著者
湯田 厚司 小川 由起子 荻原 仁美 神前 英明 清水 猛史
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.121, no.12, pp.1493-1498, 2018-12-20 (Released:2019-01-16)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

スギ花粉はトマトと共通抗原を有する. 口腔内に抗原投与する舌下免疫療法 (SLIT) ではトマト抗原陽性例への影響も考えられる. スギ花粉 SLIT 220例でトマト IgE 抗体 (s-IgE) 陽性例の1年目副反応を検討した. 107例の s-IgE 変化を2年間追跡した. 2例のトマト口腔アレルギー症候群 (OAS) の経過を観察した. 治療前トマト s-IgE でクラス2 (20例) と1 (18例) では, クラス0 (182例) と比べて副反応の増加がなかった. トマト s-IgE は治療前0.29±1.08, 1年後0.34±0.89, 2年後0.27±0.87UA/mL であった. 治療前クラス0 (92例) は1年後に10例でクラス1に, 4例でクラス2になった. クラス0でも55例中12例で検出閾値未満から検出可能になり, 37%に多少の変化を認めた. トマトとスギ s-IgE 変化は連動し, 交叉抗原の影響を示唆した. トマト OAS の2例は問題なく治療を継続できた. トマトアレルゲン陽性例でも安全に SLIT を行えた.
著者
荻原 仁美 湯田 厚司 宮本 由起子 北野 雅子 竹尾 哲 竹内 万彦
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.2, pp.78-83, 2011 (Released:2011-07-12)
参考文献数
11
被引用文献数
3 3

背景と目的: スギ花粉症にヒノキ科花粉症の合併が多く, その原因として両花粉抗原の高い相同性が挙げられる. しかし実際の臨床の場において, ヒノキ科花粉飛散期にスギ花粉飛散期にはみられない強い咽喉頭症状のある例に遭遇する. そこで, ヒノキ科花粉症の咽喉頭症状について検討した.方法: スギ・ヒノキ科花粉症患者で2008年のスギ・ヒノキ花粉飛散期の咽喉頭症状を1週間単位のvisual analog scale (VAS) で検討した. また, 2008年と2009年に日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票No2で鼻眼以外の症状を調査し, 花粉飛散数による相違を検討した.結果: VASによる鼻症状は花粉飛散数に伴って悪化し, スギ花粉飛散期でヒノキ科花粉飛散期より強かった. 一方, のどの違和感と咳は, ヒノキ科花粉が少量飛散であったにもかかわらず, ヒノキ科花粉飛散期で悪化した. また日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票No2の鼻眼以外の症状において, スギ花粉症では飛散総数が多いと全般に症状が悪化したが, ヒノキ科花粉症は少量飛散でも強い咽喉頭症状を示し, 大量飛散年に類似した.結論: ヒノキ科花粉症はスギ花粉症と同一のように考えられているが,スギ花粉症とは異なる鼻眼以外の症状を呈する. 特にヒノキ科花粉症において咽喉頭症状が強く, 少量の飛散でも強い症状がある.
著者
湯田 厚司 小川 由起子 荻原 仁美 鈴木 祐輔 太田 伸男 有方 雅彦 神前 英明 清水 猛史
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.120, no.6, pp.833-840, 2017-06-20 (Released:2017-07-15)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

スギ花粉舌下免疫療法のヒノキ花粉飛散期への効果を検討した. 方法: スギ花粉舌下免疫療法 (SLIT) を行ったヒノキ花粉症合併180例 (平均37.0 ± 17.0歳, 男性105例, 女性75例, CAP スコアスギ4.6 ± 1.1, ヒノキ2.7 ± 0.8) を対象とした. スギ・ヒノキ花粉とも中等度飛散の2016年に日本アレルギー性鼻炎標準 QOL 調査票の QOL およびフェーススケール (FS) と, 症状薬物スコア (TNSMS) を花粉ピーク期に調査した. また, 花粉飛散後に両花粉期の効果をアンケート調査した. 結果: 飛散後アンケートで, 治療前にはスギ期で症状の強い例が多く, SLIT の効果良好例はスギ期68.7%とヒノキ期38.7%でスギ期に多かった. 両花粉期を比較すると, 同等効果42.2%であったが, ヒノキ期悪化が半数以上の54.9%にあった. 各調査項目の平均では両花粉期に有意差がなかったが, 個々の例で TNSMS スコア1以上悪化例が27.2%あり, スギ期軽症の FS 0または1の43.4%で FS が悪化した. 治療前にスギとヒノキ期に同等症状であった例の30.4%でヒノキ期に TNSMS が悪化した. 一方で, 治療前にヒノキ期症状の強かった8/30例 (26.7%) でヒノキ期に改善し, 効果例も認めた. 結論: スギ花粉舌下免疫療法はヒノキ花粉症に効果例と効果不十分例があり, ヒノキ期の悪化に注意が必要である.
著者
湯田 厚司 小川 由起子 新井 宏幸 荻原 仁美 神前 英明 清水 猛史
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.122, no.2, pp.126-132, 2019-02-20 (Released:2019-03-01)
参考文献数
10
被引用文献数
4 3

本邦でのスギ花粉とダニが原因のアレルギー性鼻炎合併例は多い. スギ花粉とダニを同時に用いた皮下免疫療法は行えるが, 舌下免疫療法の併用治療 (併用 SLIT) に関する知見は十分ではない. 併用 SLIT が行えれば有用であり, 安全性を検討した. 当院で2017年6月以降にスギ花粉 (シダトレン ®) とダニ (ミティキュア ®) で併用 SLIT を行った53例 (男性31例, 女性22例, 年齢12~53歳, 平均21.7±11.6歳, スギ花粉先行39例) を対象とした. 先行と後行 SLIT の間隔は1カ月以上あけ, 朝夕に分けて開始した後に5分間隔でスギ花粉・ダニの順で行った. 併用 SLIT 後6カ月まで受診毎に副反応を確認した. 完遂率は51/53例 (96.2%) で, 脱落2例の理由は副反応によるものではなかった. 副反応はすべて軽度で, 処置不要であった. 併用 SLIT 期の副反応は, 全副反応で増加せず, 口腔咽頭感覚症状で有意に減少した. 投与間隔による副反応は変わらず, 投与順で副反応は変わらなかったが, ダニ後行 SLIT で維持アレルゲンを減量する例が増えた. 併用 SLIT は1~2カ月以内の短期間間隔で安全に行えた.
著者
湯田 厚司 荻原 仁美 宮本 由起子 佐橋 紀男 竹内 万彦
出版者
Japan Rhinologic Society
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.13-18, 2011 (Released:2011-04-28)
参考文献数
9

スギ花粉症の初期療法は有用で, 広く浸透している。薬剤投与開始日は薬剤で異なるが, スギ花粉開始予想日に左右される。適切で効率よい初期療法を行うには, 適確な飛散開始日予測が必要だが, その予想方法は見いだされていない。そこで, 三重県津市におけるスギ花粉飛散開始日の予測方法を検討し, その結果から全国的な予想に応用できるかを検討した。【方法】気象庁ホームページから収集した気象データをもとに三重県津市のスギ花粉飛散開始の予測が可能かを検討した。その結果を基に, 既報で公開された全国のスギ花粉飛散開始日のデータを参照して, 全国の飛散開始日予想を試みた。【結果】津市の飛散開始日は11月中旬平均気温 (p=0.0027, r=0.67), 平均最高気温 (p=0.0011, r=0.70) と有意に正に相関した。11月中旬が寒いと花粉飛散が早まった。全国30都市を調査した結果, 全国的に11月中旬平均気温との相関が良く, 福岡市, 広島市, 徳島市, 西宮市, 東大阪市, 和歌山市, 大垣市, 静岡市, 中央市, 八王子市, 埼玉県坂戸市の各市と東京都が有意に相関した。名古屋市, 水戸市は平均最高気温のみ相関した。岡山市, 米子市, 松山市, 高松市では相関がなかった。また, 関東以北や日本海側の都市でも相関がなかった。九州から関東の太平洋岸都市を中心に11月中旬平均気温から飛散開始日が予想できると考えた。【結論】飛散開始日予想は初期療法開始日決定に有用であり, 誰でも収集可能な気象情報からの予想は有用度が高い。
著者
湯田 厚司 小川 由起子 鈴木 祐輔 荻原 仁美 神前 英明 太田 伸男 清水 猛史
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.1011-1019, 2018 (Released:2018-09-21)
参考文献数
9
被引用文献数
13

【背景・目的】スギ花粉舌下免疫(SLIT)の開始後4年が経過した.花粉多量飛散年にSLIT1~4年治療例を検討した.【方法】2018年(飛散総数5041個/cm2)飛散ピーク時にSLIT4年目83例,3年目72例,2年目48例,1年目67例と比較対照の初期療法320例,未治療群424例を対象とした.JRQLQ No1の鼻眼症状,薬物・総鼻症状薬物スコア,視覚的症状尺度(VAS)で評価した.【結果】SLIT各治療年は全てで未治療より,総括症状で初期療法より有意に良かった.治療3・4年目は鼻眼症状で初期療法より有意に良かった.併用薬なしで鼻症状スコア1以下の寛解率はSLIT4年目から1年目の順に41.0%,31.9%,18.8%,20.9%で,症状スコア全て0点の例は順に12.0%,12.5%,4.2%,4.5%であった.SLIT全例で処置を要する副反応は無かった.【結語】スギ花粉多量飛散年のSLITは初期療法や未治療より効果的であった.治療は短期よりも4年の長期に行う方が良いと考えた.
著者
湯田 厚司 宮本 由起子 服部 玲子 荻原 仁美 竹内 万彦 間島 雄一
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1366-1371, 2007
被引用文献数
7

【背景・目的】スギ花粉症に対する免疫療法の直接医療経費を検討し,スギ花粉飛散数の違いによる影響を検討する.【方法】免疫療法および対照の初期療法の各18例で,スギ花粉大量飛散(2005)年,中等度飛散(2003)年,少量飛散(2004)年に同一患者が支払った医療費,薬剤費をレセプトおよび診療録から算出した.また,大量飛散年に無記名で症状と治療満足度のアンケート調査をVAS法で行った.【結果】免疫療法群は維持期の医療費を加えても総医療費が低く,処方薬剤費も少なかった.また,大量飛散年でも免疫療法群は処方薬剤費が増加せず,医療費が増さなかった.アンケート調査でも免疫療法群の満足度が高く,くしゃみ,鼻みず,眼のかゆみの症状が有意に良かった.【結論】免疫療法は直接医療経費の面からは医療経済上も有用で,特に花粉飛散数が多い程顕著になる.
著者
湯田 厚司 宮本 由起子 荻原 仁美 服部 玲子 大久保 公裕
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.124-132, 2009

【背景】花粉症に対する舌下免疫療法は,本邦では試験段階として成人例での有用性が報告されている.本法は痛みがなく,通院回数が少ないので,特に小児例で利点が多いと考えられるが,小児スギ花粉症での検討はない.【方法】スギ花粉症患児10例(男児4例,女児6例,平均8.5±2.2歳)に標準化アレルゲンエキス「スギ花粉」(トリイ社製)で舌下免疫療法を行った.投与方法は成人例と同じとし,2000JAUで週1回維持した.初年度の臨床症状を検討した.【結果】全例で安全に在宅投与ができた.初年度スギ花粉飛散期の症状は,全期間で軽症であり,スコアの最大は鼻閉の1.3点であった.救済薬の使用は少なく,10例中3例が無投薬無症状で,2例が5日以内の頓服服用であった.5cm尺度のvisual analog scaleも1cm程度と極めて良好であった.アンケートによる治療の印象は全例良好であった.【結論】少数例でのpilot open studyであるが,小児スギ花粉症にも舌下免疫療法が有効である可能性が示唆された.