著者
後藤 洋三 池田 浩敬 市古 太郎 小川 雄二郎 北浦 勝 佐藤 誠一 鈴木 光 田中 努 仲村 成貴 三上 卓 村上 ひとみ 柳原 純夫 山本 一敏
出版者
JAPAN ASSOCIATION FOR EARTHQUAKE ENGINEERING
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.5_97-5_117, 2015

東日本大震災の津波避難の実態を分析するため、研究者、技術者の有志が任意参加の連携組織「東日本大震災津波避難合同調査団」を結成し、重複調査を避け調査モラルを向上させるべく連絡を取り合って調査を実施した。本報告はこの調査団発足の経緯を述べたうえで調査団の中核として活動した山田町・石巻市担当チームの調査方法とその実施状況、ならびに住民の避難に関わる背景的事象の調査結果を述べる。収集した被災者の避難データの特性については別途に取り纏め報告する。山田町・石巻市担当チームの調査に対する被災住民の苦情は聞かれず、むしろ信頼関係のもとで避難の実態解明に役立つ情報を多数得ることが出来た。著者等は山田町・石巻市担当チームの調査データとその調査経験が活用されることを期待して本報告を取りまとめている。
著者
村上 ひとみ 中須 正 島村 誠 後藤 洋三 小川 雄二郎
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.5_76-5_96, 2015 (Released:2015-10-21)
参考文献数
17

本研究では、海外における災害避難関係資料・文献を収集するとともに、その内容を分析し、概要を明らかにする。また、特徴的な研究については、レビューを行う。以上から災害からの避難について海外ではどのような研究がされているかを俯瞰する。また研究にとどまらず政策としての避難対応マニュアルや調査するうえで不可欠となるデータベース等、基礎的な情報についても併せて概説する。
著者
小川 雄二郎 永野 裕三
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.5, pp.141-144, 1995-11
被引用文献数
1

本研究は1995年1月17日に発生した阪神大震災によって企業の防災意識がどのように変化したかを考察する研究である。企業の防災意識の変化を把握するために地震後7ヵ月を経過した8月末に東京証券取引所第1部上場企業に対してアンケート調査を実施した。地震被災地域である兵庫県、大阪府、京都府(近畿と呼ぶこととする)地方の企業と車京の企業のを比較するため、東京都、兵庫県、大阪府、京都府に本社をおく932社を対象にアンケート調査を実施した。アンケート有効回答数は191であり、回収率は20.5%であった。本稿は調査の概要速報として取りまとめている。 被害の有無 阪神大震災によって被害を受けたかを聞いたところ直接的な被害を受けた企業は近畿の方が東京よりおおく、間接的な被害については近畿、東京ともあまり違いはない。 防災対策の対象とする災害 地震については震度5以下と震度6以上に分けて聞いたところ、阪神大震災以前から震度6以上の地震に対して防災対策を考えていた企業は近畿では17%に過ぎなかった。また震度によらず地震を対象としていなかった企業は近畿では55%であった。この地震を契機に震度6以上の地震を対象とすることにした企業は東京では35%、近畿では79%であり、その結果現在では震度6以上を対象とする企業は、東京では86%、近畿では93%となっている。 防災対策の変化 企業が取り組んでいる肪災対策について、以前から行っていたか、阪神大震災を契機に取り組んだかを聞いた。これまではあまり取り組まれなかった対策のうち大震災を契機に多くの企業が取り組んだ対策は災害後の復旧手順の策定と災害時従業員行動マニュアルであることがわかった。災害後の復旧手順の策定は近畿では24%から72%に跳ね上がった。災害時従業員行動マニュアルは近畿では24%から79%に跳ね上がった。防災費用の予算化もこの範躊にいれることができる。近畿では29%から57%に上がった。従来からもかなり行われてきた対策で、阪神大震災でさらに進んだ対策では役員への緊急連絡網がある。役員への緊急連絡網は近畿では60%から83%に上がった。従来から低く、阪神大震災によっても進まなかった対策は地震保険への加入と自治体と災害時援助協定である。地震保険への加入は16%から21%へ、自治体と災害時援助協定は12%から14%である。ハードな対策では耐震診断・耐震補強が高い増加を示している。耐震診断・耐震補強は、近畿では19%から64%lこ跳ね上がり、全体では27%から61%となっている。38万棟に及ぶ建物被害をもたらした阪神大震災は、企業にとっても建物の耐震性という入れ物の安全性を確認する重要性を強く認識したことがわかる。しかしガラスや屋外広告等の落下肪止は、37%から46%とそれほど増加していない。通信回線等のバックアップは以前は36%からであったのが62%となっており、今回の大震災で災害後の情報の重要性が認識されたためであろう。それに対して電力・ガスのバックアップは以前は通信回線のバックアップと同程度であったが、大震災後もあまり増加していない。 まとめ 阪神大震災を契機として、企業の防災対策は大きく姿を変えつつある。それは近畿の企業の6割、東京の企業の3割が何らかの直接被害を阪神大震災によって受けたことから、すべての面での防災対策をより推進していく必要性を強く感じていることが調査から読み取れる。すなわち大規模地震を防災対策の対象とする災害に取り込んだ企業は著しく多くなったこと、及び取り組みつつある防災対策の特機は、経験に碁づいて実際に必要なことを優先的に行っていく方向が見られる。
著者
小川 雄二郎
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
no.29, pp.p13-22, 1986-12

本研究は文化遺産保存において都市的災害をどのように位置付けて,災害対策をおこなうべきかを検討したものである。文化遺産の保存における都市的災害に対する取組は保存担当者と防災専門家の狭間にあって不充分である。文化遺産保存の現状把握,過去の災害事例調査から問題の所在を検討し、文化遺産の災害対策のありかたを災害危険の把握と災害敏感性の観点から提案するものである。
著者
谷口 仁士 小川 雄二郎
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.4, pp.391-398, 1994-08

地震と震度 1994年6月6日、15時47分(現地時間)ごろ、コロンビア南部のカウカ県パエス村近くを震源とするマグニチュード6.4(Richter Scale)の地震が発生した。コロンビア国立観測所(Colombia National Seismological Network)によって求められた震源位置は、北緯2.9度、西経76.08度、震源深さ10kmの比較的浅い地震であった。この地震によってコロンビアのほぼ中央域が有感地域となった。各地の震度(MM震度階)は震央から40km以内で6〜7、震央距離100km付近のカリ、ポパヤン、ネイバ市で5〜6である。また、震央から約300kmに位置するボゴタ市域でも地震を感じた。著者らは6月18日より現地に入り被害調査を行ったので、ここにその被害概況を速報として報告する。被害の概要 地震当時、コロンビアは雨期で降り続く降雨によって地盤は完全に飽和状態となっていたため、被害のほとんどは斜面崩壊とその土石流による災害であった。被害が発生した地域はネバド・デル・ヴィラ火山(標高:5,750m)の南から南下するパエス川に沿った地域である。斜面崩壊と土石流による物的被害 ネバド・デル・ヴィラ火山山頂付近の万年氷が地震動で崩壊しパエス川に流下するとともに震源地域のいたるところで斜面崩壊が発生した。これらの土砂は土石流となってパエス川を流下し、この流域に点在する村々を襲い多くの家屋と人命を奪い、マグダレナ川のベタニア(Betania)にあるダムサイト付近まで達した。特に甚大は被害を被った震央付近の卜エス村ではこの土石流によって村全体が消滅した。地震動および土石流による家屋被害は、倒壊・流失家屋:620戸、被災家屋:2,400戸となっている。また、パエス川流域の道路や橋梁は斜面崩壊や土石流によっていたるところが被災し、特に、土石流によって流出した橋梁は10ヶ所にもおよんでいる。震央から約140kmに水力発電ダムがあるが、このダムに直接被害は発生していない。しかし、土石流による流木や土砂がダムサイトまで到達しているため、ダムの貯水機能障害など間接被害が発生している。今後も土砂の流下・堆積によってこの機能障害はますます増大する危険性がある。人的被害 当初の新聞報道による1,200人の死者・行方不明者の多くは高台に逃げ、最終的には死者200人、行方不明100人となっている。また、ホームレスなどの被災者は14,000人にのぼっている。