著者
小林 康孝 筒井 広美 木田 裕子 大嶋 康介 富田 浩生
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.581-589, 2012-12-31 (Released:2014-01-06)
参考文献数
20

軽度外傷性脳損傷 (MTBI) は, 診断が困難な故に診断までに時間を要する。MTBI による高次脳機能障害の場合, さらにその診断は困難で時間を要し, 発症早期のリハビリテーションを受けずに病院を渡り歩く症例が多い。今回, MTBI により高次脳機能障害を来した 3 例をもとに, その問題点を検討した。症例 1 は, 診断までに時間を要し, 十分なリハビリテーションを受けられなかった。また病態に対する家人の理解が不十分であることが, 本人の負担を重くしていた。症例 2 は身体症状の訴えが多く, 十分なリハビリテーションを行えなかった。また, 自賠責保険の等級認定に関する裁判を抱えている。症例 3 は神経心理学的検査結果からの客観的所見はないが, 記憶障害等の自覚症状が強く, ドクターショッピングを続けた。3 症例とも頭部 MRI 上は明らかな異常を認めなかった。今後 MTBI による高次脳機能障害者への支援を進めるには, 病態の解明, 医療従事者の理解, 画像診断の進歩が望まれる。
著者
小林 康孝 筒井 広美 木田 裕子 大嶋 康介 富田 浩生
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 : 日本高次脳機能障害学会誌 = Higher brain function research (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.581-589, 2012-12-31

軽度外傷性脳損傷 (MTBI) は, 診断が困難な故に診断までに時間を要する。MTBI による高次脳機能障害の場合, さらにその診断は困難で時間を要し, 発症早期のリハビリテーションを受けずに病院を渡り歩く症例が多い。今回, MTBI により高次脳機能障害を来した 3 例をもとに, その問題点を検討した。症例 1 は, 診断までに時間を要し, 十分なリハビリテーションを受けられなかった。また病態に対する家人の理解が不十分であることが, 本人の負担を重くしていた。症例 2 は身体症状の訴えが多く, 十分なリハビリテーションを行えなかった。また, 自賠責保険の等級認定に関する裁判を抱えている。症例 3 は神経心理学的検査結果からの客観的所見はないが, 記憶障害等の自覚症状が強く, ドクターショッピングを続けた。3 症例とも頭部 MRI 上は明らかな異常を認めなかった。今後 MTBI による高次脳機能障害者への支援を進めるには, 病態の解明, 医療従事者の理解, 画像診断の進歩が望まれる。
著者
中島 裕也 川端 香 杉本 志保理 宮原 智子 小林 康孝
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.793-803, 2021-12-15 (Released:2021-12-15)
参考文献数
9

高次脳機能障害に対する介入として,Self-awareness(自己の気づき)に焦点をあてることは重要である.今回,高次脳機能障害者の社会復帰支援に際して,日本語版SRSIを活用した.その評価結果から,Self-awarenessの程度を把握して介入指針を決定した.Self-awarenessの程度に合わせた有効な補填手段と,実際に用いる補填手段との整合性が合うことで,各ストラテジーが定着し,社会復帰へつながる一因になると考えられた.日本語版SRSIは,Self-awarenessの程度とその変化に対する評価や,高次脳機能障害者支援における的確な介入指針を見出す一助になる可能性が示唆された.
著者
中島 裕也 酒井 涼 杉本 志保理 小林 康孝
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.665-673, 2021-10-15 (Released:2021-10-15)
参考文献数
17

高次脳機能障害復職支援事例を通して,医療機関から就労支援機関へのシームレスな連携における作業療法介入を再考し,職務選定に係る整理票(以下,整理票)を用いた職場支援の効果について検討した.支援では,休職・所得保障期間を把握し,職業準備性を高めつつ就労支援機関と連携を図った.また整理票を用いて復職時の職務内容を再設計し,配置転換での復職に至った.シームレスな連携には,復職に関する情報,職業準備性の状態,就労支援機関の機能など総合的な視点を持ち,復職プランを見立てる作業療法介入が必要と考えられた.また,整理票を用いて職務内容を再設計することが職場支援への一助になることが示唆された.
著者
川上 敬士 渡辺 容子 小林 康孝
出版者
新田塚学園福井医療短期大学
雑誌
福井医療科学雑誌 (ISSN:24240176)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.10-13, 2019

【目的】脳卒中に罹患した職業運転手の復職状況を把握すること.【対象と方法】対象は2015年から2018年までに脳卒中罹患のため当院に入院または通院し,自動車運転評価を実施した患者のうち,脳卒中罹患前に職業運転を行っていた7名.カルテからの基本情報抽出と,本人または家族へ電話にて退院後の復職状況を調査した.【結果】7名中6名が復職しており,うち2名は原職復帰し,4名は配置転換していた.産業医の関わりがあったのは1名のみであり,他6名は企業の上司による技術確認で職業運転再開の可否が決定されていた.そのため,対応には企業毎にばらつきがみられた.また,発症から1年以内に運転業務を再開した3名中2名が脳出血再発を起こしていた.【考察】現在の日本では,職業運転手の復職に際し明確な判断基準がないため企業毎に対応せざるを得ない状況である.今後,職業運転の再開に対する明確な判断基準を構築していく必要があると考える.
著者
堀 秀昭 藤本 昭 山崎 美帆 伊藤 のぞみ 大谷 浩樹 小林 康孝 林 正岳
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.E0340, 2008

【目的】今回の介護保険制度改正は、「できない」「足りない」を補うだけでなく、「できる」「している」を増やす目標志向型にシフトし、特に運動器の機能向上、栄養改善、口腔機能の向上に関しては加算が行われる。しかし、これらのプランも事業所で行われるだけでは効果はなく、在宅・地域コミュニティで継続されることが重要である。今回、高齢者スポーツ実施を通して継続的に地域で介護予防を実施するために、スポーツ高齢者の身体機能を調査し、スポーツの特殊性を検討するための基本的な調査を行った。<BR>【方法】対象は、スポーツを行っている高齢者366名(平均年齢69.8歳)とスポーツを行っていない高齢者399名(平均年齢76.5歳)とした。スポーツの種類としては、エスキーテニス、バウンドテニス、ラージボール卓球、シルバーバレーボール、グランドゴルフ、マレットゴルフ、ゲートボール、太極拳とした。身体機能測定項目は、片脚立位時間、握力、5m速度とし、各々の測定値から運動機能総合判定指標を算出した。また同時に転倒リスクに関する調査も行った。分析は、実施の有無、種目別、年齢別にて分散分析、また重回帰分析により転倒リスクとの関連を検討した。<BR>【結果】1、片脚立位時間は、太極拳(49.2秒)、シルバーバレー(46.2秒)がマレット(28.0秒)ゲートボール(32.6秒)より有意に長かった。握力は、グランドゴルフ(36.5Kg)エスキー(35.5Kg)バウンド(35.1Kg)ゲートボール(34.3 Kg)であり、太極拳(27.8 Kg)より有意に強かった。5m歩行は、バウンド(2.1秒)がゲートボール(2.8秒)より有意に早かった。運動機能総合判定指標においては、各種目に有意差は認められなかった。2、転倒リスクとの関連では片脚立位時間(p=0.011)握力(p=0.013)が有意な関連が認められた。<BR>【考察】運動機能総合判定指標では各スポーツの種目において違いが認められなかったが、バランス能力の片脚立位時間や総合筋力指標の握力で、スポーツ間に違いが認められた。これは競技特性を表しており、ラケットを使用しての競技は握力が必要であり、前後左右への動きが必要とされるラージボール卓球、シルバーバレーボール、太極拳は片脚立位時間が必要とされる。また転倒リスクと片脚立位時間や握力に関連性が見られたことで、高齢者スポーツを紹介する手段として、高齢者の握力と片脚立位時間を測定し、過去のスポーツ暦を考慮に入れながら、転倒予防を目標としたスポーツ紹介が可能と考える。また運動の精神的効果や社会的効果も報告されており、汗を流す喜びを体験させ、体力の向上は健康感を実感させ、ストレスから解放し、また地域に住む人々とともに運動やスポーツを楽しむことで友達づくりに貢献できるので、高齢者スポーツの推進を積極的に行う必要性がある。
著者
木田 裕子 小林 康孝 坪田 桂 石川 ひとみ 田中 千弘 谷川 尚子 中谷 淳美 濱崎 祥子
出版者
新田塚医療福祉センター
雑誌
新田塚医療福祉センター雑誌 (ISSN:13492519)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.23-27, 2007-07-31
被引用文献数
1

高齢者における口腔乾燥は、自浄作用の低下や粘膜の潤滑作用消失のために様々な悪影響を及ぼす。そのため口腔ケアでは、口腔内の保湿がきわめて重要となる。そこで今回、口腔ケアチームによる、口腔ケアラウンドと口腔乾燥に関する勉強会を実施し、その前後における入院患者の口腔乾燥状態を比較した。ラウンドでは乾燥患者の把握と対処方法の伝達により技術面へのフォローを行い、勉強会では口腔ケア時の対策方法、口腔乾燥用保湿・湿潤ジェルの正しい使用方法などの知識向上をはかった。その結果、舌の乾燥患者は約半数にまで減少し、それが舌苔の改善にもつながった。しかし、現在も口腔乾燥を認める患者は多く、ラウンドにおける問題点も挙がった。今後は、病棟の特色や個々の患者の態度にあわせた対処方法の検討とラウンドの実施方法の見直しが課題である。