著者
宮之原 郁代
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.1, pp.30-35, 2020-01-20 (Released:2020-02-05)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

アレルギー性鼻炎は, 鼻腔への抗原暴露と炎症性メディエーターの放出によって引き起こされるアレルギー性炎症である. このようなアレルギー性炎症に対して, 強力な抗炎症作用を持つ局所剤である鼻噴霧用ステロイド薬は, 理想的な製剤といえる. 2008年以降に1日1回投与の鼻噴霧用ステロイド薬が登場し, アレルギー性鼻炎治療における強力なツールになった. 鼻噴霧用ステロイド薬は, 現在のアレルギー性鼻炎治療薬の中では最も効果の強い薬剤であり, 多くの国際的なガイドラインで, 鼻噴霧用ステロイド薬の単独投与をまず選択すべき治療 (ファーストライン) として位置づけている. 一方, 本邦には鼻アレルギー診療ガイドラインがあり, その2016年版から, 軽症患者にも選択でき, さらに花粉症の初期療法薬としての位置づけが示されるようになった. 2015年米国オバマ大統領によって Precision Medicine Initiative が発表され, precision medicine の概念が注目されるようになった. precision medicine は, 当初がん治療の分野に導入され, その後さまざまな領域へ広がりを見せ, アレルギー性鼻炎においては, 2017年にその実施に向けての提案が示された. その中で鼻噴霧用ステロイド薬は第1段階から考慮する治療薬と位置づけられている. 一方, 最近でも, 鼻噴霧用ステロイド薬は, 抗ヒスタミン薬のおよそ4分の1の患者に処方されているに過ぎず, また, 点鼻薬は, 内服薬に比較しアドヒアランスが不良であることが知られている. この薬剤導入やアドヒアランスの障壁の要因のひとつとして, 鼻噴霧用ステロイド薬のにおいや味, 液だれなど感覚的な特性に嗜好性があることが関連している.
著者
宮之原 郁代 宮下 圭一 黒野 祐一
出版者
日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.821-826, 2011 (Released:2013-05-24)
参考文献数
20
被引用文献数
1 3

右耳閉感と発疹で発症しHIV感染、内耳梅毒が判明した1例を報告する。症例は、55才男性で、2009年7月末に右耳閉感と発疹が出現し、8月下旬、右難聴が突然出現した。前医にて右突発性難聴の診断を受け、プレドニゾロン30mgから漸減療法を受けるも改善が得られず、当院受診となった。標準純音聴力検査4分法平均聴力レベルで右43.8dB、左25.0dBと感音難聴を認めた。梅毒血清反応ならびにウエスタンブロット法にて梅毒、HIV感染が確認され、HIV感染を合併した内耳梅毒の診断となった。アモキシシリン500mg×3/日、9週投与で、聴力は改善した。HIV感染症例の感音難聴では、内耳梅毒の鑑別が必要なことが示唆された。
著者
宮之原 郁代 松根 彰志 大堀 純一郎 黒野 祐一
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.31-38, 2009 (Released:2011-08-01)
参考文献数
25
被引用文献数
2

スギ花粉症患者 29 例を対象に、プランルカストによる初期療法の有用性について初期療法群と飛散後治療群の 2 群に分類し比較検討した。初期療法群で、飛散開始期ではすべての鼻症状が、そして medication score、symptom medication score は、飛散開始期と最盛飛散期で有意に抑制された。また、quality of life (QOL) では、戸外活動、社会生活、睡眠において、シーズンを通して初期療法群のスコアが有意に低く、初期療法におけるプランルカストの有用性が示された。さらに、花粉飛散開始日までに 1 週間程度の初期療法の期間があれば、十分な効果が認められた。一方、プランルカスト初期療法が有効なグループと効果が出にくいグループがあることも示唆された。よって、プランルカストは、スギ花粉症に対する初期療法薬として、鼻症状全般に効果があり、特に夜間の鼻閉を改善させ、QOL を改善させる効果が期待できる。ただし、実際の使用に際しては、対象症例をある程度選択することが必要と思われた。