著者
藤田 直也 山田 拓司 野村 孝泰 牧野 泰子 村田 水紀 竹中 学 村田 浩章 竹内 幸 長崎 理香 金子 幸栄 伊藤 剛 柴田 麻千子 小山 典久 鈴木 賀巳
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.27-31, 2004 (Released:2006-12-15)
参考文献数
12

新生児の急性腎不全に対する腹膜透析 (PD) ではしばしば除水が困難である。我々は過去に, 腹腔内に少量の腹膜灌流液を貯留した状態を維持しつつ持続的に注排液を行う手法で, 新生児の急性腎不全例を良好に管理できる可能性があることを報告してきた。しかし注液側も排液側も流量を機械的に調節する手法では, 腹腔内に常時適当な量の腹膜灌流液を貯留しておくことが困難であった。今回は新たな試みとして, 排液側の回路をやや挙上することによって腹腔内に常時一定量の腹膜灌流液を貯留した状態を維持しつつ, 持続的に灌流する方法でPDを施行した。すべて既存の物品を用いて実施が可能であり, より簡便に一定の貯留液量を保ちながら持続灌流が可能で, しかも大量の透析液を灌流しても, 全く問題なく治療が可能であった。新生児のPDは, その手法にまだ改善の余地があり, 改良することで, より良好な治療ができる可能性があるものと考えられた。
著者
太田 隆徳 伊藤 孝一 杉浦 時雄 小山 典久 齋藤 伸治 村上 周子 田中 靖人
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.403-412, 2021-07-01 (Released:2021-07-08)
参考文献数
38

症例は2歳男児.母と姉と祖母がB型肝炎ウイルス(HBV)キャリアで,母と姉はHBe抗原陽性かつ高HBV DNA量(HBV DNA>7 log IU/ml)だった.出生直後に抗HBsヒト免疫グロブリンが投与され,HBワクチンが出生時,生後1,6カ月時に接種された.1歳時にHBs抗原陰性,HBs抗体333.8 mIU/mlだったが,2歳時にHBs抗原0.25 IU/ml,HBs抗体115.6 mIU/ml,HBV DNA 3.5 log IU/mlとHBV感染が成立した.直接シークエンス法による遺伝子解析により,本児,母,姉由来のHBVにワクチンエスケープ変異として知られるG145R変異とP120Q変異を認めた.母と姉が保有していた変異株が1歳以降に本児に水平感染したと考えられた.高ウイルス量HBVキャリア妊婦から出生した児では,2歳以降も継続的なフォローアップと積極的なワクチン追加接種も考慮する必要があると考えられた.