著者
藤間 友里亜 外山 美樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.99-115, 2021-06-30 (Released:2021-07-21)
参考文献数
35
被引用文献数
2

場面緘黙経験者は,場面緘黙が改善した後にも不適応に陥ることがあると指摘されており,場面緘黙寛解後のアプローチも課題とされているが,これまで十分に研究されていない。場面緘黙寛解後の困難を軽減させるための研究も必要であると考えられる。本研究では,場面緘黙経験者の寛解後の具体的な困難や,現在の状態に至るまでのプロセスを明らかにすることを目的とし,場面緘黙経験者19名を対象に面接調査を行った。M-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)により分析を行った結果,〈気質〉,〈緘黙時のネガティブな経験〉,〈寛解後不適応〉,〈不適応の改善〉,〈適応〉の5つのカテゴリー,合計21の概念から成るモデルが生成された。元々の気質と緘黙時のネガティブな経験が寛解後不適応につながっており,寛解後不適応は不適応の改善によって適応に至るというプロセスが見出された。概念として,『話す必要性を減らす』や『不安や緊張を軽減させる』,『発話能力を向上させる』など,不適応の改善に役立つ行動も見出された。本研究によって得られた知見は不適応状態に陥っている場面緘黙経験者にとって,不適応の改善のために有益な情報であると考えられる。
著者
長峯 聖人 外山 美樹
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.90.18206, (Released:2019-09-20)
参考文献数
49
被引用文献数
4

Nostalgia is a sentimental longing for a one’s past. It is an emotion that is known to contribute to multiple adaptabilities. We conducted three studies to develop the Japanese version of the Southampton Nostalgia Scale (SNS), which assesses how often people experience nostalgia on a daily basis. Study 1 indicated that the factor structure of the Japanese version and the original version of the SNS are similar and that the Japanese version of the SNS has acceptable test-retest reliability. Study 2 revealed that the factor structure of the Japanese version of the SNS is stable regardless of age. Finally, Study 3 showed that the pattern of correlational relationships of the Japanese version with explicit variables is similar to the original version of the SNS. These results indicate that the Japanese version of the SNS has acceptable validity and reliability.
著者
湯 立 外山 美樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.212-227, 2016 (Released:2016-08-08)
参考文献数
54
被引用文献数
8 8

本研究では, 一般的個人興味を測定する尺度を作成し, 大学生の専攻している分野への興味の変化様態について検討した。研究1では, 感情, 価値, 知識の3側面から成る大学生用学習分野への興味尺度を作成した(N=202)。内的整合性の観点から信頼性が確認された。確認的因子分析の結果, 因子構造の交差妥当性が確認された(N=288)。内的調整, マスタリー目標, 自己効力感と正に関連したことから, 一定の構成概念妥当性が確保された(N=268)。研究2では, 大学生新入生(N=499)を対象に, 専攻している分野への興味について, 6ヶ月の短期的縦断調査を行った。潜在曲線モデルを用いて分析した結果, 全体的な変化パターンについて, “感情的価値による興味”“認知的価値による興味”は緩やかに減少したが, “興味対象関連の知識”はより急速に増加した。入学後1ヶ月の時点ですでに個人差が存在し, “感情的価値による興味”の変化のパターンは個人差がより大きいことが示された。“認知的価値による興味”の変化パターンにおいて男女差が見られた。今後, 興味の発達における個人差を説明する要因の検討は意義があることが示唆された。
著者
藤間友里亜 外山美樹
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第61回総会
巻号頁・発行日
2019-08-29

問題と目的 場面緘黙経験者は,その症状が消失し,寛解にいたった後にも不適応に陥ることが少なくないと指摘されている(久田・金原・梶・角田・青木,2016)が,これまで場面緘黙寛解後についての研究はほとんどされてこなかった。本研究では,場面緘黙の寛解を「日常生活において発話が必要とされる場面で話すことが一貫してできる状態」と定義し,場面緘黙時の経験や現在の状態にいたるまでの過程についての調査を実施した。それによって場面緘黙経験者が適応および不適応にいたる過程を明らかにすることを目的とした。方 法面接前アンケート 場面緘黙を経験した18歳以上の者21名に対し,年齢,性別,場面緘黙の基準にあてはまっていたか,現在は話すことが一貫してできるかを尋ねた。面接調査対象者:面接前アンケートの対象者のうち,寛解に達していなかった2名を除いた19名(男性5名,女性14名,平均年齢33.37±9.93歳)であった。調査内容と手続き:面接はSkype上で行った。主な質問は,「現在の生活で困っていることはありますか?」,「緘黙時にどのような経験をしましたか?」,「緘黙経験についてどのように受け止めていますか?」などであった。結果と考察 M-GTAを用いて分析を行い,21の概念と5つのカテゴリーが生成された。分析の結果作成された場面緘黙経験者の適応・不適応過程の結果図をFigure 1に示した。本研究の調査対象者は全員が寛解後に不適応を経験していた。寛解後不適応には,不安や人見知りといった気質と場面緘黙症状によって経験した緘黙時のネガティブな経験が影響していた。寛解後不適応から適応にいたる過程には不適応の改善が存在することが示された。総合考察 緘黙時に他者から責められることは自責につながっており,その自責は場面緘黙を知ることで解消されていた。よって,場面緘黙経験者本人が場面緘黙を知ることが重要である。また,周囲の人が場面緘黙を理解し,責めることを少なくすることも重要であると考えられる。本研究の対象者は,適応にいたっていても発話に対して苦手意識を持つ者が多かった。このことから,発話の苦手さによる困難を軽減するためには,発話能力を向上させるだけでなく,発話以外の対処も効果的に用いることが重要であると考えられる。 本研究より,場面緘黙寛解後にも困難を抱えることがあるという結果が得られ,寛解後の場面緘黙経験者の困難を軽減させる方法や適応にいたる過程についての研究は臨床的に意義があることが示された。
著者
長峯 聖人 湯 立 三和 秀平 海沼 亮 浅山 慧 外山 美樹
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.94.22205, (Released:2022-11-01)
参考文献数
27

Scheduling is essential for the pursuit of everyday goals. Individual differences in scheduling are known as scheduling styles. Two subtypes of scheduling styles, clock-time style (based on time) and event-time style (based on progress), have recently been focused on as being related to individual differences in self-control. This study developed the Japanese version of the Task Scheduling Questionnaire (TSQ) for assessing people’s trait-like scheduling styles. We conducted three studies to examine the relationship between scheduling styles and university students’ pursuit of academic goals. Studies 1 and 2 surveyed university and high school students. The results indicated that the Japanese version of the TSQ had good reliability and validity. Study 3, using the Japanese version of the TSQ, revealed that the event-time style was positively associated with academic engagement, learning behavior, and university students’ academic performance. In contrast, the clock-time style was not associated with academic indicators. We have discussed the limitations of this study and the relationship between clock-time style and everyday goal pursuit.
著者
長峯 聖人 外山 美樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.190-202, 2019-09-30 (Released:2019-11-14)
参考文献数
66
被引用文献数
1 3

青年期において時間的展望は重要な役割を持っており,特に未来展望はアイデンティティの形成やwell-beingと密接な関連があるとされる。一方で,時間的展望を形成する要因について十分に明らかになっているとはいえない。本研究は,時間的展望(特に未来展望)の形成に影響する要因としてノスタルジアを取り上げ,実験的にノスタルジアを喚起した群(ノスタルジア群)とそうでない群(統制群)の間で,喚起後の時間的展望の程度に差がみられるかどうか検討することを目的とした。またその際,未来展望の群間差を本来性によって説明できるかどうかについても検討を行った。大学生44名が実験に参加し,それぞれノスタルジア群か統制群にランダムに割りあてられた。実験の結果,まずノスタルジア群は統制群よりも未来についてポジティブな態度をとっており,ネガティブな態度をとっていないことが示された。これらの結果は,現在および過去への態度についても同様であった。また,群間における未来へのポジティブ(ネガティブ)な態度の差は,本来性によって有意に媒介されることが示された。最後に,研究のデザインおよび時間的展望の下位概念という観点から本研究の課題と展望について議論された。
著者
有冨 公教 外山 美樹
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.315-334, 2019-06-17 (Released:2019-06-25)
参考文献数
31
被引用文献数
1

The purposes of this study were to examine the functions of thought during a sport task performance from the perspectives of objective recognition by researchers and subjective recognition by the participants themselves. Participants (n=30) were assigned to two different incentive presentation conditions (acquisition or loss according to achievement of the task) and were required to complete a dart throwing task while stating their thoughts aloud while executing it. A protocol analysis of the utterances revealed the following 10 thought categories: internal focus, external focus, psychological self-control, cognition of anxiety and tension, positive self-evaluation or emotion, negative self-evaluation or emotion, irrelevant thought, active attitude, passive attitude, and performance analysis. Six participants who completed the experimental task were interviewed and the data were examined using Personal Attitude Construct (PAC) analysis. In the interview, participants were required to generate the original thought categories from their own protocol and to interpret the thought contents and functions in the performance. Furthermore, cluster analysis with a similarity distance matrix of the generated thought categories revealed the overall structure of thought in each individual. These results showed that recognition of the contents and functions of thought during performance of a sport differed between the researchers and the participants. According to this, for example, even though thought is generally considered as negative thinking, depending on the individuals involved in the task, it could be recognized as positive thinking. The results of this study suggested that, to understand the function of thought during a sports performance, it is necessary to understand the context in which an individual is placed and to base the interpretation on the meaning and experience for the individual.
著者
外山 美樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.317-326, 2016-09-30 (Released:2016-10-31)
参考文献数
30
被引用文献数
10

本研究の目的は, 楽観性と悲観性を独立に測定できる“子ども用楽観・悲観性尺度”を新たに作成し, それらの信頼性・妥当性を検討することであった。研究1より, “楽観性”と“悲観性”の下位尺度から構成される子ども用楽観・悲観性尺度10項目が作成された。また, 子ども用楽観・悲観性尺度の信頼性(内的一貫性と時間的安定性)と妥当性の一部(構造的な側面の証拠, 外的な側面の証拠)が確認された。さらに, 研究2より, 何らかのストレスフルな出来事を経験した後に, 楽観性が高い子どもはサポート希求や問題解決といった接近型のコーピング方略を用いる傾向が強く, そうしたコーピング方略を媒介して, 学校適応につながりやすいことが示された。一方で, 悲観性が高い子どもは行動的回避といった回避型のコーピング方略を用いる傾向が強く, そうしたコーピング方略を媒介して, 学校不適応や精神的不健康につながりやすことが示された。本研究の結果より, 楽観性と悲観性とでは独自の役割を担っていることが明らかになった。
著者
外山 美樹 長峯 聖人
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.178-191, 2022-06-30 (Released:2022-07-12)
参考文献数
31
被引用文献数
1 2

本研究の目的は,新型コロナウイルス感染症拡大の状況下において,正常性バイアスが生じているかどうかを検討すること,および新型コロナウイルス感染症に関する認知(自身の感染可能性,感染者増加可能性,終息の予期,感染予防の自覚,自粛の自覚)が非自粛行動,感染者への怒り,ストレスならびに抑うつと関連するのかどうかを検討することであった。調査対象者は,東京都に在住の20歳代から60歳代の710名で,2つの時点でweb調査を実施した。本研究の結果より,新型コロナウイルス感染症拡大の状況のような慢性的,長期的な事象においても正常性バイアスが見られることが確認された。また,新型コロナウイルス感染症に関する認知の内容(自身の感染可能性の認知,外界のリスク認知,安全性に関する認知)によって,どの側面と関連するのかが異なることも明らかとなった。さらに,感染予防の自覚と自粛の自覚においては,2ヶ月後の非自粛行動を予測することが示された。今後は,新型コロナウイルス感染症拡大の状況下における正常性バイアスのより長期的な影響を検討するとともに,正常性バイアスの規定要因を検討することの必要性が議論された。
著者
外山 美樹 長峯 聖人 浅山 慧
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.19-34, 2022-03-30 (Released:2022-03-30)
参考文献数
45
被引用文献数
3

本研究は,大学生を対象にし,努力に対する信念についてその構造を明らかにし,その個人差を測定することができる尺度を作成すること,ならびに努力についての信念が目標追求行動と関連しているのかどうかを検討することを目的とした。研究1ならびに研究2より,努力についての信念は,「重要・必要」,「コスト感」,「才能の低さの象徴」,「効率重視」,「環境依存性」,「義務・当然」そして「外的基準」に分類されることが示され,これら7つの下位尺度から成る努力についての信念尺度を作成した。研究2―研究4より,本研究で作成した「努力についての信念尺度」は,一定の信頼性(内的一貫性と時間的安定性)と妥当性(構造的な側面の証拠,外的な側面の証拠)を備え持っていることが確認された。また,研究4より,個人が持っている努力についての信念によって,目標達成が困難になった時の目標追求の仕方が異なることが示され,努力についての信念は行動を規定する要因であることが明らかとなった。今後は,本研究で作成された「努力についての信念尺度」を用いて,さまざまな行動(e.g., 学習行動)との関連について検討することが望まれる。
著者
外山 美樹
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.256-266, 2013-08-25 (Released:2013-11-01)
参考文献数
54
被引用文献数
23 10

This study reports about the construction of a bidimensional measure of optimism and pessimism (defined as positive and negative outcome expectancies), called the Japanese Optimism and Pessimism Scale (J-OPS), and examines its reliability and validity. The participants were college students. The results revealed the following: (a) the J-OPS had sufficient reliability and validity, (b) optimism and pessimism were bidimensional in structure, (c) the general pattern of correlations with external criteria of psychological well-being (positive and negative affectivity). After controlling for optimism and pessimism respectively, it indicated that these two constructs were partially independent of each other. Namely, optimism, but not pessimism, was found to be a consistent predictor of positive affectivity (psychological well-being), whereas pessimism, but not optimism, was found to be a predictor of negative affectivity (psychological distress).
著者
海沼 亮 長峯 聖人 湯 立 三和 秀平 浅山 慧 外山 美樹
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.15-17, 2022-04-28 (Released:2022-04-28)
参考文献数
12
被引用文献数
1

The present study aimed to examine the effects of basic psychological need support behavior from teachers on learning behavior with an emphasis on regulatory focus. Junior High School Students (N=341) completed the questionnaire. Hierarchical multiple regression analysis indicated that autonomy support behavior from teachers predicted behavior engagement and persistence in learning of the promotion focus. The results suggest that autonomy support behavior from teachers plays an important role in supporting learning behaviors for junior high school students with high promotion focus.
著者
外山 美樹 湯 立 長峯 聖人 三和 秀平 相川 充
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.90.17059, (Released:2019-06-20)
参考文献数
42
被引用文献数
1

Correlations between the type of regulatory focus orientation and performance levels were investigated from the perspective of conserving cognitive resources. University students (N = 64) participated in the experiment. They were induced to have a promotion- or prevention-focused orientation and were required to conduct a lower priority task followed by a higher priority task. Results indicated that when the prevention-focused orientation was activated, participants did not spend much effort to achieve lower priority tasks and the performance level was lower compared to when the promotion-focused orientation was activated. It was considered that the intention for conserving cognitive resources increased because the prevention-focused participants knew that they would be engaging in a higher priority task in the future. Conversely, these same participants demonstrated higher performance in higher priority tasks implemented later, compared to when the promotion-focused orientation was activated. The above results suggest that cognitive resources are allocated intentionally under prevention-focused conditions.
著者
長峯 聖人 外山 美樹 三和 秀平 湯 立 黒住 嶺 相川 充
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.88.17301, (Released:2018-01-15)
参考文献数
28

Research has suggested that regulatory fit creates value. In this study, the regulatory fit was defined as the fit between the regulatory focus and the advertising messages. We investigated the effects of regulatory fit on the evaluation of messages when familiarity with the message was low. This hypothesis was supported by two observations; when the familiarity with a message was low, regulatory fit was not observed among participants with a prevention focus. In contrast, regulatory fit was observed among participants with a promotion focus, with a higher preference for two-sided advertising. The significance of familiarity on the effects of regulatory fit and value is discussed.
著者
長峯 聖人 湯 立 三和 秀平 海沼 亮 浅山 慧 外山 美樹
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.65-75, 2022 (Released:2023-04-25)
参考文献数
27

Scheduling is essential for the pursuit of everyday goals. Individual differences in scheduling are known as scheduling styles. Two subtypes of scheduling styles, clock-time style (based on time) and event-time style (based on progress), have recently been focused on as being related to individual differences in self-control. This study developed the Japanese version of the Task Scheduling Questionnaire (TSQ) for assessing people’s trait-like scheduling styles. We conducted three studies to examine the relationship between scheduling styles and university students’ pursuit of academic goals. Studies 1 and 2 surveyed university and high school students. The results indicated that the Japanese version of the TSQ had good reliability and validity. Study 3, using the Japanese version of the TSQ, revealed that the event-time style was positively associated with academic engagement, learning behavior, and university students’ academic performance. In contrast, the clock-time style was not associated with academic indicators. We have discussed the limitations of this study and the relationship between clock-time style and everyday goal pursuit.
著者
外山 美樹 湯 立
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.295-310, 2020-09-30 (Released:2021-02-18)
参考文献数
45
被引用文献数
4

本研究の目的は,小学4―6年生646名を対象に1カ月間の短期縦断研究を行い,いじめ加害行動の抑制に関連する個人要因としていじめ観ならびに罪悪感の予期を,学級要因として学級の質を取りあげて検討することであった。本研究の結果より,いじめを根本的に否定する考え方を有している小学生は,いじめ加害行動の抑制につながりやすいことが示された。一方で,罪悪感の予期は,いじめ加害行動の抑制につながらなかった。さらに,友達関係雰囲気,学級雰囲気,承認雰囲気,いじめ否定雰囲気といった子どもが所属している学級集団の質の要因が,いじめ加害行動の抑制につながることが示された。最後に,Time 1の加害行動とTime 2の加害行動の関連の強さが学級集団の質によって調整されることが明らかとなり,学級集団の雰囲気が良い学級においていじめ加害行動が多くみられる児童は,その傾向が長期化しやすいことが示された。いじめの問題を取りあげる際には,教室環境の要因を加味し,個人要因と教室環境の要因のダイナミクスを検討する必要性が示唆された。
著者
外山 美樹 長峯 聖人 湯 立 三和 秀平 黒住 嶺 相川 充
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.477-488, 2017 (Released:2018-02-21)
参考文献数
40
被引用文献数
8 11

本研究の目的は,制御適合の観点から,制御焦点が学業パフォーマンスに及ぼす影響について検討することであった。具体的には,制御焦点(促進焦点と防止焦点)と学習方略(熱望方略と警戒方略)が適合した時に,高い学業パフォーマンスを収めるのかどうかを検討した。分析対象者は大学生100名であった。学習方略は,マクロ理解方略,ミクロ理解方略,拡散学習方略,そして,暗記方略を取りあげ,学業パフォーマンスは,授業の定期試験(空所補充型テスト,記述式テスト)の成績をその指標として用いた。本研究の結果より,促進焦点の傾向が高い人と防止焦点の傾向が高い人のどちらが優れた学業成績を示すのかではなく,高い学業成績につながる目標の追求の仕方が,両者では異なることが明らかとなった。促進焦点の傾向が高い人は,マクロ理解方略を多く使用している場合に,記述式テストにおいて高い学業成績を収めていた。一方,防止焦点の傾向が高い人は,ミクロ理解方略を多く使用している場合に,空所補充型テストにおいて高い学業成績を収めていた。制御適合に関する一連の研究(Higgins, 2008)で示されている通り,促進焦点の傾向が高い人は熱望方略を使用する時に,かたや防止焦点の傾向が高い人は,警戒方略を使用する時に制御適合が生じることによって,それらに合致したパフォーマンスが向上すると考えられた。