著者
田中省作 冨浦洋一 宮崎佳典 小林雄一郎 徳見道夫
雑誌
第75回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.1, pp.83-85, 2013-03-06

科学論文などの英語(EAP)には,EGPとよばれるような一般的な英語とは異なる表現や構成が求められる.さらに,それらは分野によっても大きく異なることが知られており,分野ごとの学術表現リストの作成はEAPにおける重要な課題の一つである.本研究では,近年,多くの研究機関で整備されつつある自組織の研究者が執筆した著作物を電子的に蓄積・公開しているデータベース・機関リポジトリに着目する.それらのデータを活用することで,当該機関が扱う研究分野に依拠したような,従来よりも粒度の細かい部局別の英語学術表現リストの効率的な作成支援を試みる.
著者
小林 雄一郎 阿部 真理子 成田 真澄
雑誌
じんもんこん2013論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.4, pp.89-96, 2013-12-05

本研究の目的は,英語学習者のライティングにおける書き手の習熟度と母語が第2 言語ライティングに与える影響を調査することである。具体的には,東アジア圏(香港,韓国,台湾,日本)の大学生によって書かれた英作文コーパスにおける58 種類の言語項目(語彙,品詞,統語,談話など)を分析対象とした。その結果,香港人学習者と日本人学習者に関しては,習熟度による影響よりも母語による影響の方が大きいことが示唆された。また,韓国人学習者と台湾人学習者に関しては,母語による影響よりも習熟度による影響の方が大きいことが分かった。
著者
小林 雄一郎
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

最終年度では、これまでの研究を総括し、今後の研究方向に繋がる分析を行った。まず、異なるトピックで書かれたライティングを対象として、語彙、品詞、統語、談話などに関する言語使用の差を調査した。そして、t検定、決定木、ランダムフォレストなどの結果から、異なるトピックで書かれたライティングでは、言語使用が大きく異なることが明らかにされた。このことは、習熟度の自動判定をする場合に、タスクの影響の有無に注意しなければならないということを示している。また、これまでは「学習者が何をできるか」という点に注目してきたが、今年度はそれに加えて、「学習者が何をできないか」というエラーの情報を分析に加えた。その結果、冠詞、前置詞、動詞の時制などに関するエラーが習熟度と高い相関関係にあることが明らかにされた。
著者
小林 雄一郎
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

近年,英語教育の現場では実践的コミュニケーション能力の育成を図ることが求められており,中学校や高校の学習指導要領にも同様の記述が見られる。しかし,円滑で効果的なコミュニケーションをするためには,「何を」伝えるかよりも,「いかに」伝えるかが必要不可欠となる。具体的に効果的なコミュニケーションを達成する1つの方法は,対比,理由,結果,列挙,例示といった接続語や(メタ)談話標識によって,談話のユニット間の論理関係や意味関係を表すことである。従って,実践的コミュニケーション能力の育成を図る上で,学習者による(メタ)談話標識の使用傾向を調査し,彼らの談話構造における特徴や誤用を究明することは極めて重要である。しかしながら,これまでの研究では,手作業による談話分析のコストが高いこともあって,限られた数の学習者データしか扱うことができず,そこから得られた結果がどこまで普遍的なものかを検証することが難しかった。さらに,大規模な調査を行う場合は,多くの分析者が必要となり,どうしても結果が個々の分析者による主観に影響されてしまうという欠点があった。本研究では,日本人中学生,高校生,大学生の英作文を集めた学習者コーパスをテキストマイニングの手法を用いて客観的に解析し,そこから得られた結果を様々な角度から比較検討した。まず,相関分析,対応分析,クラスター分析などを用いて,分析データの全体像を把握し,データの構造を視覚的に提示した。また,メタ談話標識の意味カテゴリー別に詳細な量的分析と質的分析を行い,母語話者と日本人学習者の英作文を識別する特徴を抽出した。そして,日本語を含む17種類の異なる言語を背景とする書き手の英作文データを統計的に比較した。さらに,日本の中学校・高校の英語検定教科書におけるメタ談話標識の提示のされ方を調査し,日本人学習者によるメタ談話標識の使用傾向との関係を明らかにした。
著者
小林 雄一郎
出版者
関東甲信越英語教育学会
雑誌
関東甲信越英語教育学会研究紀要 (ISSN:09112502)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.11-21, 2009

The purpose of this paper is a corpus-based error analysis of a subordinator "because," using two kinds of electronic learner corpora: The Japanese EFL Learner (JEFLL) Corpus and the Japanese component of the International Corpus of Learner English (ICLE-JP). The former is a collection of argumentative and narrative essays by Japanese junior high school and senior high school students, and the latter is a collection of argumentative essays by Japanese college students. The analyses were made exploring the following three questions: (1) How is "because" distributed according to academic years? (2) How are sentence-fragments with "because" distributed according to academic years? (3) What are causes of learners' misuse of "because"? The following results were obtained: (1) Frequency of "because" was in inverse proportion to academic years. (2) Most of "because" in the sentence-initial position brought sentence-fragments which lack its principal clauses. (3) The misuse of "because" may be caused by L1 transfer, the confusion of spoken and written English, and the influence of junior high school textbooks.
著者
大井 恭子 田中 真理 成田 真澄 阿部 真理子 保田 幸子 板津 木綿子 ホーン ベバリー 小林 雄一郎
出版者
清泉女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は日本、韓国、台湾、香港という東アジアに位置する4か国がする英語ライティング教育に関して、アンケート調査によって実態を浮き彫りにし、そして互いが一堂に会することで実態を比較しあい、問題点などを共有し、今後の展望などに関して国際シンポジウムとして意見交換ができたことが一番の成果と言える。さらに、学習者コーパスを精査することにより、4か国・地域の学生の書く英語の諸相が明らかにされた。最終成果物として『EFL Writing in East Asia: Practice, Perception and Perspectives』を刊行し、多くの方と共有できたことで、この分野の進展につながった。