著者
津金 昌一郎
出版者
日本乳癌検診学会
雑誌
日本乳癌検診学会誌 = Journal of Japan Association of Breast Cancer Screening (ISSN:09180729)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.4-15, 2010-03-30
参考文献数
17
被引用文献数
1

米国では乳がん死亡の減少が見られ,乳がん検診の重要性が示唆されているが,最近の統計データでは,罹患率の減少も観察されている。これは,乳がんリスクとなるホルモン補充療法の利用減少の影響と考えられている。日本では乳がん罹患,死亡ともに増加している。欧米との違いは,閉経後の乳がんが比較的少ないことだが,米国に移住した日本人の間では閉経後も増加が見られる。初潮・閉経・出産など女性の生殖要因が大きいが,疫学データからは生活習慣との関わりも考えられる。<br>国際的な評価では,閉経前後にかかわらず飲酒は乳がんのリスク要因であり,授乳は予防要因である。肥満に関しては,閉経後の確実な乳がんのリスクだが逆に閉経前の乳がんをほぼ確実に予防する。また,運動が閉経後の乳がんの予防をするのはほぼ確実であるが,閉経前に関しては可能性を示唆するにとどまる。<br>肥満の乳がんへの影響は,極端な肥満の少ない日本人では小さいと考えられる。飲酒については,ほとんど毎日飲む女性の割合は少ないものの,やはりリスクであるということが示されつつある。身体活動の乳がん予防効果を示す日本人の研究はほとんどないが,全般的な健康には良いと言えよう。イソフラボン摂取については,大豆製品をよくとる日本人では,特に閉経後の乳がんを予防してきた可能性が示される。また,受動喫煙と乳がんとの関連を示す研究があるが,特に閉経前では,受動喫煙だけでなく喫煙もやはりリスクである可能性がある。
著者
津金 昌一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本乳癌検診学会
雑誌
日本乳癌検診学会誌 (ISSN:09180729)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.4-15, 2010-03-30 (Released:2011-04-15)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

米国では乳がん死亡の減少が見られ,乳がん検診の重要性が示唆されているが,最近の統計データでは,罹患率の減少も観察されている。これは,乳がんリスクとなるホルモン補充療法の利用減少の影響と考えられている。日本では乳がん罹患,死亡ともに増加している。欧米との違いは,閉経後の乳がんが比較的少ないことだが,米国に移住した日本人の間では閉経後も増加が見られる。初潮・閉経・出産など女性の生殖要因が大きいが,疫学データからは生活習慣との関わりも考えられる。国際的な評価では,閉経前後にかかわらず飲酒は乳がんのリスク要因であり,授乳は予防要因である。肥満に関しては,閉経後の確実な乳がんのリスクだが逆に閉経前の乳がんをほぼ確実に予防する。また,運動が閉経後の乳がんの予防をするのはほぼ確実であるが,閉経前に関しては可能性を示唆するにとどまる。肥満の乳がんへの影響は,極端な肥満の少ない日本人では小さいと考えられる。飲酒については,ほとんど毎日飲む女性の割合は少ないものの,やはりリスクであるということが示されつつある。身体活動の乳がん予防効果を示す日本人の研究はほとんどないが,全般的な健康には良いと言えよう。イソフラボン摂取については,大豆製品をよくとる日本人では,特に閉経後の乳がんを予防してきた可能性が示される。また,受動喫煙と乳がんとの関連を示す研究があるが,特に閉経前では,受動喫煙だけでなく喫煙もやはりリスクである可能性がある。
著者
石原 淳子 津金 昌一郎
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.590-602, 2017-12-01 (Released:2018-02-20)
参考文献数
36

がんの発生には栄養・食生活などの生活習慣が深くかかわっている.本稿では,国内外で明らかとなってきている,がんのリスク要因となる栄養・食生活習慣のエビデンスの現状について紹介し,ライフコースを見据えたがん予防・対策における課題と今後の方向性について考察した.国立がん研究センターが提示する「日本人のためのがん予防法」の推奨項目は,科学的根拠に基づく日本人のがんリスクを総合的に評価し,提言された指針をもとに作成されている.評価の時点で発表されている論文の系統的レビューを行い,科学的な根拠としての信頼性の強さと,要因とがんの関連の強さを判定基準に沿って総合評価する方法で行われている.評価された項目のうち,「飲酒」「塩分・塩蔵食品」「野菜・果物」「身体活動」「体形」などの食と栄養に関わる項目は,予防可能なリスク要因のうち,日本人におけるがんの人口寄与割合が喫煙,感染の項目に次いで高いことが明らかになっている.また,国際的な動向として,世界がん研究基金と米国がん研究協会の「食物・栄養・身体活動とがん予防・継続的評価(Continuous Updating Project)」による評価がある.全粒の穀類・食物繊維,乳製品・カルシウム,赤肉・加工肉,コーヒー,体格,体脂肪(ライフコースにおける変化含む),βカロテンサプリメント,グリセミック負荷など,日本人を対象とした評価では関連が弱い,またはデータが不十分な項目についても評価されている.がんのリスク要因に関する知見のまとめと公表を目指したこのようなトランスレーショナル・リサーチは,疾病予防のための課題解決に向けて,優先順位をつけるため国内外で行われている.ライフコースを見据えたがん予防においては,①栄養・食生活について科学的に明らかながんリスク要因の具体的効果的改善方法に関する研究推進および実践,そして②若い世代が将来,がんを発症する世代になるまでの間の,食生活変化を踏まえた動向の注視,特に国際的に課題とされている要因についてのモニタリング,の二点が重要である.がんは生活習慣が長い年月蓄積して発生する疾患であるため,ライフコースを見据えた対策は特に重要である.生活習慣が確立されるライフコース前半に,身に着けるべき望ましい栄養・食生活の習慣を国民に広く伝えていくと同時に,将来,リスク要因となりうる,ハザードに関して国際的な研究結果に注意を払い,先手の対策を考えることも重要である.
著者
津金 昌一郎
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.775-784, 1992-10-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
21
被引用文献数
1 3

Over a million people of Japanese origin reside in South America. However, only a limited number of studies on their health status and lifestyle factors affecting it have been carried out. The author and his co-workers have been conducting a series of field surveys on the health situation and lifestyle factors in Japanese immigrants and their descendants in various areas of South America.The subjects of the first-phase study were residents in four agricultural settlements (colonies) in the suburbs of Brazil, Paraguay and Bolivia. The levels of minerals and heavy metals in the hair were measured, and significant variations were found in several elements. These different levels were found to be regulated by the environmental level of their living place and by the dietary pattern.In the second-phase study, several health-related indicators such as blood pressure, anthropometric features, viral infection markers in sera, and dietary pattern were investigated in two group of immigrants, one from Okinawa and the other from the mainland of Japan, both living in Bolivia. Differences in health situation and lifestyle were identified between them. Traditional habits seen in their original places of residence in Japan still existed in their life in Bolivia, while the introduction of Bolivian lifestyle was prevalent among them.Although the number of Japanese residents in Brazil is largest in the world outside of Japan, little has been known about their health situation. The subjects of the third-phase study were Japanese Brazilians. A descriptive epidemiologic study was carried out, and the mortality and incidence of cancer were determined. Some changes in disease pattern were noted when compared with Japanese in Japan, but these changes were not as marked as in the case of Japanese in the U. S.. A cross-sectional study on the lifestyle factors of Japanese residents in São Paulo showed some differences in health-related indicators and dietary habits in comparison with Japanese living in five areas of Japan. Such differences were also found among Japanese in São Paulo according to the place of origin in Japan.These series of studies in Japanese immigrants in South America showed the importance of lifestyle factors, especially dietary habits, for the health situation.
著者
津金 昌一郎
出版者
日本民族衛生学会
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.124-132, 1989
被引用文献数
2

戦後ボリビアへ移住し30数年にわたって,集団生活を営んでいる,沖縄出身者より構成されている移住地(オキナワ移住地)と,九州を中心とした本土出身者よりなる移住地(サンファン移住地)のそれぞれにおいて,現在の食生活パタンを明らかにすると共に,それがどのような因子により規定されているのかを検討した. その結果,現在のオキナワ移住地の食生活の特徴として豚肉や動物油の摂取が挙げられる一方,サンファン移住地のそれは,魚・漬物・鶏肉・果物の摂取の多さと,調味料として砂糖・食塩・醤油を頻回に使うという食生活であった. また,主成分分析の結果として,移住先での食生活を規定する最も大きな因子としては,牛肉・パン・コーヒーなどで代表される食生活のボリビア化が挙げられたが,移住前の出身地域における食文化の影響が第2主成分として根強く存在している事が明らかになった.
著者
柿崎 真沙子 澤田 典絵 山岸 良匡 八谷 寛 斉藤 功 小久保 喜弘 磯 博康 津金 昌一郎 康永 秀生
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.179-186, 2018 (Released:2018-05-03)
参考文献数
19

目的 DPCデータを大規模なコホート研究の発症登録に利用することが可能であるかを検討するため,独自に収集した脳卒中および急性心筋梗塞発症登録数と,DPCデータを活用して得られた疾病登録数との比較を行い,脳卒中と急性心筋梗塞の各診断名において実施された治療・処置や検査から,標的疾患罹患の把握に有用な項目があるか検討した。方法 研究対象病院のDPCデータから,4種類(主傷病名,入院の契機となった病名,医療資源を最も投入した病名,医療資源を二番目に投入した病名)のいずれかに,急性心筋梗塞,脳内出血,脳梗塞が含まれる症例を抽出し,疾患ごとに実施された検査や治療の情報を抽出・集計し当該研究対象病院にてJPHC研究の一部として独自に収集した発症登録により得られた登録数を比較した。結果 DPCデータで抽出された症例数は独自に実施した発症登録数より多かったが,その差はとくに脳梗塞において顕著であった。JPHC登録数/DPC症例数の比は心筋梗塞1.13,脳内出血0.88,脳梗塞0.67であった。結論 急性心筋梗塞および脳内出血の疾病登録にはDPCデータを利用して,対象者数を概ね把握できる可能性が示された。脳梗塞についてはDPC登録病名とDPC治療・検査・診断項目を補助的に活用することで,疾病登録対象者数の同定精度を高め得る可能性がある。しかしながら,DPCデータを大規模なコホート研究の発症登録に利用するためには,地域全体での発症数がDPC導入病院の発症数でカバーできるのか,さらなる検討が必要である。