著者
畑 明美 南光 美子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.116-121, 1983-06-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
11
被引用文献数
5

ワラビのあく抜き処理の過程で,数種のあく抜き剤が,ワラビ中無機成分含有量にいかなる影響を及ぼすかについて,一般に常用される熱湯浸漬法によって実際調理の立場から検討した.その結果,本実験での条件下において,ワラビ中無機成分含有量に差異がみられた.すなわち,K,Mg及びCuでは産地のいかんを問わず,程度の差こそあれいずれのあく抜き処理によっても減少したが,Mn及びFeでは木灰,わら灰処理によって一部には若干増加するものが認められた.また,Naは重曹処理で,Caは木灰,わら灰処理で著しく増加したことが注目され,この傾向は産地のいかんを問わずに認められることが特色であった.なお,処理液のpHはわら灰液>灰木液>木灰上澄液>重曹液>水道水の順に高くなり,これに伴ってワラビ組織の軟化が促進された.
著者
畑 明美 緒方 邦安
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.6-12, 1979-01-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
15
被引用文献数
3 1

漬け物原料としてハクサイ,キャベツ,セイサイ,キュウリを用いて塩漬け,糠漬け製品を作り漬け込み時における硝酸塩,亜硝酸塩含量の変化を調べた。ハクサイ,キャベツを塩漬けした場合,漬け込み後,ハクサイでは3日,キャベッでは4日までは材料中の硝酸塩は減少し,漬け汁中の硝酸塩は増加した。その後キャベツと同漬け汁ではやや増加がみられたが,ハクサイでは変化しなかった。亜硝酸塩の生成はハクサイでは漬け込み4日後,キャベツでは5日後に最高に達し,以後急速に減少し,8日後,6日後にはそれぞれ僅少となった。ハクサイ塩漬けにアルコールを添加したものでは,亜硝酸塩の生成量が少なく,キャベツに酢酸を添加した場合,亜硝酸塩はまったく生成されないことを認めた。セイサイの塩漬けもハクサイやキャベツと同様な硝酸塩含量の消長がみられたが,亜硝酸塩生成量は比較的少なく,6℃,20℃保存下では6℃の方が多かった。ハクサイ,キャベツの糠漬けでは材料中の硝酸塩は漬かりの進行に伴なって減少したが,糠床中の硝酸塩の増加は緩慢であった。亜硝酸塩の生成は塩漬けに比べ少ない傾向にあった。キュウリの糠漬けでは普通床とアスコルビン酸添加床を作って調べたところ,アスコルビン酸添加床のキュウリ中のアスコルビン酸は増大したが,硝酸塩含量の変化は両床とも大差はみられなかった。市販漬け物の硝酸塩含量は13~1491ppmで亜硝酸塩はコカブ塩漬けで259ppm検出されたが,他はほとんど認められなかった。
著者
畑 明美 南光 美子 長谷川 明子 AKEMI HATA YOSHIKO NANKO AKIKO HASEGAWA
雑誌
京都府立大学学術報告. 理学・生活科学 = The scientific reports of the Kyoto Prefectural University. Natural science and living science (ISSN:0075739X)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.63-71, 1986-11-15

キュウリ, ナス, キャベツを用いて塩漬け及び糠漬けを行い, 漬け込み後経日的にpHの変化並びに無機成分の挙動を調べた。1.塩漬け, 糠漬けのいずれの場合も, 漬け材料, 糠床及び漬け汁ともに経日的にpHは低下した。2.塩漬けのキュウリ, ナス及びキャベツ中のNa含量は経日的に増加したが, キュウリ, キャベツ中のMg, Ca, K含量は減少するのに対し, ナス中では増加することが認められた。3.糠漬けのキュウリ, ナス及びキャベツ中のNa及びMg含量は増加し, Ca含量は減少した。また, ナス中のK含量は漸増したが, キュウリ, キャベツ中では減少する傾向が認められた。
著者
南出 隆久 饗庭 照美 畑 明美
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.96-100, 1995-05-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
8

The physical and chemical changes in sweet peppers sauteed with high (4,600 kcal/h) and low (2,300 kcal/h) calories cooking burners were determined.The pericarp tissues of sweet pepper cut into square pieces of 3×3cm weighed 200g and ten grams of vegetable oil were added, and then sauteed on the flying pan at 200°C for 4min.These results were as follows:During sauteeing it was found not only more loss in their weight, attached oil contents, green color and hardness, but also more increase in penetrated oil contents were found in the case of the high calorie cooking burner than those of the low calorie cooking burner. The content of vitamine C was stable during sauteeing up to 3 min. on the both heating powers.The appearance, weight loss, green color, penetrated oil contents, and vitamine C content of the sauteed sweet peppers in the optimum sauteeing periods (high calorie cooking burner: 1.5-2.5min., low calorie cooking burner: 2.5-3min. ) were not noticeable differences between the sweet peppers sauteed with the two types of heating powers.
著者
畑 明美 南出 隆久 殿畑 操子
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大学学術報告. 理学・生活科学 (ISSN:0075739X)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.37-48, 1990-11-19

In order to clarify changes in quality of manufactured goods in apple pie as affected by the thickness in bottom crust and the presence of hole in top and bottom crust were investigated. Pastry of pie was made flour (protein content 8.3% and 11.4% mixed 1 : 1/weight ratio) with salt-water and natural butter. Thereafter, two-crust was prepared with 0.3,0.4,0.5 and 0.6cm thickness in bottom crust and 0.2cm thickness in top crust with hole (1.5mm^2,80 pieces/pie), and baked for 13 minutes at a temperature of 200℃, filled 100g or 200g using apple preserve. The results obtained were summarized as follows : Although the formation of flakiness was more promoted at 0.6cm thickness than that of 0.3cm in bottom crust, however, these parts were not swelled fully, and became heavy total weight of pie. In the case of presence hole in top crust, evaporation of water in pie was accelerated, and good swelling was also recognized. In conclusion, it was indicated that general condition of excellent apple pie is 0.3cm thickness of bottom crust and make hole in top crust only.
著者
畑 明美 南光 美子 長谷川 明子 AKEMI HATA YOSHIKO NANKO AKIKO HASEGAWA
出版者
京都府立大学学術報告委員会
雑誌
京都府立大学学術報告. 理学・生活科学 = The scientific reports of the Kyoto Prefectural University. Natural science and living science (ISSN:0075739X)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.63-71, 1986-11-15
被引用文献数
1

キュウリ, ナス, キャベツを用いて塩漬け及び糠漬けを行い, 漬け込み後経日的にpHの変化並びに無機成分の挙動を調べた。1.塩漬け, 糠漬けのいずれの場合も, 漬け材料, 糠床及び漬け汁ともに経日的にpHは低下した。2.塩漬けのキュウリ, ナス及びキャベツ中のNa含量は経日的に増加したが, キュウリ, キャベツ中のMg, Ca, K含量は減少するのに対し, ナス中では増加することが認められた。3.糠漬けのキュウリ, ナス及びキャベツ中のNa及びMg含量は増加し, Ca含量は減少した。また, ナス中のK含量は漸増したが, キュウリ, キャベツ中では減少する傾向が認められた。These studies were carried out to know the changes in mineral contents in cucumber, egg plant and cabbage as affected by soaking treatment. The vegetables were pickled using 5% or 2% salt and soaked in rice bran mash. The results obtained were as follows; 1. After soaking treatment, the pH values of vegetables, rice bran mash and eluted solution from vegetables were decreased during the soaking. 2. Sodium content in cucumber, egg plant and cabbage in salting was increased rapidly, and although magnesium, calcium and potassium contents in cucumber and cabbage were decreased, these elements contents in egg plant were contrary increased during the period of salting. 3. On the other hand, sodium, magnesium contents in cucumber, egg plant and cabbage soaked in rice bran mash were increased remarkably, but calcium content in them was decreased. In addition, potassium content in egg plant was increased sightly, but it was decreased in cucumber and cabbage during the soaking.
著者
畑 明美 饗庭 照美 南出 隆久 殿畑 操子 AKEMI HATA TERUMI AIBA TAKAHISA MINAMIDE MISAKO TONOHATA
出版者
京都府立大学学術報告委員会
雑誌
京都府立大学学術報告 理学・生活科学 (ISSN:0075739X)
巻号頁・発行日
no.42, pp.p41-47, 1991-11

近年, 加熱調理機器類の発達はめざましく, 各種の熱エネルギーの異なる調理機器が利用されている。そこでガスエネルギー源として燃焼カロリーの異なる2種のコンロ(強火 : 4,100kcal/h・普通火 : 2,300kcal/h)を用いて水を媒体とした加熱操作を行ない両者について比較検討した。1.スパゲティを強火でゆでると普通火よりもゆで上り時間は短縮され食味も良好であった。これはゆであげ後の増重率が大であるにもかかわらず, めん幅が小でしまりのある状態にゆで上がっていることからも考察することができた。また, 一般的にパスタをゆでる場合は塩添加ゆでが指示されているが, デュラム小麦を原料とした場合その効果は明らかではなく火力の違いによる影響が大であると思われた。2.ジャガイモを各種の水量でゆでると, ゆで用水量が多い時, 内部温度の上昇速度は普通火よりも強火がより速くなった。そして普通火は水量が多いほどジャガイモは軟化が遅く各々の破断荷重の値は不均一になったが, 強火では水量が増えてもその多量の熱媒体となる水が更に強い熱媒体をつくり出し同じくらいの硬さになり均一となった。また組織の軟化に伴いゆで液中への溶出カリウム量と遊離アミノ酸量は強火のほうが多く溶出していた。なおこの報告の一部は平成2年日本家政学会関西支部, 第12回(通算68回)研究発表会で発表した。Recently, we have seen notable developments in cooking ranges, which are available in many types for some of heat energies. We examined to the physical and chemical changes in spaghetti and potatoes under the two different types of cooking ranges using gas energy (normel heating power : 2,300 kcal/h, strong heating power : 4,100 kcal/h). The results were as follows; (1) It was observed that when spaghetti was boiled with a strong heating power, the boiling time became shorter and the taste was better than those with a normal heating power. The spaghetti was also boiled up with a smaller diameter and a better elastic firmness in spite of the weight of spaghetti increasing. It was found that there were few effects of salts addition in boiling water and were some effects of heating power on the quality of spaghetti made from durum wheat flour. (2) When a comparison was made on boiling potatoes using 3,5,and 10 times volumes of water, the increasing of inner temperature of potatoes at the strong heating power became faster than the ones at the normal heating power. The volume of water was influences of potato texture and the large volume of water produced uneven texture of potato under the normal heating power. The elution of potassium and free amino acid from potato tissues into boiling water under the strong heating power were larger than the ones under the normal heating power.
著者
畑 明美 緒方 邦安
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.132-137, 1976
被引用文献数
1

果菜類のナス,ピーマン,メロン,イチゴについて,生育中ならびに貯蔵中の硝酸塩含量について調べた。<BR>(1) ナスの果実の生育に伴い硝酸塩含量は増加し,いわゆる収穫適期に最高になり,夏採りナスでは,その後,完熟期にはやや減少した。部位別の含量分布をみると,果梗側の基部に含量が高く,出荷適期のもので270ppmも含まれており,果頂部はその1/4~1/5の含量であった。貯蔵中,硝酸塩はやや減少するようであるが,低温下では低温障害が生じ,20℃下では貯蔵後6日で一部腐敗果がでて亜硝酸塩の生成がみられた。<BR>(2) ピーマンの果実の硝酸塩含量を7月と8月の採取果で比較すると,収穫初期の7月果に含量が高く後期では約半分となった。生育に伴う硝酸塩の変化については8月収穫の果実でみたが,幼果期から完熟期へしだいに減少した。 1℃, 12℃, 20℃および1℃のCA(O<SUB>2</SUB> 3%: CO<SUB>2</SUB> 3%)下に貯蔵したが,いずれの区も貯蔵1カ月を経過しても硝酸塩量の変化はみられなかった。<BR>(3) メロンでは未熟果が適熟果に比し含量が高かった。とくに皮部に多く,胎座には少なく,食用とする適熟果の果肉部で17ppm程度であった。<BR>(4) イチゴの硝酸塩は約10ppmで果菜類中では少ない方であるが, 0℃および0℃のCA貯蔵でもあまり減少がみられなかった。 CA貯蔵では,かびの発生がおさえられる傾向がみられたが,亜硝酸塩含量は普通空気区とあまり変らなかった。<BR>本実験を行なうにあたり,試料提供など実験に援助をいただいた京都府大附属農場,寺田友良,今井俊夫の両氏に対し,また分析にあたりご協力いただいた川崎俊和氏,竹崎宏氏に深謝します。
著者
南出 隆久 畑 明美 TAKAHISA MINAMIDE AKEMI HATA
出版者
京都府立大学学術報告委員会
雑誌
京都府立大学学術報告 理学・生活科学 (ISSN:0075739X)
巻号頁・発行日
no.41, pp.p23-28, 1990-11

大豆の利用拡大を図る目的で, 極大粒種のオオツル, 普通黄大豆タマホマレ, 緑大豆井手町在来の3品種を用い, 枝豆としての収穫時期の判定と, 収穫後の品質変化について検討した。本実験で用いた大豆3品種とも一莢当りの種子数が1,2粒と枝豆用の品種に比べ少なく, また収穫までの生育日数も長くかかることがわかった。大豆の風味や品質に関与する還元糖, アミノ酸, アスコルビン酸は種子の成熟にしたがい減少した。しかし, 全糖は増加傾向にあった。大豆の莢の外観による収穫適期の判定には, CIEのa値が化学成分の変化と高い相関関係にあることがわかった。収穫後の品質保持には, 低温貯蔵が有効であるが, 井手町在来のように, 20℃貯蔵でも全糖, アミノ酸含量の減少が少ない品種のあることがわかった。
著者
南出 隆久 畑 明美 TAKAHISA MINAMIDE AKEMI HATA
雑誌
京都府立大学学術報告. 理学・生活科学 = The scientific reports of the Kyoto Prefectural University. Natural science and living science (ISSN:0075739X)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.23-28, 1990-11-19

大豆の利用拡大を図る目的で, 極大粒種のオオツル, 普通黄大豆タマホマレ, 緑大豆井手町在来の3品種を用い, 枝豆としての収穫時期の判定と, 収穫後の品質変化について検討した。本実験で用いた大豆3品種とも一莢当りの種子数が1,2粒と枝豆用の品種に比べ少なく, また収穫までの生育日数も長くかかることがわかった。大豆の風味や品質に関与する還元糖, アミノ酸, アスコルビン酸は種子の成熟にしたがい減少した。しかし, 全糖は増加傾向にあった。大豆の莢の外観による収穫適期の判定には, CIEのa値が化学成分の変化と高い相関関係にあることがわかった。収穫後の品質保持には, 低温貯蔵が有効であるが, 井手町在来のように, 20℃貯蔵でも全糖, アミノ酸含量の減少が少ない品種のあることがわかった。
著者
前畑 明美
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.344-359, 2011 (Released:2018-01-23)
参考文献数
67
被引用文献数
2

In Japan, more than one hundred islands have been connected to the mainland by bridges since the period of high economic growth beginning in the late 1950s. This has been aimed at bringing the economic levels of the islands up to that of the mainland. But, although reliable transportation routes to the mainland have been secured, a diversified life space has yet to come into existence on the islands. Indeed, the functioning of the communities on the islands has weakened.The objective of this paper is to understand the present status of the social and functional decline on these bridged islands. Here our example is Kouri-jima in Okinawa, where a fixed link to the mainland was completed in 2005. We consider the influences of the sea bridge from the perspective of the social experiences of the inhabitants.Analysis reveals that the fixed link has certainly brought some merits to the island, in terms of saving time, labor, and transportation costs, as well as the reliability of the route. In fact, the new route has brought convenience and flexibility to some of the island’s inhabitants. On the whole, however, these effects have been restricted to a narrow range of the island’s livelihood. In addition, the effects of the fixed link on transportation have brought disadvantages to many aspects of everyday life, causing the inhabitants mental, physical, and economic burdens at the levels of the individual, the family, and the community. As a result, close social connections between the inhabitants, on which the traditional community was based, have weakened considerably, bringing changes to the “island lifestyle” that depended on the sea that surrounded it.The influences of the fixed link have resulted from essential differences between land transportation and marine transportation. Three factors have compounded the negative influence of the fixed link: first, the loss of the functions of marine transportation, which had complemented and maintained the restrictive and cooperative characteristics of the community; second, the independence and reliability of land transportation; and third, the increase in strong influences from the mainland. The results of this study suggest that characteristics of a “non-island community” have emerged here, with the new land transportation route and its emphasis on convenience causing an imbalance in the transportation system and a disruption of the cooperative and symbiotic nature of the community.
著者
前畑 明美
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.184, 2005

1.研究目的 日本は、周囲を海洋に囲まれた世界有数の島嶼国である。その広大な本土とは対照的に、小島嶼では第二次世界大戦以降、本土との隔絶から派生する「後進性」の改善が要請され、国による「離島」振興が推進されてきた。特に1960年代からの「架橋時代」、島々は本土からの莫大な投資により近代化・資本主義化を進め、急速にその孤立性を喪失したといわれる。しかし現在も、それら多くの島嶼では後進性からの脱却は果たされていない。人口減少と高齢化、地場産業の衰退、共同体の消滅によって社会的存続の危機にある。今や日本の島々は、縁辺地域として固定化され、最も生活空間の様相が変質し地域社会の衰退が顕著な地域となってきている。本報告では、沖縄の浜比嘉島を事例とし、"架橋化"という島の大近代化事業を通した「島社会」の変容とそのしくみを、"島嶼性"を考慮しながら総合的に検討してみたい。2.島嶼の架橋化 島嶼地域の架橋化は、事実上、海上交通から常時陸上交通システムへの移行を意味する。それは島嶼の特性である海による本土からの隔絶性を除去し、自然の制約を越えた人と物の自由な往来を可能とする。これまで「離島」振興においては、この隔絶性の解消こそが島の抱える社会・経済問題を解決すると考えられてきた。広域化・大規模化・高速化へと進む現代社会にあり、生活や生産・流通にもたらす橋のプラス効果は絶大、かつ人口減少を抑制するとみなされている。いわば後進性脱却への最終手段である架橋化は今日まで諸島嶼で進められ、現在120橋を数える。3.対象地と方法 浜比嘉島は、沖縄本島中部東海岸の太平洋上に浮かぶ、面積が約2㎢の島である。農業に加え、沖縄屈指の広大なイノー(サンゴ礁の浅い礁池)を背景に漁業を基幹産業としている。琉球開闢の神が渡来した島として知られる浜比嘉島もまた、戦後に人口が減少の一途をたどり(1997年の架橋の前には、40年間に国勢調査人口は1372人から421人へと約70%減少)、過疎が進行していた。 用いるデータは、島での面接による聞き取り・参与観察に拠るもの、そして各種の統計である。これらを基に、島の内情についての価値判断に重点をおき、架橋化に伴う生活の質的変化をみていく。その際、様々な要素から成る「島社会」を捉えるには多面的な考察が必要となる。本研究では、人口・産業・共同体の三つの側面から変容の全体像にせまり、それをふまえそのしくみについて明らかにする。4.結果の概要(1)架橋後の島では、交流人口が増加したにもかかわらず、人口再生産はなお縮小し、引き続き人口の減少傾向がみられる。(2)産業も、その再編過程においてモズク養殖への特化に至り、全体として縮小・不安定化している。(3)共同体は内部の個別化・孤立化を受けて急速に弱体化し、解体へと向かっている。(4)日々の生活や産業、共同体の複合体として成立する「島社会」は、存立基盤そのものを喪失しつつある。その結果、本島への依存性が強まる中、受動的変化を遂げながら「島社会」は著しく衰退してきている。しかしこうした島の動静は、島嶼の人々の人間関係や人と島との関係における現代社会特有の変容ともまた別言される。(5)近年の島の変容は、架橋化のもたらした輸送や心理の効果が、海に基づく「人の繋がり」や「多様な暮らし」を包括していた伝統的「島社会」に対し限定的に、同時にマイナスとしても全般的に働いた帰結である。先行研究では人口面での架橋効果が示されているが(宮内・下里,2003)、島の統計人口を扱う際の問題、さらに「島社会」全体のプラス面を上回るマイナス面の影響にも留意していく必要があると考える。島嶼地域の架橋化は、確かに海上交通にはない利便性を島にもたらす。しかし事例を通しては、島独自の社会生活の向上、および社会的存続という点では、その効果が島嶼の特性に十分に反映されず、一定以上の効果を生み出すのは難しいといえる。
著者
畑 明美 南光 美子 長谷川 明子 南出 隆久
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大学学術報告. 理学・生活科学 (ISSN:0075739X)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.35-41, 1988-11-18

京都府及び福井県産らっきょうを供試し, 試料重量の1%食塩を用いて1週間下漬を行った後, 食酢1ιに対して砂糖200gを添加した漬け酢を, らっきょう1kgにつき漬け酢1250mιの割合で本漬したものについて, ヘクチン及び無機成分の経時的変化を調査した。その結果, ヘクチン, 特に水溶性ヘクチン, 及び無機成分(Ca, Mg, K)は, 漬け日数の経過とともに減少した。次に, らっきょうのテクスチャー改善の試みとしてCaCl_2 (0.5,1,3%)を漬け酢に添加したところ, 総ヘクチン及び水溶性ヘクチン含量は増加し, また, 硬度も増大した。同様にMgCl_2を添加した結果, ヘクチン及びMgを除いた他の無機成分含量には大きな変化はみられなかったが, 硬度は多少増大した。
著者
富田 道男 斉藤 学 春山 洋一 南出 隆久 畑 明美
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

平成7年度科学研究費補助金では、アルミ鍋からのアルミニウム溶出に及ぼす溶液の影響について調べ、溶出量は酸性溶液で多くなり、酸の種類にも影響されることを明らかにした。2%の酢酸、リンゴ酸、及びクエン酸のそれぞれの溶出量は、100cm^2当たり4.2mgと酢酸が最も多く、リンゴ酸、クエン酸では少なかった。また、酢酸の場合、溶出量は試料温度とともに指数関数的に増えることがわかった。さらに、標準的な食物の調理にアルミ鍋を使用した場合に、鍋から溶出する量も含めて、1人1食分に含まれるアルミニウムの量を調べた。その結果、米飯185g、ポ-クビーンズ163g及び五目豆244gを1食分とした場合、3.4mgのアルミニウムを摂取することになることがわかった。また、食品原材料の中には、鶏の手羽肉のように、100g当たり1.3mgものアルミニウムを含んでいるものがあることも明らかになった。このことを踏まえて、平成8年度科学研究費補助金では、食物の他にも、日常の食物によく使用される食品に含まれるアルミニウムの量の測定に重点をおいた。食品30種について測定した100g当たりのアルミニウム含量を畜肉、魚類、農産物それぞれに分けて平均すると、畜肉の平均アルミニウム含量は2.2mg、魚類では2.4mg、農産物では、葉菜類の平均含量が5.3mgと最も多く、次いで大豆の4.5mg、果菜類0.93mg、根茎菜類0.63mgであった。
著者
南出 隆久 饗庭 照美 畑 明美
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大学学術報告. 理学・生活科学 (ISSN:0075739X)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.51-57, 1992-11-25
被引用文献数
2

枝豆のテクスチャーならびに色調におよぼす調理操作について, 緑大豆(品種 : 井手町在来)の未熟種子を用いて調べた。枝豆の破断曲線は, ゆで操作10分で生のものと明らかに異なり, 組織はもろさがなくなり粘着性を示した。また, 加熱操作として, ゆで操作, 蒸し操作, 電子レンジ操作をおこなったが, ゆで操作が枝豆のテクスチャーに好ましいことがわかった。1%食塩水や塩揉み等の食塩処理は, 枝豆のテクスチャーには明かな影響はみられなかった。枝豆の莢の緑色は子葉に比べ熱安定性は劣っていた。ゆで操作した枝豆は, 蒸し操作や電子レンジ操作に比べ緑色は安定していたが, 枝豆は食塩処理しても緑色にはそれはどの効果はみられなかった。これらの結果から, 枝豆として受け入れられる限界のテクスチャーと色調は, 破断荷重で0.7&acd;1.0kgf, CIEa^*値は-7.5&acd;-8.0を指標として比較できるものと考える。
著者
南出 隆久 長谷川 明子 畑 明美
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.271-276, 1994-11-20

抹茶を添加した豆腐を作り、その性状及び成分について調べるとともに、加熱による性状の変化についても検討した。1.豆腐の水分含有率は、抹茶の添加に伴い減少した。また、離水率は抹茶の添加により増大し、1.0%添加の場合に顕著であった。2.抹茶の添加量が増加するほどL^*値は低く、C_<ab^>*値は高い値となった。H_<ab^>^○値は1.0%の方が0.5%のものに比較して若干低い値となった。3.破断過重、破断歪は抹茶1.0%添加の豆腐で顕著に小さくなり、もろく柔らかくなった。4.抹茶の添加により鉄、マグネシウム、カルシウム、カリウムのいずれの成分も増加した。5.豆腐を加熱すると、経時的に色は悪くなるが抹茶添加量が多いほどその傾向が顕著であった。また、破断荷重、破断歪は経時的に増大した。