著者
宮本 幸子
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.71-82, 2023-03-30 (Released:2023-04-26)
参考文献数
29

子どもが団体・クラブ等に所属して行うスポーツ(以下「スポーツ活動」と表記)においては、保護者に様々な関与・支援が求められる。特に母親は、競技そのものに直接関わらない、子どもたちの世話などの「周辺的役割」を共同で担うことが多い。このような状況に対しては、先行研究においてジェンダーの観点等から問題も指摘されている。それにもかかわらず、子どものスポーツ活動においては、なぜ母親が主に「周辺的役割」を担う構造が維持され続けるのだろうか。本研究は 小学生の母親に対して実施したフォーカス・グループ・ディスカッション(FGD)のデータ分析を通し、社会関係資本の概念を援用してそのメカニズムを明らかにすることを目的としている。 FGDは、1)子どもが地域クラブでスポーツ活動をし、母親の関与の度合いも高いグループ 2)子どもが現在、スポーツ活動をしていないグループ の2グループ(計10名)に対して実施した。 母親たちは、保護者ネットワークで得られる「利益」よりも「投資」の負担を強く認識している。そのため、子どものスポーツ活動における「周辺的役割」に対して自らが労力や時間をどの程度「投資」できるか、判断を試みる。そのためには、「ママ友」を頼りにしたインフォーマルな「情報」収が欠かせない。 「情報」が得られた母親たちは、それをもとに「投資」の可能性を判断し、スポーツ活動の「選択行動」に移る。「投資」できないと判断した母親はスポーツ活動を諦め、できると判断した母親たちは、その程度によって所属するクラブを「選択」する。このようにして、子どものスポーツ活動においては、同程度の「負担」が可能な保護者同士のネットワークが構築され、そこでの情報はまた既存の「ママ友」ネットワークにもたらされる。結果、各クラブの「周辺的役割」の程度は固定化され、母親が「周辺的役割」を担う構造が維持される。
著者
外山 美樹 樋口 健 宮本 幸子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1-11, 2014

高校受験が終わった半年後に,高校1年生とその母親3,085組を対象に,高校受験に関する振り返り調査をインターネット上で実施し,高校受験期における悩みやストレス,高校受験を振り返っての認知(高校受験の経験がどのような意味をもつのか)についての実態を把握することを目的とした。また,こうした高校受験期における悩みやストレス,高校受験を振り返っての認知において,母親からのソーシャル・サポートがどのように影響を及ぼすのかを検討した。本研究の結果から,進学率が100%に近い高校への受験においても,子どもは様々な悩みやストレスを抱いていることが示された。また,多くの者が受験を通して自己への成長感を獲得するとともに,学業への充実感を感じており,高校受験をプラスの経験と捉えていることが明らかになった。母親からのソーシャル・サポートにおいては,高校受験の悩みやストレスを促進するソーシャル・サポートのネガティブな影響が見られた一方で,母親からのソーシャル・サポートが高い者は,受験を通して自己の成長感や学業の充実感をより強く感じているといったソーシャル・サポートのポジティブな影響も見られることが示された。