- 著者
-
松原 小夜子
- 出版者
- 日本建築学会
- 雑誌
- 日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.469, pp.65-76, 1995-03-30 (Released:2017-01-27)
- 参考文献数
- 34
- 被引用文献数
-
3
3
1)住宅階層をとらえる指標を延床面積に置いて,延床面積と主要イ>テリア要素との関連性をみると,延床面積ともっとも関連が深いイ>テリア要素はイス・ソファーの張地と様式である。2)イス・ソファーの張地と様式を基準にすると,洋風居間のイ>テリア要素全般に差異が認められることから,洋風居間のイ>テリアは,(1)革張,(2)布張クラシック,(3)布張モダ>他,(4)イス・ソファーなしの4つに類型化できる。<革>はフォーマルイメージ,<布クラシック>はエレガントイメージといえ,両者ともに高級感が読み取れる。<布モダン他>はノーマルイメージ,<イス・ソファーなし>はカジュアルイメージといえ,これらは<革>や<布クラシック>に比べると高級感は薄れる。したがって洋風居間のインテリアは,イス・ソファーの張地と様式を基準にするとグレード別およびイメージ別に類型化が可能である。3)インテリア類型と居住者属性との間には対応関係が存在しており,<革><布クラシック>の2類型と<布モダン他>とでは居住者属性においても階層差が存在する。<革><布クラシック>の2類型と<イス・ソファーなし>とは階層差ではなく子供の年齢差である。インテリアイメージでは,<革>はフォーマルイメージ,<布クラシック>はエレガントイメージといえるが,居住者属性においても<布クラシック>は経済力に加えて夫婦ともに多趣味であるなど文化的属性との関連がうかがえる。4)インテリアヘの満足度や変更希望では,<布クラシック>はもっとも満足度が高く次いで<革>が相対的に満足度が高い。<布モダン他>と<イス・ソファーなし>は現在のインテリア要素を取り替えたいといった希望が多い。<イス・ソファーなし>は,いずれはソファーを置きたいという希望がみられる。5)インテリア要素の選択において居住者は雑誌,ショールーム,住宅展示場,広告やカタログといったインテリア情報を参考にしている。インテリア情報のデータを分析すると,インテリア調査の結果と同様に洋風居間のインテリアは4つに類型化できる。インテリア類型と延床面積との関係をみると,延床面積の増加とともに<革>と<布クラシック>が増加する傾向がある。<革>や<布クラシック>のインテリアには,インテリア情報を通じて高級イメージが付与され,<布モダン他>との差異化か生み出されていると推察される。6)以上より,<革>や<布クラシック>のインテリア類型と<布モダン他>のインテリア類型との間には階層的な差異が存在し,この背景にはインテリア情報の影響があることが明らかとなった。この結果から,<革>と<布クラシック>のインテリア類型は,<布モダン他>のインテリア類型との差異によって居住者の社会的属性や文化的属性の高さを表示する役割を果たしていることが推察されるが,この点についてさらに次報以降で考察を深める予定である。<革>や<布クラシック>のインテリア類型の存在は,1980年代後半のバブル経済と無縁でないように思われる。そこで次報では,<革>や<布クラシック>のインテリア類型に差異性が付与されるプロセスを,戦後消費社会の状況とからめながら考察したい。