著者
奈良 吉主 加藤 孝太郎 河原崎 秀志 田渕 浩康 後藤 正夫 寺岡 徹 有江 力 木嶋 利男
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.33-41, 2008-04-01 (Released:2017-05-31)
参考文献数
35
被引用文献数
1

様々な植物を利用して,土壌から分離した植物内生細菌をトマトに接種し,青枯病発病抑制効果と生育促進効果を指標に選抜を行った。その結果選抜された3株のうち,イチゴを用いて捕捉したKSR01を種子処理した場合に,トマトの生育促進効果と青枯病発病抑制効果を併せ示すことを見出した。KSR01は青枯病菌に対する抗菌物質を産生しなかったので,青枯病発病抑制効果は,抵抗性誘導によることが示唆された。KSR01は種子処理した場合にトマト茎部から再分離されるため,組織に内生的に定着することが確認された。菌体脂肪酸組成,16S rRNA塩基配列の解析および細菌学的性質の調査から,KSR01をHerbaspiyillum huttiensisであると同定した。
著者
寺岡 徹 有江 力 鎌倉 高志
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

(1)我々が構築したdifferential cDNA libraryから、付着器形成時、侵入時に特異的に強く発現している病原性関連候補遺伝子をマクロアレイ、RT-PCRにより選抜した。その中から特異性の高かった、FMI1(Functional gene of Magnaporthe Infection 1; クローン#B19)、FMI2(クローン#B48)、MGH61A(Magnaporthe Glycoside Hydrase family 61A;クローン#B59)を選抜して、それら遺伝子の構造解析、ゲノム解析を行い、当該遺伝子の破壊株を作出して、付着器の形態形成ならびにイネ葉への感染過程における機能を解析した。いずれも既報の遺伝子と高い相同性を示すものはなかったものの、部分的にいくつかのドメインを保持していた。FMI1はN末端にセリン残基に富んだ配列と核局在性シグナル様配列をコードし、そのC末端側にsucrase/ferredoxinと部分的相同配列をコードしていた。当該遺伝子の破端株は付着器形成の異常、侵入の遅延をもたらした。FMI2はdual specificity phosphataseの活性ドメインを一部コードしていた。当該遺伝子破壊株は付着器形成の異常をもたらしたが、両遺伝子とも顕著な病斑形成能の低下はもたらさず、その発現も接種後3-4日以内の肉眼的病斑形成以前に限られていた。MGH61Aはシグナル配列を持つ分泌型タンパク質で、5'側の一部にglycoside hydrase family 61と相同性の高いドメインを保持していた。当該遺伝子の破壊株は付着器形成、侵入、病斑形成の低下をもたらした。(2)ベトナムを中心として、世界各地で分離されたイネいもち病菌の病原性レースと交配能について、自然交配能を有する雲南産ならびにアメリカ産イネいもち病菌を基準に調査したところ、ベトナム菌株は病原性レースは多様性に富むものの、交配能を保持している菌株は見いだせなかった。ただ、今まで報告されたことのない二本鎖RNAウイルスを見出した。本ウイルスは容易に水平移動し、いもち病菌の生育、病原性を低下させた。