著者
富田 道男 斉藤 学 春山 洋一
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.229-233, 1992-03-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
9
被引用文献数
2

(1) 水の煮沸により重金属溶出の認められなかったのは, ホーローびき鍋のみであった.(2) 5%酢酸水溶液の煮沸では, どの鍋 (鉄鍋を除く) からも重金属の溶出が認められ, その溶出量は水煮沸の場合の10倍に達するものがあった.(3) 5%酢酸水溶液の煮沸で溶出量の増加が最も少なかったのは, フッ素樹脂加工のアルミニウム鍋であった.(4) スズ引き銅鍋からは鉛の溶出が認められた.(5) シリコン強化焼き付けと称するてんぷら用鉄鍋は5%酢酸水溶液の煮沸により, 内面の塗装皮膜のほとんどが剥離した.このように, 使用方法の限定された表面処理の施された鍋を他の目的に使用するさい, その性質について十分調べることが肝要である.
著者
富田 道男 斉藤 学 春山 洋一 南出 隆久 畑 明美
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

平成7年度科学研究費補助金では、アルミ鍋からのアルミニウム溶出に及ぼす溶液の影響について調べ、溶出量は酸性溶液で多くなり、酸の種類にも影響されることを明らかにした。2%の酢酸、リンゴ酸、及びクエン酸のそれぞれの溶出量は、100cm^2当たり4.2mgと酢酸が最も多く、リンゴ酸、クエン酸では少なかった。また、酢酸の場合、溶出量は試料温度とともに指数関数的に増えることがわかった。さらに、標準的な食物の調理にアルミ鍋を使用した場合に、鍋から溶出する量も含めて、1人1食分に含まれるアルミニウムの量を調べた。その結果、米飯185g、ポ-クビーンズ163g及び五目豆244gを1食分とした場合、3.4mgのアルミニウムを摂取することになることがわかった。また、食品原材料の中には、鶏の手羽肉のように、100g当たり1.3mgものアルミニウムを含んでいるものがあることも明らかになった。このことを踏まえて、平成8年度科学研究費補助金では、食物の他にも、日常の食物によく使用される食品に含まれるアルミニウムの量の測定に重点をおいた。食品30種について測定した100g当たりのアルミニウム含量を畜肉、魚類、農産物それぞれに分けて平均すると、畜肉の平均アルミニウム含量は2.2mg、魚類では2.4mg、農産物では、葉菜類の平均含量が5.3mgと最も多く、次いで大豆の4.5mg、果菜類0.93mg、根茎菜類0.63mgであった。
著者
松原 斎樹 松原 小夜子 蔵澄 美仁 富田 道男 飯塚 英雄
出版者
京都府立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

5年度に行った冬季調査結果のまとめと反省をもとに夏季調査の項目を決定して昨年冬季と同じ住戸を対象にして夏季のヒアリング調査と熱環境測定を行った。また,吹き抜けを持つ住戸を5戸(内1件はソーラーハウス)を選定し6年度夏期.冬期のヒアリング調査および熱環境測定を行った。また,昨年度ヒアリング調査の対象住戸と同一構造の住戸約50件の郵送調査を夏季・冬季に行った。室温の実測データから実生活における体感温度の推定を行うためにはより正確な熱収支量を知る必要があるため,正座位人体と周囲壁面との有効放射面積と形態係数を求める実験を行い,姿勢の違いに体感温度の差を推定をした。一般住戸の夏期の調査結果ではクーラー使用を控えて通風によって生活したいという要求が満たされない住戸が多い。また冬期調査では30m^2を上回る広いLDK空間でも直接的な寒さの不満は少ないが,こたつ・ホットカーペットで足元寒さに対処する住戸は多く,開放式器具による空気汚染の問題も予想されるが今回は空気質の測定は行っていない。吹き抜け住戸では夏の通風は有利であるが設計によってはあまり涼しく住めていない。また冬期は電気床暖房により採暖的に生活している2例,かなり寒い1例など十分に寒さを意識した計画はなされているとはいない。空気集熱式のソーラーハウスでは床暖房方式であり,足元の冷えがないために起居様式の季節差も少ない。今回の知見では初歩的な配慮によって熱環境を改善する手段が見いだされる例が多いので,そのような設計指針を設計者に啓蒙することによる改善が重要であると考えられる。