- 著者
-
小島 廣光
寺本 義也
平本 健太
金井 一頼
工藤 剛治
梅本 勝博
- 出版者
- 北海道大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 1999
『地域におけるNPOの知識ネットワーキング-経営学的実証研究』は,平成11年度に開始され,平成13年度に終了した。研究は,当初の実施計画にほぼそって遂行され,次のような4章からなる非常に有意義な内容の報告書を作成することができた。第1章NPOを取り巻く現状と課題我が国のNPOが直面している4つの危機((1)資金不足の危機,(2)市場競争の危機,(3)有効性の危機,(4)正当性の危機)と2つの明るい兆候が説明されるとともに,自己革新による危機の克服方法について考察された。第2章知識ネットワーキングに関する先行研究の検討組織学習,社会的学習,知識創造等の知識ネットワーキングに関する広範な先行研究が検討された。検討に際しては,未来志向のダイナミックな視点が採用された。第3章NPOの知識ネットワーキングの分析枠組NPOの知識ネットキングを分析するための枠組が提示された。この分析枠組は,(1)SECIモデル,(2)場,(3)知識資産,(4)ナレッジ・リーダーの4つの概念から成り立っており,NPO・政策形成過程・営利企業を含む広範な組織現象が分析可能な非常に有効な枠組である。第4章NPOの知識ネットワーキングに関する事例研究-NPO法立法過程の分析事例研究は,我が国のNPO法の立法過程を詳細に分析することにより,(1)本法律の特徴である市民に広く開かれた立法過程のあり方の提示,および(2)本法律の見直すべき問題点と有効な活用方法の解明を目指したものである。事例研究に際しては,全立法過程が6期に区分され,(1)政府,(2)議員・国会,(3)市民団体の3つの参加者の孑于動が詳述されるとともに,上述の枠組にもとづき詳細な分析が試みられ,次のような多くの興味ある事実が発見された。(1)NPO法立法過程は,知識ネットワーキングのプロセスであった。(2)NPO法立法過程の参加者は,見える参加者と隠れた参加者の各クラスターから成り立っている。(3)NPO法立法過程において,政策アクティビストである加藤紘一,坂本導聡,松原明が果たした役割は極めて大きい。(4)6つの政策の窓が開き,問題・政策・政治の3つの流れが合流することにより,NPO法は成立した。