著者
多 里英 公文 富士夫 小林 舞子 酒井 潤一
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.1-13, 2000-02-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
26
被引用文献数
6 5

青木湖周辺には,後期更新世から完新世にかけての,おもに河成や湖成の堆積物が断片的に分布しており,下位より藪沢層,崩沢層,神城砂礫層,佐野坂崩壊堆積物,青木湖成段丘堆積物,青木湖底堆積物に分けられる.指標テフラと岩相対比によって,それらの相互関係を明らかにした.佐野坂崩壊堆積物の上位には,Dpm火山灰層がのるとされていたが,それを再堆積物と判断し,周辺の地史を次のように推定した.藪沢層は,比較的広い谷の中を南がら北へ流れる蛇行河川によって形成された.その時代は5万年前以前の寒冷な時期である.約5万年前,その河川は狭い谷の中を流れる網状河川に変化した.この堆積環境の変化は,DKP火山灰層を挾む崩沢層と神城砂礫層中部が礫を主体とすることにより示されている.約3万年前に,西方の仁科山地で大規模な地すべり崩壊が起こり,佐野坂丘陵が形成された.この崩壊堆積物は川をせき止め,丘陵の南側に深い湖(青木湖)を形成した.佐野坂丘陵の北側の凹地には支谷からの堆積物供給が多く,徐々に埋積されて,現在の神城盆地を形成するようになった.
著者
遠藤 雅之 大友 篤 小林 舞子 小野寺 真哉 伊達 久
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.CbPI1253, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】慢性疼痛は,3カ月間以上の持続または再発,急性組織損傷の回復後1カ月以上の持続,あるいは,治癒しない病変の随伴がみられる疼痛である。急性疼痛から慢性疼痛に移行する上で、局所的要因から生じたものが長期間経過することにより全体的要因に変化し、痛みを複雑化させてしまう。慢性的な痛みは、身体機能を低下、また、抑うつや不安を引き起こし、睡眠を妨げ、日常活動の多くを阻害しうるといわれている。 慢性疼痛を抱える人の約18%がうつ病を合併しているとの報告もある。うつ病になることで治療に対する意欲低下などの問題が生じ、理学療法などの治療に影響を与えることがある。痛みが長期化することで抑うつ傾向となり、更なる痛みの増悪につながってしまうといった痛みの悪循環を引き起こしてしまう。 慢性疼痛による腰痛関連機能障害は心理・社会的因子が深く関与しており、治療とリハビリに対する患者の反応に早期に影響を及ぼすといわれている。また、腰痛の発症原因に関する研究では、仕事の満足度や精神的ストレスなどの要因も腰痛の発症に影響しているとの報告がある。腰部疾患として臨床上、数多くの疾患がある。その中でも腰椎椎間板ヘルニアは現代病と言われており、10代から60代に多く、勤労者が占める割合が高いとの報告がある。今回、腰椎椎間板ヘルニアにおける罹病期間とうつ症状、NRSとうつ症状の関係を検討する。【方法】当院を受診し理学療法を施行した65歳未満の腰椎椎間板ヘルニア患者154名(男性81名 女性73名) 年齢(男性43.25±11.88歳、女性44.74±11.85歳)を対象に、自己評価抑うつ性尺度(SDS:self rating-depression-scale)、罹患期間、数値的評価尺度(NRS:numerical rating scale)、仕事の有無・合併症の有無・睡眠の質を測定した。罹患期間を短期群(≦12ヶ月) 中間群(13-36ヶ月) 長期群(37ヶ月≦)の3つに分類した。また、NRSも同様に低値群(0-5) 中間群(6-7) 高値群(8-10)に分類し、罹患期間・NRSをそれぞれ独立変数、SDSを従属変数とした共分散分析を行った。共変量は性別、年齢、合併症の有無、仕事の有無、睡眠の質とした。【説明と同意】本研究をするあたり、対象者に検査者が説明し理解を得られ同意を得た。【結果】罹患期間を3群に分けたときのSDSは短期群で76名(調整後平均値37.46[95%CI:35.64-39.28])であり、中間群で40名(40.47[95%CI:38.14-42.81])、長期群で38名(43.92[95%CI:41.24-46.60]) (傾向性p値=0.000)となり、罹患期間が長くなればSDSが上昇した。また、NRSを3部位に分けたときのSDSの低値群は52名(36.67[95%CI:34.50-38.84])であり、中間群は54名(40.98[95%CI:39.10-42.86])、高値群は48名(41.98[95%CI:39.31-44.65]) (傾向性p値<0.01)となり、NRSが高値になると、SDSが上昇するとことがわかった。【考察】本研究結果より罹患期間の長期化とうつ症状に有意差がみられ、また、痛みの強さとうつ症状にも同様に有意差がみられた。罹患期間の長期化と痛みの強さがそれぞれ、うつ傾向を高める要因であることが明らかになった。このことから局所的要因から生じたものが長期間経過することにより全体的要因に変化し、痛みとうつ症状を高めるといった慢性疼痛サイクルのような痛みの悪循環が生じていることがわかった。理学療法を施行する上で慢性疼痛患者自身の心理的側面を考慮する事が大切であると思われる。痛みが長期化・痛みの強さが増悪することで心理面の問題が強まり、理学療法の介入が困難になる。機能訓練を中心とする病院が多い傾向であるが、理学療法介入時には心理的側面などに対する他覚的所見へのアプローチも必要であると考える。慢性疼痛患者はうつ傾向にあり、痛みに対する訴えが強い。そのため、理学療法施行する際には、慢性疼痛患者が抱えている心理的な問題を考慮する必要がある。【理学療法学研究としての意義】慢性疼痛では、理学療法施行するにあたり、心理的側面の考慮が必要である。
著者
マックグリービー スティーブンR. 田村 典江 ルプレヒト クリストフD. D. 太田 和彦 小林 舞 スピーゲルバーグ マキシミリアン
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.46-65, 2021-03-31 (Released:2021-03-31)
参考文献数
69

現代の環境科学が取り組むべき課題は,行動を誘因するような説得力に富む情報を提供することだけではなく,社会の想像力を刺激し,これまで目に見えていなかった未来を見るよう働きかけることにある。同時に現代の政策立案プロセスは,制度構造の限界に加えて,マルチステークホルダーのニーズや見解に包摂的に取り組むことに限界を抱えている。シナリオ手法を用いて政策の共創に取り組むことは,双方の課題に解決をもたらしうる。なぜなら,多様な主体が複数の分野とガバナンスのスケールをまたぎ,多様な学習形態を認識し,多元的な未来を批判的に探求するプロセスを促進するからである。本論文では,未来を批判的に「知り」,「遊び」,「実験する」ことを可能にするツールとして,また,政策の共創に対する関わり方(エンゲージメント)の幅を広げ,多様な社会アクターのアクセスを拡大できるツールとして,ソフトシナリオ手法の枠組みを紹介する。FEASTプロジェクトの事例研究から,ナラティブ,シリアスゲーム,インタラクティブ・アート,モデルを用いることで,どのように未来のシナリオが関わりのための超学際的空間を提供し,どのように主体,政策変容,スケールがフードポリシーに関するシナリオ共同作成プロセスの中で相互に作用しているかを示す。フードポリシーのガバナンスは関連諸政策間の縦割りにより分断されているが,各事例研究の成果から,ソフトシナリオ手法を用いることで全く異なるステークホルダー間にコンセンサスを構築し,持続可能なフードシステムの醸成に必要な批判的思考を引き出すことが可能であり,分断を克服できることが示唆された。
著者
多 里英 公文 富士夫 小林 舞子 酒井 潤一
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.1-13, 2000-02-01
参考文献数
26
被引用文献数
2 5

青木湖周辺には,後期更新世から完新世にかけての,おもに河成や湖成の堆積物が断片的に分布しており,下位より藪沢層,崩沢層,神城砂礫層,佐野坂崩壊堆積物,青木湖成段丘堆積物,青木湖底堆積物に分けられる.指標テフラと岩相対比によって,それらの相互関係を明らかにした.佐野坂崩壊堆積物の上位には,Dpm火山灰層がのるとされていたが,それを再堆積物と判断し,周辺の地史を次のように推定した.<br>藪沢層は,比較的広い谷の中を南がら北へ流れる蛇行河川によって形成された.その時代は5万年前以前の寒冷な時期である.約5万年前,その河川は狭い谷の中を流れる網状河川に変化した.この堆積環境の変化は,DKP火山灰層を挾む崩沢層と神城砂礫層中部が礫を主体とすることにより示されている.約3万年前に,西方の仁科山地で大規模な地すべり崩壊が起こり,佐野坂丘陵が形成された.この崩壊堆積物は川をせき止め,丘陵の南側に深い湖(青木湖)を形成した.佐野坂丘陵の北側の凹地には支谷からの堆積物供給が多く,徐々に埋積されて,現在の神城盆地を形成するようになった.