著者
山田 成子 渡辺 泰夫 平野 優子 内藤 儁
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.401-406, 1973-03-20 (Released:2008-12-16)
参考文献数
14

嗅覚の生理に関しては不明の処が少なくない,嗅覚は非常に鋭敏な感覚であるが,万余の匂いが,どのようにして末梢のreceptorに受容されるのか,末梢のreceptorの受容機構はどの様になつているか,また末梢で受容された刺激は,中枢へどの様に伝達されるか,など未だ未解決の問題が多い.嗅覚の検査に用いられるべき嗅素として,最も適当な匂いは何であるかという基本的な問題も解決されていない.このような現状において文部省科学研究班,"嗅覚測定の基準設定"が結成された.私どもはこの班の一員として次の10種の嗅素の各種濃度(10-1より10倍稀釈で10-14迄)で日本人の平均閾値の測定を行なつている.使用ている嗅素は,バラ臭,糞臭,腐敗臭,樟脳臭,酸臭,麝香,フェノール臭,焦臭,果実臭,にんにく臭,である.撰択的無嗅覚症(selective anosmia or specific anosmia Amoore)という病名はAmooreにより使用され,ある種の匂いにのみ特異的に閾値の高い場合に用いられる.現在まで238名の測定対象に8名の撰択的無嗅覚症例を認めた.このような8症例の中,2例は嗅覚障害を自覚していない.男女性別に差はなく 男女共各4名である.撰択的無嗅覚症がみとめられた嗅素はフェノール臭,麝香臭,パラ臭,糞臭である.撰択的無嗅覚症の機構は不明であるが,恐らく嗅覚受容機構における部分的障害と考えられる,Amooreによれば,青酸,メルカプタン,イソ酪酸に嗅盲が認められるが,嗅盲は遺伝的因子が強いと考えられる,一方,撰択的無嗅覚症は後天的な受容機構の受傷性の差によつてもおこることが考えられる.撰択的無嗅覚症に認められる嗅素は嗅覚機能検査に必要な基本的嗅素の1つであると思われる.
著者
渡辺 泰宏 野宮 誠 佐藤 伸江 居野家 浩
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.311-315, 2004-06-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
6

2003年に弊社が発表した「Konica Color CENTURIA PRO 400」,「Konica Color CENTURIA PORTRAIT 400」はポートレート市場の動向に応えた高感度・高画質なプロ用カラーネガフィルムである.「ポートレート撮影に適したきめ細やかな肌の描写性」をコンセプトとして開発し, 高感度フィルムでありながら従来のフィルムから肌色再現性, 肌の調子再現性, シャドー部の粒状性を大幅に向上させており, 様々な撮影条件下で撮影されるロケーションフォトに最適な設計を行っている. 本報告では「Konica Color CENTURIA PRO 400」,「Konica Color CENTURIA PORTRAIT 400」の商品コンセプト, 設計の考え方, 及び達成技術に関して紹介する.
著者
渡辺 泰彦 公文 啓二 矢作 直樹 春名 優樹 林 英明 松井 淳〓
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.181-187, 1997-05-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
11

成人心臓血管術後の患者22名を対象にNO吸入療法を施行した.適応疾患は低酸素血症型呼吸不全,肺高血圧症,右心不全であった.低酸素血症型呼吸不全の患者において10ppm以下の濃度で酸素化能は著明に改善した.肺高血圧症例では有意の肺動脈圧の低下がみられたが,反応の程度は一様でなく,肺動脈組織の器質的変化の程度によると推察された.右心不全症例は左心補助心臓が装着され,左心拍出量に追従できない右心に対し右室の後負荷軽減目的に,また周術期に右室梗塞症を起こした症例に対しNO吸入療法を行なったが,混合静脈血酸素飽和度は有意に上昇し,右心房圧および肺動脈圧は有意に低下した.以上より心臓血管術後の上記病態に対するNO吸入療法は有用と思われる.
著者
森 孝夫 渡辺 泰三 土佐 哲也 千畑 一郎 岩野 君夫 布川 弥太郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.111-114, 1981-02-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
9
被引用文献数
3 4

タンニンをリガンドとする吸着体, すなわち, 固定化タンニンについてその重金属イオンに対する吸着特性および醸造用水の除鉄を検討し, 次のことを明らかにした。固定化タンニンは鉄イオン, 銅イオン, 鉛イオンなどをよく吸着した。鉄イオンについては, 第一鉄イオン, 第二鉄イオン, キレートした鉄イオン, 有機酸存在下の鉄イオンはよく吸着したが, フェリクリシンは余り吸着しなかった。固定化タンニンの鉄イオン吸着容量は用いた鉄イオンの種類, 濃度, pHによって変化した。固定化タンニンに吸着した鉄イオンは0.5N塩酸によって溶出され, 再生された固定化タンニンは安定に反復使用できた。鉄イオンを10~40ppb含む某酒造場の用水の場合, 固定化タンニン・カラムの容積の8,500倍量の用水を流しても流出液中の鉄イオンは10ppb以下にとどまった。
著者
中谷 誠 小柳 敦史 荻原 英雄 渡辺 泰
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.83-89, 1988-03-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
12
被引用文献数
1

サツマイモ苗の5-10日間の取り置きが活着, 塊根形成, 収量に及ぼす影響をコガネセンガンと高系14号を用い, ポリエチレンフィルムマルチ栽培で1985-86年の2か年3作期にわたり検討した. 取り置きは約14℃, 相対湿度約80%, 弱光の条件下で行い, 以下の結果を得た. 挿苗直後, 対照区では葉身や茎頂が地表まで垂れ下がっているものが多かったのに対し, 取り置き区では茎や葉柄が立っているものが多く, 挿苗1, 2週間後の展開葉数や蒸散速度はいずれの作期, 品種でも取り置きにより増加した. 塊根形成期ではいずれの作期でも取り置きにより塊根数や塊根乾物重は増加した. また全乾物重や葉面積も増える傾向を示した. 収穫期の上いも収量は取り置きしたものの方が高い値を示した. 1985年には有意な差がなかったが, 1986年には有意な差があり, 上いも数, 上いも1個重とも増加した. 全乾物重や収穫指数も取り置きしたものの方に高い傾向が見られた. 以上から, 5-10日間の苗の取り置きは活着や塊根形成を促す効果を持つことが明らかになった. また, これらの点が全乾物重や収穫指数の向上につながり, 塊根収量の増大をもたらす可能性が強いことも判明した. さらに, 必ずしも増収に結びつかない場合にもサツマイモ栽培の安定性を高める効果が期待できると思われた.
著者
Paul Pfleiderer Terry Marsh 渡辺 泰明
出版者
日本ファイナンス学会 MPTフォーラム
雑誌
現代ファイナンス (ISSN:24334464)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.41-59, 2012-03-31 (Released:2018-12-07)
参考文献数
5

本稿では,金融危機の下でリスクとリスク回避姿勢の双方が顕著に高まった状況において需要と供給という基本的な経済理論がどのように作用するかを検証した.我々はこれを行うにあたり,非常に簡易的なモデルを構築し状況の変化に応じて投資家は,投資家間でどのように取引をすべきかをそのモデルにおいて検討した.第2節では,本稿の「基本シナリオ」を説明することとする.状況が変化する中でリスクプレミアムがどのように決定されるかを説明し,また投資家が危機対応の為の調整を実行するときに生じる取引を検証する.第3節では,本稿の基本シナリオにかかる種々のバリエーションを検討し,そうした異なるシナリオにおいても,基本シナリオから導き出した全般的な結論が成立することを示す.そして第4節では検証結果の要約を行い,全体のまとめを提示する.
著者
渡辺 泰弘
出版者
日本地域学会
雑誌
地域学研究 (ISSN:02876256)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.329-346, 2022 (Released:2023-03-10)
参考文献数
59

Hiroshima is one city in Japan with a high level of sport spectatorship. When cities with sport-related resources recognize the importance of building place attachment among local residents through sport teams as a community bonding resource, activities to attract more event attendees or local residents using their professional sport teams activities can be encouraged. In addition, psychologically, local residents develop a strong bond with local sport teams based on their accumulated experiences. Generally speaking, some findings confirm that team image is a critical factor leading to place attachment. However, studies that verify these findings are lacking. This study was conducted in two major professional sport settings:professional baseball and professional basketball. First, data was collected from spectators attending a home game of the professional basketball team, the Hiroshima Dragonflies. From the 330 questionnaires distributed, 292 usable questionnaires were collected, data for 248 respondents excluding 44 out-of-prefecture residents were used. For the baseball sample, data was collected from spectators attending a professional baseball game at Mazda Zoom-Zoom Stadium. Questionnaires were distributed to individuals in the stadium at the end of the game. From the 1,000 questionnaires distributed, 241 usable questionnaires were collected, data for 188 respondents excluding 53 out-of-prefecture residents were used. Findings revealed that both teams showed place attachment affects the quality of team image. For the Dragonflies, high and low team identification were shown to affect place attachment. For the Carp, the interactions between team image and team identification significantly affected place attachment, with lower team identification increasing place attachment more than a positive team image. The results suggest that improving team image may increase place attachment among spectators with low team identification. From the standpoint of a regional sports team that claims to be community-based, there is a need for two-way direct and indirect exchanges that deepen ties through social contribution activities and other initiatives to connect with the community, as well as proactive acceptance of support and assistance activities from local residents. In conclusion, (1) team image is related to place attachment, and (2) team identification may play a role as a moderating variable for enhancing place attachment due to unique team attributes.JEL Classifications:L83, Z29, M31, R11, D91
著者
小島 弘昭 荒谷 邦雄 吉富 博之 野村 周平 渡辺 泰明
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

伊豆諸島の甲虫相解明のため,研究の遅れていたゾウムシ上科,ハネカクシ科,水生甲虫類を対象に調査を実施し,固有3新種を発見した.また,遺存固有と考えられていたクワガタムシ科2種,ゾウムシ科1種について分子系統解析を行い,前2者は極最近,周辺地域に分布する近縁種から分化した種であること,ゾウムシについては人為的移入の可能性が示唆された.島としての成立年代が新しい伊豆諸島は,生息する固有種も起源的に新しい可能性が高いことが明らかとなった.さらに,甲虫相から見た伊豆諸島のホットスポットとして御蔵島がその候補となり,北伊豆諸島の利島もこれまで考えられていた以上に重要な地域であることが示唆された.
著者
鈴木 啓助 渡辺 泰徳
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.295-301, 1996-07-15 (Released:2010-02-05)
参考文献数
9

林冠環境の異なる3地点(コナラ林,アカマツ林,林外)において,積雪中の化学物質濃度および生物量の変化を調べた.積雪中の陰イオン濃度は,アカマツ林内でコナラ林内および林外よりも高くなっている.各地点とも積雪中のCl-,NO3-,SO42-濃度は,融雪の進行によって低下する.しかしながら,積雪中のPO43-濃度は,いずれの地点でも融雪最盛期に増加する.その濃度が,アカマツ林内とコナラ林内で林外よりも高いことから,積雪中のPO43-は有機物の二次生成物と考えられる.顕微鏡観察によると,林内の積雪中には細菌・カビ・藻類の存在が認められるが,積雪初期には低密度で,融雪最盛期に増加する.積雪中のクロロフィルaとフェオフィチンaの濃度は,アカマツ林内においてコナラ林,林外よりも高い.また,アカマツ林内およびコナラ林内のクロロフィルa濃度は,融雪最盛期に増加し,藻類が増加することを示している.積雪中のバクテリア数は,アカマツ林内>コナラ林内>林外の順であり,融雪最盛期に多くなる.積雪融解試料による培養実験の結果,アカマツ林内の試料を明所に置いた場合のみ,NO3-濃度が減少し,25日目以降NO3-が検出されない.積雪融解試料に緑藻を添加した培養実験では,アカマツ林内の試料で,2週間でクロロフィルaとして14.7μg/lの緑藻が増加した.この結果から窒素の消費量を見積もると,藻類の増加によって積雪中からNとして220μg/lが消費されたことになる.
著者
北山 理恵子 林 敏雄 南新 三郎 渡辺 泰雄 成田 弘和
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.643-648, 1995-05-25 (Released:2013-05-17)
参考文献数
16

T-3761の血清蛋白結合に関する検討を行い, 以下の結果を得た。1. 各種動物およびヒト血清に対する結合率は16.9~27.7%であり, CiprofloxacinやOfloxacin よりもわずかに高値を示した。2. 薬剤濃度0.25~20μg/mlにおける, ヒト血清蛋白結合率は19.1~23.8%であった。3. ヒト血清蛋白結合率は, 血清蛋白濃度の減少に伴って低下した。4. T-3761 (2μg/ml) のヒト血清との結合率はpHの影響を受け, pH7.0, 7.4および8.0において, 各々12.4, 21.3および32.1%であった。5. ヒト血清蛋白との結合は可逆的であった。6. ウサギにT-3761 20mg/kgを経口投与した時のin vivo結合率は26.1~33.2%であり, in vitro結合率と類似していた。T-3761は富山化学工業 (株) 綜合研究所において開発されたニューキノロン系合成抗菌薬である。本剤はグラム陽性菌ならびにグラム陰性菌に対して広範囲な抗菌スペクトルを有し1), 経口吸収性が優れ, 血中濃度のピーク値が高く, 尿中に速やかに排泄されることを特徴としている2)。今回, T-3761の各種動物およびヒト血清に対する結合率, 血清蛋白結合に及ぼす薬剤濃度, 蛋白濃度ならびにpHの影響, 血清蛋白結合の可逆性を検討した。またウサギにおけるin vivo結合率についても検討したので, その成績を報告する。
著者
渡辺 泰夫 石田 清道 佐野 政明
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.44, no.511, pp.495-497, 1996-08-05 (Released:2010-12-16)
参考文献数
5

The normal emittance of the Black High Emittance (BHE) coating for refractory tiles has been measured for the surface temperatures of 473 to 1473K. The changes between virgin and exposed tiles were evaluated, and no distinct difference was found. Effects of thin metallic and ceramic coatings on BHE were also discussed.
著者
渡辺 泰 広川 文彦
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.1969, no.9, pp.36-41, 1969-12-25 (Released:2009-12-17)
参考文献数
8

北海道の畑作雑草10種を対象に, 種子の休眠の程度とこれらの越冬条件に対する反応を調査した。(1) イヌタデ, シロザ, オオイヌタデ, タニソバは休眠が深く, 半年地中越冬すると覚醒したが, 5℃室内越冬によっても後の2種は相当覚めた。アキノエノコログサ, ツユクサ, ヒメイヌビエも休眠が深いが, これらの種子は5℃室内越冬によって休眠が覚めた。ナギナタコウジュは採種直後の種子で休眠を示した。地中越冬よりも5℃室内越冬の発芽率が高かった。ハコベは8~9月採種種子は休眠が浅く, 地中越冬で二次休眠に入り, 翌春変温下で覚醒した。11月採種種子は休眠がかなり深く, 低温湿潤処理しても覚めなかった。アキメヒシバは休眠が最も深く, 各種の処理でも覚めなかった。(2) 冬期間戸外の大気中で後熟したものはアキノエノコログサ, オオイヌタデ, ナギナタコウジュ, ヒメイヌビエであった。(3) 0~1℃の湿潤濾紙上で休眠が覚めた種類とその所要期間は, オオイヌタデとシロザが1か月, イヌタデが2か月, ナギナタコウジュが4か月, タニソバが6か月であった。その他の種類は6か月の処理期間中全く休眠が覚めなかった。
著者
永井 章夫 長沢 峰子 河村 泰仁 児玉 卓也 前花 淳子 南 新三郎 渡辺 泰雄 成田 弘和 清水 喜八郎
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
日本化学療法学会雑誌 (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.200-206, 1995-02-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
15

Vancomycin (VCM) とarbekacin (ABK) 誘発性の腎毒性に対するpiperacillin (PIPC) の軽減作用についてラットを用いて検討した。ラットにVCM 160mg/kg (iv), ABK 16mg/kg (im) をそれぞれ4日間連続投与して腎毒性を誘発させた。VCMの160mg/kg単独群では腎尿細管腔の拡張などの軽度腎障害がみられた。ABKの16mg/kg単独群でも尿細管上皮の硝子滴変性が軽度にみられた。これらの変化はPIPCの320mg/kg投与により軽減された。また, VCMにABKを併用するとBUN, 血中クレアチニンの上昇, 尿中NAG, 尿中蛋白量, 尿中β2-マイクログロブリンの増加, 腎重量の増加がみられ, 組織学的には尿細管上皮の壊死などの腎障害像が観察され, 各単独群に比べ腎毒性は著しく増強された。これらの変化に対してもPIPCは軽減作用を示した。