著者
小幡谷 英一
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

木材の物理・化学加工技術を組み合わせ、枯渇が危惧されるグラナディラ材の代替材を、持続可能な汎用木材や天然樹脂を用いて製造する技術を開発する。具体的には、化学処理(寸法安定化)と樹脂含浸圧密(緻密化)を複合することで、グラナディラ材に匹敵する高い力学性能と寸法安定性を達成する。グラナディラ材のストックが払底する数年以内の実用化が求められることから、第1段階として、薬品を用いた化学処理と合成樹脂を用いた樹脂含浸圧密を組み合わせ、速やかに実用化できる材料を開発し、第2段階として、天然化合物や天然樹脂を用いた、持続可能な加工法を検討する。
著者
錢谷 菜々未 小幡谷 英一 松尾 美幸
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.250-258, 2016-11-25 (Released:2016-11-29)
参考文献数
51

長期にわたる経年により,木材の音響特性や安定性が向上すると言われている。しかし最近になって,それらの変化の一部が,高湿度での吸湿履歴によって解消するような一時的な変化であることが明らかとなった。類似の一時的な現象は,木材を水分存在下で加熱した場合にも認められる。これらの一時的な変化は,木材構成分子の物理エージングに伴う一時的な細孔の閉鎖に起因すると推察される。木製の古楽器や古文化財を保存する際には,経年によって変化した物性が吸湿に伴って回復することを考慮しなければならない。また,熱処理材の実用性能を正確に評価するためには,加熱によって生じる一時的な変化を除外しなければならない。本論文では,木工芸品や木製楽器の品質に関わる木材物性の経年や熱処理に伴う可逆的および不可逆的な変化について概説する。
著者
中西 遼 小幡谷 英一
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.259-265, 2016
被引用文献数
2

<p>雅楽に用いられる篳篥のリード(蘆舌)には葦(<i>Phragmites australis</i>)が用いられる。蘆舌には淀川流域の鵜殿地区で採れる葦が最適とされているが,その理由は定かではない。本研究では,代替産地や合理的な選別法を検討する上で不可欠な良材の条件を明らかにするために,熟練者によって選別された葦材の組織構造,密度および横圧縮強度を他の葦のそれらと比較した。同一節間内で比較すると,上部ほど肉薄で密度が高かった。この違いは外皮の内側にある柔細胞層の厚さの違いによるものであった。良材と選別された葦材は,他の葦よりも肉厚でやや密度が高かったが,その差は僅少であった。一方,良材は他の葦よりも明らかに高い横圧縮強度を示した。葦の稈から蘆舌を作る際には,稈の一端をつぶさなければならない。そのため,薄くつぶしやすい節間内上部が使われ,かつ,横圧縮に対して壊れにくい葦材が選ばれるものと推察された。</p>
著者
小幡谷 英一 中西 遼
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.131-137, 2019
被引用文献数
3

<p>伝統的な篳篥の振動板 (蘆舌) に適した葦の特性を明らかにするために,蘆舌に用いられる葦(<i>Phragmites australis</i>) 材の寸法と繊維方向の振動特性を測定した。円筒状の葦材から板状の試料を作製するために,伝統的な熱圧加工である「ひしぎ」に倣い,中空の稈を分割して熱圧した。 奏者によって選別された葦材の振動特性は,選別されなかったもののそれと大差なかったが,選別された葦材の厚さと外径は狭い範囲 (それぞれ1.2~1.4mmおよび11.5~12.1mm) にあった。篳篥の蘆舌を作るためには,振動特性よりも,寸法が重要であることが示唆された。葦材の動的ヤング率と密度の関係は,維管束鞘と柔細胞からなる力学モデルで近似された。葦材の損失正接は西洋の木管楽器に用いられる葦 (<i>Arundo donax</i>) に比べて著しく低かった。これは水溶性抽出成分の含有量が少ないためと推察された。</p>
著者
永井 洋平 小野 晃明 小幡谷 英一
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.587-592, 2006-08-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
14
被引用文献数
1
著者
中西 遼 小幡谷 英一
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.259-265, 2016-11-25 (Released:2016-11-29)
参考文献数
5
被引用文献数
2

雅楽に用いられる篳篥のリード(蘆舌)には葦(Phragmites australis)が用いられる。蘆舌には淀川流域の鵜殿地区で採れる葦が最適とされているが,その理由は定かではない。本研究では,代替産地や合理的な選別法を検討する上で不可欠な良材の条件を明らかにするために,熟練者によって選別された葦材の組織構造,密度および横圧縮強度を他の葦のそれらと比較した。同一節間内で比較すると,上部ほど肉薄で密度が高かった。この違いは外皮の内側にある柔細胞層の厚さの違いによるものであった。良材と選別された葦材は,他の葦よりも肉厚でやや密度が高かったが,その差は僅少であった。一方,良材は他の葦よりも明らかに高い横圧縮強度を示した。葦の稈から蘆舌を作る際には,稈の一端をつぶさなければならない。そのため,薄くつぶしやすい節間内上部が使われ,かつ,横圧縮に対して壊れにくい葦材が選ばれるものと推察された。