著者
荻原 仁美 湯田 厚司 宮本 由起子 北野 雅子 竹尾 哲 竹内 万彦
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.2, pp.78-83, 2011 (Released:2011-07-12)
参考文献数
11
被引用文献数
3 3

背景と目的: スギ花粉症にヒノキ科花粉症の合併が多く, その原因として両花粉抗原の高い相同性が挙げられる. しかし実際の臨床の場において, ヒノキ科花粉飛散期にスギ花粉飛散期にはみられない強い咽喉頭症状のある例に遭遇する. そこで, ヒノキ科花粉症の咽喉頭症状について検討した.方法: スギ・ヒノキ科花粉症患者で2008年のスギ・ヒノキ花粉飛散期の咽喉頭症状を1週間単位のvisual analog scale (VAS) で検討した. また, 2008年と2009年に日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票No2で鼻眼以外の症状を調査し, 花粉飛散数による相違を検討した.結果: VASによる鼻症状は花粉飛散数に伴って悪化し, スギ花粉飛散期でヒノキ科花粉飛散期より強かった. 一方, のどの違和感と咳は, ヒノキ科花粉が少量飛散であったにもかかわらず, ヒノキ科花粉飛散期で悪化した. また日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票No2の鼻眼以外の症状において, スギ花粉症では飛散総数が多いと全般に症状が悪化したが, ヒノキ科花粉症は少量飛散でも強い咽喉頭症状を示し, 大量飛散年に類似した.結論: ヒノキ科花粉症はスギ花粉症と同一のように考えられているが,スギ花粉症とは異なる鼻眼以外の症状を呈する. 特にヒノキ科花粉症において咽喉頭症状が強く, 少量の飛散でも強い症状がある.
著者
湯田 厚司 荻原 仁美 宮本 由起子 佐橋 紀男 竹内 万彦
出版者
Japan Rhinologic Society
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.13-18, 2011 (Released:2011-04-28)
参考文献数
9

スギ花粉症の初期療法は有用で, 広く浸透している。薬剤投与開始日は薬剤で異なるが, スギ花粉開始予想日に左右される。適切で効率よい初期療法を行うには, 適確な飛散開始日予測が必要だが, その予想方法は見いだされていない。そこで, 三重県津市におけるスギ花粉飛散開始日の予測方法を検討し, その結果から全国的な予想に応用できるかを検討した。【方法】気象庁ホームページから収集した気象データをもとに三重県津市のスギ花粉飛散開始の予測が可能かを検討した。その結果を基に, 既報で公開された全国のスギ花粉飛散開始日のデータを参照して, 全国の飛散開始日予想を試みた。【結果】津市の飛散開始日は11月中旬平均気温 (p=0.0027, r=0.67), 平均最高気温 (p=0.0011, r=0.70) と有意に正に相関した。11月中旬が寒いと花粉飛散が早まった。全国30都市を調査した結果, 全国的に11月中旬平均気温との相関が良く, 福岡市, 広島市, 徳島市, 西宮市, 東大阪市, 和歌山市, 大垣市, 静岡市, 中央市, 八王子市, 埼玉県坂戸市の各市と東京都が有意に相関した。名古屋市, 水戸市は平均最高気温のみ相関した。岡山市, 米子市, 松山市, 高松市では相関がなかった。また, 関東以北や日本海側の都市でも相関がなかった。九州から関東の太平洋岸都市を中心に11月中旬平均気温から飛散開始日が予想できると考えた。【結論】飛散開始日予想は初期療法開始日決定に有用であり, 誰でも収集可能な気象情報からの予想は有用度が高い。
著者
湯田 厚司 宮本 由起子 服部 玲子 荻原 仁美 竹内 万彦 間島 雄一
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1366-1371, 2007
被引用文献数
7

【背景・目的】スギ花粉症に対する免疫療法の直接医療経費を検討し,スギ花粉飛散数の違いによる影響を検討する.【方法】免疫療法および対照の初期療法の各18例で,スギ花粉大量飛散(2005)年,中等度飛散(2003)年,少量飛散(2004)年に同一患者が支払った医療費,薬剤費をレセプトおよび診療録から算出した.また,大量飛散年に無記名で症状と治療満足度のアンケート調査をVAS法で行った.【結果】免疫療法群は維持期の医療費を加えても総医療費が低く,処方薬剤費も少なかった.また,大量飛散年でも免疫療法群は処方薬剤費が増加せず,医療費が増さなかった.アンケート調査でも免疫療法群の満足度が高く,くしゃみ,鼻みず,眼のかゆみの症状が有意に良かった.【結論】免疫療法は直接医療経費の面からは医療経済上も有用で,特に花粉飛散数が多い程顕著になる.
著者
湯田 厚司 宮本 由起子 荻原 仁美 服部 玲子 大久保 公裕
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.124-132, 2009

【背景】花粉症に対する舌下免疫療法は,本邦では試験段階として成人例での有用性が報告されている.本法は痛みがなく,通院回数が少ないので,特に小児例で利点が多いと考えられるが,小児スギ花粉症での検討はない.【方法】スギ花粉症患児10例(男児4例,女児6例,平均8.5±2.2歳)に標準化アレルゲンエキス「スギ花粉」(トリイ社製)で舌下免疫療法を行った.投与方法は成人例と同じとし,2000JAUで週1回維持した.初年度の臨床症状を検討した.【結果】全例で安全に在宅投与ができた.初年度スギ花粉飛散期の症状は,全期間で軽症であり,スコアの最大は鼻閉の1.3点であった.救済薬の使用は少なく,10例中3例が無投薬無症状で,2例が5日以内の頓服服用であった.5cm尺度のvisual analog scaleも1cm程度と極めて良好であった.アンケートによる治療の印象は全例良好であった.【結論】少数例でのpilot open studyであるが,小児スギ花粉症にも舌下免疫療法が有効である可能性が示唆された.