著者
中谷 誠 小柳 敦史 荻原 英雄 渡辺 泰
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.83-89, 1988-03-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
12
被引用文献数
1

サツマイモ苗の5-10日間の取り置きが活着, 塊根形成, 収量に及ぼす影響をコガネセンガンと高系14号を用い, ポリエチレンフィルムマルチ栽培で1985-86年の2か年3作期にわたり検討した. 取り置きは約14℃, 相対湿度約80%, 弱光の条件下で行い, 以下の結果を得た. 挿苗直後, 対照区では葉身や茎頂が地表まで垂れ下がっているものが多かったのに対し, 取り置き区では茎や葉柄が立っているものが多く, 挿苗1, 2週間後の展開葉数や蒸散速度はいずれの作期, 品種でも取り置きにより増加した. 塊根形成期ではいずれの作期でも取り置きにより塊根数や塊根乾物重は増加した. また全乾物重や葉面積も増える傾向を示した. 収穫期の上いも収量は取り置きしたものの方が高い値を示した. 1985年には有意な差がなかったが, 1986年には有意な差があり, 上いも数, 上いも1個重とも増加した. 全乾物重や収穫指数も取り置きしたものの方に高い傾向が見られた. 以上から, 5-10日間の苗の取り置きは活着や塊根形成を促す効果を持つことが明らかになった. また, これらの点が全乾物重や収穫指数の向上につながり, 塊根収量の増大をもたらす可能性が強いことも判明した. さらに, 必ずしも増収に結びつかない場合にもサツマイモ栽培の安定性を高める効果が期待できると思われた.
著者
小柳 敦史
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.91, no.3, pp.1-24, 2017

<p>O・シュペングラーの『西洋の没落』は第一次世界大戦後のベストセラーとなり、当時のプロテスタント神学も対峙せざるを得ないものであった。本稿では、『西洋の没落』が当時のプロテスタント神学にとってどのような事件であったのかを明らかにしたい。まず、雑誌『キリスト教世界』でなされた議論をたどり、『西洋の没落』に対する神学者たちの反応の見取り図を手に入れる。その上で、一九二〇年代のW・エーレルト、E・ヒルシュ、K・ハイムの著作における「運命(Schicksal)」の概念について検討する。「運命」の概念は『西洋の没落』の歴史理解を支える概念であるのみならず、同時代の神学における論争概念となっていたのである。最後に、プロテスタント神学の外からの視点としてユダヤ系の言語学者H・ヤーコプゾーンの問題提起をもとに、「運命」についての当時の議論が帯びていた問題を検討する。</p>
著者
三浦 重典 小林 浩幸 小柳 敦史
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.410-416, 2005-12-05
被引用文献数
8 7

東北地域において中耕作業の省略と除草剤使用量の低減を目指したダイズの栽培技術を開発するために, 秋播き性の高いオオムギを利用したリビングマルチ栽培試験を行った.試験は, 2002年及び2003年の2年間実施し, リビングマルチ, 除草剤施用, 中耕の有無を組み合わせた処理区について, 雑草の生育量とダイズの生育・収量を調べた.2002年及び2003年ともに, リビングマルチ栽培では, 5月下旬にダイズと同時に条播したオオムギ(品種: べんけいむぎ)は, ダイズ(品種: タチナガハ)より3日早く出芽し, 6月下旬頃まではダイズの草高を上回っていたが, 7月上旬頃から葉が黄化し始めて8月上旬にはほぼ枯死した.両年ともリビングマルチ栽培では, 中耕作業や除草剤土壌処理を省略しても高い雑草防除効果が認められた.また, リビングマルチと除草剤を組み合わせた区では, リビングマルチのみで除草剤を使わなかった区より雑草乾物重が少なく, 両者の組み合わせにより雑草抑制効果は高まった.リビングマルチ栽培におけるダイズの収穫時期の乾物重は, 2002年は慣行栽培とほぼ同じで2003年は慣行栽培より劣った.しかし, 両年とも稔実莢数と百粒重が慣行栽培と同程度であったため, ダイズの子実収量はリビングマルチ栽培と慣行栽培との間で有意差が認められなかった.東北地域では, オオムギをリビングマルチとして利用することで, 倒伏の危険性は若干高まるものの, ダイズ作における中耕や除草剤土壌処理が省略可能であると判断された.