著者
間宮 未来 亀田 翠 時田 幸之輔 小島 龍平 相澤 幸夫 影山 幾男 熊木 克治
出版者
コ・メディカル形態機能学会
雑誌
形態・機能 (ISSN:13477145)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.4-10, 2022 (Released:2022-10-04)
参考文献数
16

一般に筋皮神経は腕神経叢の腹側神経、橈骨神経は背側神経とされている。今回筋皮神経の皮枝と尺骨神経と手背での皮枝の交通が観察され、手背の母指から第2指まで分布していた。また、橈骨神経の皮枝としては、上腕への皮枝は貧弱であり、前腕・手背への皮枝(橈骨神経浅枝)は欠損して筋皮神経の皮枝(外側前腕皮神経)によって補われている特殊な所見に遭遇した。手背の皮神経分布について詳細に観察した結果、筋皮神経の皮枝には腹側成分だけでなく、背側成分も含まれている可能性があり、手背において両神経の関係は今後さらに考察すべき問題であることが示された。
著者
小島 龍平
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第28回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.74, 2012 (Released:2013-11-01)

ニホンザル広背筋の筋線維タイプ構成を検索した.骨格筋試料は10%ホルマリンによる注入固定を施され,同液中に約14年間保存された標本から採取した.筋線維タイプの判別は免疫組織化学手的手法を用いて行った.筋の起始と停止の中央付近で筋腹の全横断面をカバーするように切片を作成した.一次抗体として市販のモノクローナル抗体(抗速筋型MHC抗体としてclone MY-32,Sigma,抗遅筋型MHC抗体としてclone NOQ7.5.4D,Sigma)を用いて間接蛍光抗体法により染色した.筋線維タイプ構成をあらわすパラメータとして遅筋線維の数比(%ST)を求めた.広背筋の%STは35~40%程度の値を示した.背側部の筋束に比べ腹側部の筋束の方が速筋線維の比率がやや高いようにも思われたが,その違いは大きなものではなかった.すでに検索した同一個体の他の骨格筋の%STは,腓腹筋外側頭:21%,ヒラメ筋:96%,僧帽筋頭側部:56%,同尾側部:34%,板状筋内側部:58%,同外側部42%,腹直筋:25~30%,外腹斜筋:24~39%,内腹斜筋:25~32%,腹横筋:25~33%であった.広背筋の筋線維タイプ構成は,腓腹筋外側頭に比べればやや遅筋線維の数が多いが,比較的速筋線維優位の構成を示した.広背筋は上腕骨近位部に停止し,肩関節を伸展する(上腕骨を尾方に引く)大きな筋である.速筋線維優位の筋線維タイプ構成を示すことは,四足移動時の駆動力として,あるいは樹上活動時に短時間に大きな力を発揮するような働きが優位であることを示唆する.また,広背筋は広い範囲にわたって起始する.今回の検索では,背腹方向で部位により筋線維タイプ構成に大きな違いはみられなかったが,さらに部位間の機能的な特性の違いについてより詳細に検討する必要があると考える.また体幹と肩帯や上腕骨とを連結する筋群の中での広背筋の特性について検討する必要があると考える.