 陽子 大沼 進
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.9-19, 2014-04-25 (Released:2014-04-15)
参考文献数
29
被引用文献数
7

This research demonstrated the negative influence of monitoring and punishing during a social dilemma game, taking the illegal dumping of industrial waste as an example. The first study manipulated three conditions: a producing-industries monitoring condition (PIM), an administrative monitoring condition (ADM), and a control condition (no monitoring). The results showed that non-cooperative behavior was more frequent in the PIM condition than in the control condition. The second study had three conditions: a punishing condition (PC), a monitoring condition (MC), and a control condition (no monitoring, no punishing). The results indicated that non-cooperative behavior was observed the most in the PC, and the least in the control condition. Furthermore, information regarding other players’ costs and benefits was shared the most in the control conditions in both studies. The results suggest that sanctions prevent people from sharing information, which decreases expectations of mutual cooperation.
著者
大沼 進 北梶 陽子
出版者
NPO法人 日本シミュレーション&ゲーミング学会
雑誌
シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.5-16, 2007
被引用文献数
1

<p>社会的ジレンマ構造に,利得や情報の非対称性,フローの一方向性,信頼ゲームなどの要素を取り入れた「産業廃棄物不法投棄ゲーム」を開発した.このゲームは五つの異なる利得を持つプレーヤーからなり,利益と産業廃棄物を生み出す排出事業者,産業廃棄物の量を減らす中間処理業者,埋め立て処理をする最終処理業者,産業廃棄物を運搬する一次収集運搬業者および二次収集運搬業者が存在する.いずれの業者も,協カ(適正処理や処理委託)と非協力(不法投棄)を選択できる.8ゲームを実施し,次の結果が得られた.①フェイズを追うごとに不法投棄が減った.②処理フローの下流に行くほど不法役棄が多かった.③排出事業者は罰金やゲーム後の費用負担を恐れて委託金を低く抑える傾向があり,その結果,下流で適正処理費用が不足し不法投棄が増え,多くの費用を負担しなければならなくなった.④業者間の評価では,接触できないプレーヤーに対して信頼が低く,逆に,接触できるプレーヤーに対しては比較的信頼していた.</p>
著者
大沼 進 北梶 陽子
出版者
日本シミュレーション&ゲーミング学会
雑誌
シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.5-16, 2007-07
被引用文献数
1

社会的ジレンマ構造に,利得や情報の非対称性,フローの一方向性,信頼ゲームなどの要素を取り入れた「産業廃棄物不法投棄ゲーム」を開発した.このゲームは五つの異なる利得を持つプレーヤーからなり,利益と産業廃棄物を生み出す排出事業者,産業廃棄物の量を減らす中間処理業者,埋め立て処理をする最終処理業者,産業廃棄物を運搬する一次収集運搬業者および二次収集運搬業者が存在する. いずれの業者も,協力(適正処理や処理委託)と非協力(不法投棄)を選択できる.8ゲームを実施し,次の結果が得られた.①フェイズを追うごとに不法投棄が減った.②処理フローの下流に行くほど不法投棄が多かった.③排出事業者は罰金やゲーム後の費用負担を恐れて委託金を低く抑える傾向があり,その結果,下流で適正処理費用が不足し不法投棄が増え,多くの費用を負担しなければならなくなった.④業者聞の評価では,接触できないプレーヤーに対して信頼が低く,逆に,接触できるプレーヤーに対しては比較的信頼していた.The"Industrial Waste Illegal Dumping Game" is based on a simulated social dilemma structure with aspects of asymmetry of incentive and information,one way flow of waste,and trust game. There are five different types of players in this game: the producing industries who produce money and waste; the mid-process industries who can reduce waste; the terminal industries who reclaim waste in landfill; the first and the second carriers who convey the waste. All players have to make decisions between cooperation (appropriate disposition and commission) and non-cooperation (illegal dumping). Eight games were conducted and the following are the results obtained: 1) Illegaldumping decreased over phases. 2) The players in downstream of the waste flow did more illegal dumping. 3) The Producing industry did not pay enough money to allow appropriate disposition,because they feared paying for potential fines and environmental restoration after all sessions are completed. Lack of initial spending money brought about more illegal dumping,causing later defrayment of greater costs. 4) Players who could not move were likely to be evaluated as less trustful,while those who could move were likely be evaluated as trustful.
著者
大沼 進 北梶 陽子
出版者
NPO法人 日本シミュレーション&ゲーミング学会
雑誌
シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.5-16, 2007-07-25 (Released:2020-10-01)
参考文献数
27
被引用文献数
2

社会的ジレンマ構造に,利得や情報の非対称性,フローの一方向性,信頼ゲームなどの要素を取り入れた「産業廃棄物不法投棄ゲーム」を開発した.このゲームは五つの異なる利得を持つプレーヤーからなり,利益と産業廃棄物を生み出す排出事業者,産業廃棄物の量を減らす中間処理業者,埋め立て処理をする最終処理業者,産業廃棄物を運搬する一次収集運搬業者および二次収集運搬業者が存在する.いずれの業者も,協カ(適正処理や処理委託)と非協力(不法投棄)を選択できる.8ゲームを実施し,次の結果が得られた.①フェイズを追うごとに不法投棄が減った.②処理フローの下流に行くほど不法役棄が多かった.③排出事業者は罰金やゲーム後の費用負担を恐れて委託金を低く抑える傾向があり,その結果,下流で適正処理費用が不足し不法投棄が増え,多くの費用を負担しなければならなくなった.④業者間の評価では,接触できないプレーヤーに対して信頼が低く,逆に,接触できるプレーヤーに対しては比較的信頼していた.
著者
佐藤 浩輔 大沼 進
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.94-103, 2013-11-30 (Released:2017-02-27)
被引用文献数
1

The current study investigates the influence of social factors, such as self-interest and involvement, on trust and its determinants, in the context of public decision-making in government, through two scenario experiments. In both experiments, participants' involvement (high/low) and, subsequent interest in the high-involvement condition (agreed/opposed) were manipulated and two trust models were compared: a traditional model, which regards expectation about intention and competence as the component of trust; and an SVS model, which regards perceived salient value similarity as the primary determinant of trust. Two hypotheses were tested: 1) conflict of interest diminishes trust and value similarity; 2) expectation of the government's intention consistently predicts trust in government, regardless of self-interest. The results supported both hypotheses. Implications of value similarity in the context of public decision-making are discussed.
著者
北梶 陽子 曽根 美幸 佐藤 浩輔 小林 翼 大沼 進
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.115-122, 2016

<p>This study investigated the effects of imagining others on cooperation in a one-shot Prisoner's Dilemma (PD) game. There are two ways to imagine others' perspectives: "imagining the other" or considering how the other person feels, and "imagining the self" or projecting oneself onto the other person. Participants were assigned to one of three conditions: a) the imagining-other condition, b) the imagining-self condition, and c) the control condition (thinking about a landscape). Participants played a one-shot PD game and completed the social value orientation (SVO) scale, which measures one's cooperative tendency. Results showed that the cooperation rate was higher in the imagining-other condition, and participants in the imagining-other condition expected that the partner would cooperate and that the partner thinks they would cooperate. In contrast, in the imagining-self condition, no significant differences were observed about these variables. Furthermore, the cooperation rate increased mediated by two-way expectations in the imagining-others condition, while it was not observed in imagining-self conditions. These results show the importance of imagining others not as a reflection of self, in increasing expectation of mutual cooperation and promoting cooperation.</p>
著者
山岸 みどり 山岸 俊男 結城 雅樹 山岸 俊男 大沼 進 山岸 みどり
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は、まず第1に、インターネットを通した国際共同実験システムを構築し、そして第2に、そのシステムを用いた国際比較実験を実施する中で、現在予想される困難への対処法を関発すると同時に、予め予想困難な新たな問題の所在を明らかにすることにある。この目的を達成するために、平成11年度には、実験システムの基本プラットフォームの作成に向けた作業が進められ、基本プラットフォームの原型版が作成された。平成12年度には、この基本プラットフォーム上で実行する国際比較社会実験の具体的計画を進め、いくつかの実験が試験的に実施された。まず、時差の少ない日本とオーストラリア間で最初の実験が実施され、インターネットを通しての同時参加型実験の実施に伴う多くの困難な問題の存在が明らかにされた。最も困難な問題は、インターネットを通したコミュニケーションの不安定性に関する問題であり、瞬時の反応を必要とする同時参加型実験の実施に際しては様々な工夫が必要となることが明らかとなった。今回の実験は瞬時の反応を必要としないため、実験はそのまま実施されたが、コミュニケーションの安定性を増すためのいくつかのプログラミング上の工夫・改良が進められた。またオーストラリア側の研究グループがプログラミングに関するサポートを十分に有していないためにいくつかの問題が生じたが、日本側のグループが現地に出向くことで問題は解決された。今後国際共同実験システムを拡張するに際して、現地でのプログラミングサポートの体制を作っておく必要があることが明らかとなった。この点は今後の課題である。平成13年度には、アメリカのコーネル大学との間で、瞬時の反応を必要とする共同参加型の実験が実施され、複数の研究室を結ぶ国際実験の完全実施が実現した。
著者
横山 実紀 大沼 進 広瀬 幸雄
出版者
NPO法人 日本シミュレーション&ゲーミング学会
雑誌
シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.21-32, 2017-11-30 (Released:2019-09-12)
参考文献数
10
被引用文献数
1

本研究は指定廃棄物の長期管理施設の問題を模した指定廃棄物処分立地ゲーム(広瀬 2015)を基に,無知のヴェールがNIMBY問題の合意形成を促進する可能性を検討した.当該ゲームでは,利害を知る当事者(“市長”)が議論する段階と自分の利害関係について無知だが潜在的に当事者となり得る状況(無知のヴェール)下にあるプレーヤー(“市民”)が議論する段階があり,最終決定は後者に委ねられる.この状況で最終決定者は公正な決定を行えるか,決定に関与できない利害当事者が受容できるかを検討した.研究1では不公正な決定が8グループ中3つでみられ,利害当事者の受容も高まらなかった.研究2では,全員が利害当事者となって議論し,それでは合意に至らないという経験を経てから同様の段階的意思決定を行ったところ,不公正な決定はみられず,利害当事者の受容の割合が増えた.以上より,単に無知のヴェールによる決定だけでは不十分で,利害当事者だけによる議論では合意形成が困難であるという経験の必要性が示唆された.
著者
相馬 ゆめ 横山 実紀 中澤 高師 辰巳 智行 大沼 進
出版者
一般社団法人 日本リスク学会
雑誌
リスク学研究 (ISSN:24358428)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.11-23, 2022-09-15 (Released:2022-09-23)
参考文献数
26
被引用文献数
1

An enormous amount of removed soils were produced by the decontaminated works derived from the Fukushima nuclear power plant accident. Public understanding and dialogues are required to realize the final disposal of the removed soils. This study contemplated the plural principles of common goods surrounding the removed soils. A group discussion experiment was conducted, setting three arguing points. Before the experiment, the Discourse Quality Index (DQI) was developed to visualize the discussion qualities by plural evaluators, which was confirmed the validity showing sufficient matching rates between the evaluators. Results of the experiment by the analysis of DQI score showed that statements from the points of Utilitarianism were observed the most, while the statements from maximin were fewer. However, many decisions of the groups gave priority to the inequity alleviation and the maximin principles.