著者
柿崎 真沙子 澤田 典絵 山岸 良匡 八谷 寛 斉藤 功 小久保 喜弘 磯 博康 津金 昌一郎 康永 秀生
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.179-186, 2018 (Released:2018-05-03)
参考文献数
19

目的 DPCデータを大規模なコホート研究の発症登録に利用することが可能であるかを検討するため,独自に収集した脳卒中および急性心筋梗塞発症登録数と,DPCデータを活用して得られた疾病登録数との比較を行い,脳卒中と急性心筋梗塞の各診断名において実施された治療・処置や検査から,標的疾患罹患の把握に有用な項目があるか検討した。方法 研究対象病院のDPCデータから,4種類(主傷病名,入院の契機となった病名,医療資源を最も投入した病名,医療資源を二番目に投入した病名)のいずれかに,急性心筋梗塞,脳内出血,脳梗塞が含まれる症例を抽出し,疾患ごとに実施された検査や治療の情報を抽出・集計し当該研究対象病院にてJPHC研究の一部として独自に収集した発症登録により得られた登録数を比較した。結果 DPCデータで抽出された症例数は独自に実施した発症登録数より多かったが,その差はとくに脳梗塞において顕著であった。JPHC登録数/DPC症例数の比は心筋梗塞1.13,脳内出血0.88,脳梗塞0.67であった。結論 急性心筋梗塞および脳内出血の疾病登録にはDPCデータを利用して,対象者数を概ね把握できる可能性が示された。脳梗塞についてはDPC登録病名とDPC治療・検査・診断項目を補助的に活用することで,疾病登録対象者数の同定精度を高め得る可能性がある。しかしながら,DPCデータを大規模なコホート研究の発症登録に利用するためには,地域全体での発症数がDPC導入病院の発症数でカバーできるのか,さらなる検討が必要である。
著者
豊田 一則 小久保 喜弘
出版者
独立行政法人国立循環器病研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

腎臓病と脳血管障害の関係、言い換えれば脳腎連関を解明する目的で、以下の検討を行った。(1) 吹田研究に登録された都市型住民において、慢性腎臓病が頸動脈硬化の独立した危険因子となり、慢性腎臓病の有無に血圧カテゴリーを加えた交互作用が頸動脈硬化に対して存在した。(2)単施設急性期脳出血患者において、入院後早期の腎機能低下に超急性期収縮期血圧高度低下が有意に関連し、また腎機能低下者に転帰不良例が多かった。(3)多施設共同研究で、腎機能障害が脳梗塞rt-PA静注療法の治療成績不良や脳出血の3か月後転帰不良に独立して関連した。(4)脳血管障害と慢性腎臓病の関連を、英文総説に纏め、本研究成果も採り入れた。
著者
小久保 喜弘 中村 敏子 神出 計 宮本 恵宏 渡邊 至
出版者
独立行政法人国立循環器病研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

市部一般住民における代謝性疾患と頚動脈硬化の進展に関する追跡研究と血管内膜中膜肥厚(IMT)の進展との追跡研究について、生活習慣要因から検討した。正常高値血圧以上で最大IMT値が有意に厚かった。女性の最大IMT値は、血圧と高感度CRP高値との間に交互作用が見られた。また、女性の糖尿病型、男性の境界型以上で平均・最大IMTは有意に厚かった。頸動脈狭窄は血糖が高くなるとリスクが高く、さらに血圧上昇と交互作用が見られた。慢性腎障害は頸動脈硬化の危険因子であり、頸動脈硬化は慢性腎障害の正常高値血圧、高血圧群でさらに進展していた。頸動脈硬化症の予防に、慢性腎障害への進展抑止と血圧のコントロールが重要であるごとがわかった。さらに、追跡研究では頸動脈IMT、特に総頸動脈最大IMTは循環器病発症の予測因子であることが分かった。正常高値血圧、糖尿病型、non-HDLコレステロール高値、喫煙、BMIが保健指導において動脈硬化進展の予防に有効な指標であることが分かった。