著者
市野 順子 八木 佳子 西野 哲生 小澤 照
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.1171-1183, 2019-04-15

本稿では,グループディスカッションを支援するために提示するフィードバックの,モダリティと提示対象者の要因が,グループメンバのコンピュータに対する反応に与える影響を検討する.我々は,企業の実際のブレインストーミングをフィールドとした実験を行い,4つのフィードバック条件――3つは触覚モダリティ(椅子の振動)を使用し,1つは視覚モダリティ(スポットライトの点滅)――を比較した.触覚モダリティを使用した3つのフィードバック条件は,フィードバックの提示対象者が異なる:(1) 参加が期待されるメンバ(潜在的話者)にのみ提示,(2) 現在発言中のメンバ(現行話者)にのみ提示,(3) 全メンバに提示.実験の結果,モダリティの要因に関しては,触覚は視覚よりも,議論への集中を妨げない程度ではあるが議論からメンバの注意を逸らし,フィードバック提示直後のターンテイキングを促した.提示対象者の要因に関しては,全メンバあるいは現行話者に提示する方が,潜在的話者に提示するよりも,ターンテイキングを促した.その一方で,潜在的話者に提示する方が,現行話者に提示するよりも,メンバは,システムの意図がわかりやすく,快適だと感じた.
著者
斎藤 徹 石井 芝恵 小池 早苗 小澤 照史 川田 陽子
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.274-281, 2014-12-31 (Released:2020-04-30)
参考文献数
46

【目的】統合失調症の嚥下障害者における誤嚥発症の要因を解析することを目的とした.【対象と方法】対象症例は2009 年11 月から2014 年1 月の間に当院歯科口腔外科を受診した統合失調症の嚥下障害者225 例とし,後方視的研究を行った.対象症例は男性122 例,女性103 例であり,平均年齢は65.5 歳(標準偏差12.5 歳)であった.これらの症例における水の誤嚥の有無を嚥下内視鏡検査(Videoendoscopic examination of swallowing,VE)により評価した.VE 施行時に投与されていた種々の抗精神病薬の投与量を,クロルプロマジン(CP)の力価に換算したCP換算量の平均は501 mg /日(標準偏差584 mg)であった.本研究では,水の誤嚥の有無と,年齢,性別,日常生活の自立の可否,屋内生活の自立の可否,座位の可否,肥満係数(BMI),CP 換算量,口腔顔面ジスキネジア発症の有無および咽頭反射の有無との関連を,単変量解析およびロジスティック回帰分析(変数減少法)を用いた多変量解析にて検索した.【結果】単変量解析では,水の誤嚥と,BMI(p=0.022),日常生活の自立の可否(p=0.036)および咽頭反射の有無(p=0.004)との間に有意な関連を認めた.しかし,性別,年齢,屋内生活の自立の可否,座位の可否および口腔顔面ジスキネジア発症の有無と,水の誤嚥との間には有意な関連は認められなかった.上記の9 要因と水の誤嚥との関連を,ロジスティック回帰分析で解析した結果,誤嚥の有無は咽頭反射の有無と有意(p=0.015)に関連していたが,他の8 要因とは有意な関連は認められなかった.【結論】ロジスティック回帰分析により,統合失調症の嚥下障害者では,咽頭反射の有無が水の誤嚥の有無と有意に関連することが認められた.
著者
斎藤 徹 小池 早苗 小澤 照史 臼井 洋介
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.201-208, 2013-12-31 (Released:2020-05-28)
参考文献数
43

【目的】統合失調症の嚥下障害者における嚥下機能低下の要因を,重回帰分析を用いて解明することを目的とした.【対象と方法】2008 年4 月から2012 年11 月の間に当院歯科口腔外科を受診した統合失調症の嚥下障害者272 例を対象とし,後方視的研究を行った.男性:147 例,女性:125 例で,平均年齢は68.6 歳(標準偏差:12.7 歳)であった.歯科口腔外科初診時(嚥下機能評価時)に投与されていた種々の抗精神病薬の投与量を,chlorpromazine(CP)の力価に換算したCP換算量の平均は454 mg/日(標準偏差:603 mg)であった.嚥下機能は,Functional Oral Intake Scale(FOIS)に基づき評価した.【結果】年齢,日常生活の自立の可否,屋内生活の自立の可否,座位の可否,CP 換算量および口腔顔面dyskinesia 発症の有無を説明変数,FOIS を目的変数として,重回帰分析を行った.その結果,日常生活の自立の可否(p<0.05),屋内生活の自立の可否(p<0.0001)および座位の可否(p<0.01)とFOIS との間に,有意な相関が認められた.しかし,年齢(p=0.990),嚥下機能評価時のCP 換算量(p=0.092)および口腔顔面dyskinesia 発症の有無(p=0.056)とFOIS との間には,有意な関連は認められなかった.【結論】統合失調症の嚥下障害者の嚥下機能は日常生活自立度(ADL)と有意に相関することが認められたが,年齢,嚥下機能評価時の抗精神病薬の投与量および口腔顔面dyskinesia 発症の有無との間には,有意な関連は認められなかった.
著者
斎藤 徹 小池 早苗 小澤 照史 臼井 洋介
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.52-59, 2013-04-30 (Released:2020-04-30)
参考文献数
38

【目的】統合失調症の嚥下障害者における誤嚥性肺炎の発症と関連する因子を解析することを目的とした.【対象】2008 年4 月から2012 年3 月の間に,当院歯科口腔外科を受診した統合失調症の嚥下障害者232 例を対象とし,誤嚥性肺炎発症の要因を後方視的に検討した.男性:126 例,女性:106 例であり,平均年齢は70.1 歳(標準偏差:11.8 歳)であった.歯科口腔外科初診時に投与されていた種々の抗精神病薬の投与量を,chlorpromazine(CP)の力価に換算したCP 換算量の平均は458 mg/ 日(標準偏差:633 mg)であった.日常生活自立度(ADL)の評価は,「障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準」に準じた.【結果】歯科口腔外科初診時より過去3 カ月以内に誤嚥性肺炎を発症した症例は80 例(34.5%)であり,他の152症例(65.5%)は同期間に誤嚥性肺炎の発症はなかった.誤嚥性肺炎の発症症例では,非発症症例と比較してFunctional Oral Intake Scale(FOIS)(p=1.6×10-12),血清albumin(ALB)(p=9.0×10-6)およびADL(p=5.7×10-7)が有意に低下していたが,年齢(p=0.111)および肥満係数(BMI)(p=0.509)に有意差は認められなかった.また,誤嚥性肺炎の発症および非発症症例の間で,男女の比率(p=0.069)および口腔顔面dyskinesia の発症率(p=0.679)に有意差は認められなかった.CP 換算量は,誤嚥性肺炎の発症症例では非発症症例と比較して有意(p=0.001)に低かった.【結論】統合失調症の嚥下障害者では,嚥下機能の低下のみならずADL や栄養状態の低下が誤嚥性肺炎の発症と密接に関連していた.