著者
宮原 志津子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.457-467, 2014-10-01 (Released:2014-10-01)
参考文献数
29

本稿では,シンガポール国立図書館庁(NLB)による図書館情報政策Libraries for Life(Library 2020)と,シンガポールの公共図書館が目指す次の時代の図書館のあり方について検討を行った。シンガポールではこれまでに,2つの図書館情報政策が策定されている。最初のLibrary 2000(1994年)では公共図書館インフラの整備が主に行われ,次のLibrary 2010(2005年)では,電子図書館やインターネットサービスの推進が積極的に行われた。2011年に発表されたLibrary 2020では,図書館のもっとも基本的なサービスである読書を推進するプログラムに焦点が絞られている。これからの時代を担う公共図書館の役割は,多様な背景をもつシンガポール人のコミュニティーをつなぐ場所であり,図書館にはシンガポール文化を掘り起こし,さらに新たに創出する期待が込められているのである。
著者
宮原 志津子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.113-124, 2020 (Released:2020-12-30)
参考文献数
88

本研究の目的は,図書館情報(LIS)専門職の質保証と国際通用性の現状及び特色を明らかにすることである。1995 年のGATS 発効以降の国境を超える高等教育の進展で,教育の質保証の重要性が認識されている。北米のアクレディテーションは,教育機関やプログラムの価値を測る中核的な制度となっており,欧州や東南アジアでは,専門職資格の国境を超える相互認証制度が構築され,専門職移民のグローバルな移動を促進している。こうした傾向はLIS 専門職の教育と労働市場にも影響している。LIS 領域では専門職協会による教育プログラムへの認証が,専門職の質保証モデルとして引き合いに出されることが多い。専門職を目指す学生にとっても,教育プログラムの認証は大きな関心事である。専門職協会による認証制度がない国では,自国政府あるいは英・米の認証を受けることが専門職の質証明になるが,国際通用性の実際については今後の研究課題である。
著者
宮原 志津子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.192-197, 2022-06-01 (Released:2022-06-01)

本稿は,図書館情報専門職の資格について,国内外の動向を明らかにすることが目的である。かつては,専門職として働くためには資格を所有することが要件となっていたが,今日では学位や資格の質保証の証明が必要となっている。学位・資格に対する質保証制度を検討するために,海外のLIS専門職資格を「教育資格」「職業資格」の2種類に分けて比較する。教育資格の例としてアメリカ,職業資格としての例としてフィリピンを対象とし,LIS専門職の質保証ツールとしての両者の特色を整理した上で,日本の司書資格が,教育資格としても職業資格としても,質保証が十分おこなわれていないことを明らかにする。
著者
宮原 志津子
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.91-99, 2011-03-10

This article aims to examine the definition and history of the International Comparative Librarianship (ICL). The ICL has been developed since the 1960's supported by the library assistance of US for the developing countries. In the 1960's, American library consultants published their articles and books, referring to their work experiences in Southeast Asian countries. They are the first ICL studies in the library and information science (LIS) field. Instead of Americans, some Asian students started the ICL study and earned Ph. D of US graduate schools in the 1970's. At present, many Asian scholars have been contributing to the development of ICL study, particularly at the field of international cooperation of LIS education.
著者
宮原 志津子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.457-467, 2014

本稿では,シンガポール国立図書館庁(NLB)による図書館情報政策Libraries for Life(Library 2020)と,シンガポールの公共図書館が目指す次の時代の図書館のあり方について検討を行った。シンガポールではこれまでに,2つの図書館情報政策が策定されている。最初のLibrary 2000(1994年)では公共図書館インフラの整備が主に行われ,次のLibrary 2010(2005年)では,電子図書館やインターネットサービスの推進が積極的に行われた。2011年に発表されたLibrary 2020では,図書館のもっとも基本的なサービスである読書を推進するプログラムに焦点が絞られている。これからの時代を担う公共図書館の役割は,多様な背景をもつシンガポール人のコミュニティーをつなぐ場所であり,図書館にはシンガポール文化を掘り起こし,さらに新たに創出する期待が込められているのである。
著者
宮原 志津子
出版者
東京大学大学院教育学研究科生涯学習基盤経営コース内『生涯学習基盤経営研究』編集委員会
雑誌
生涯学習基盤経営研究 (ISSN:1342193X)
巻号頁・発行日
no.35, pp.33-46, 2010

論文/Thesesフィリピンにおける図書館専門職の教育及び認定制度は、毎年司書資格取得者を多く輩出する日本にとって示唆に富む制度である。1990年の法制度改革が行われるまで、フィリピンの図書館専門職資格は、大学の専門教育課程の修了を示す「教育資格」のみであった。しかし教育資格は専門職の質証明とするには不十分であり、フィリピン社会の認識や専門職の法制度では、専門職国家試験の合格による「職業資格」が重視されることから、職業資格制度がないライブラリアンの社会的地位は低く、図書館界では長年、制度の確立を求めて議会へのロビー運動を展開していた。1990年にライブラリアンシップ法が制定され、他の専門職同様に国の機関による図書館員への専門職試験が課されるようになったことで、ライブラリアンは「専門職」として公的に認められるようになった。実際にはライブラリアンシップ法の影響は小さく、専門職としての待遇改善や専門職の質の向上など、根本的な問題はまだ残されている。Library and Information Science (LIS) education and a quality control system for librarians in the Philippines offer suggestive insights for Japan. Until the legal reform in 1990, a Filipino librarian was not considered as a "professional" in the society because only an "academic qualification" such as a diploma or an academic degree is given to librarians as a qualification. The academic qualification was insufficient as a proof of the professional librarian, because a national qualification given after passing a national board of examination was valued over an academic qualification in the Philippines. After the enactment of the Philippine Librarianship Act in 1990, which states that those who want to work in a library should pass a national examination and get a professional qualification, in the legal sense, a librarian is now accepted as a "professional status" in the Philippines. However, some essential problems have remained. Actually, the Librarianship Act has had only a small effect on improving the working conditions and the quality of professionals.