著者
小杉 素子 土屋 智子 谷口 武俊
出版者
The Society for Risk Analysis, Japan
雑誌
日本リスク研究学会誌 (ISSN:09155465)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.115-123, 2011 (Released:2012-01-22)
参考文献数
19
被引用文献数
1

It is important to infer and respect others' values and attitudes for fruitful communication. This paper examines how experts and lay people infer others' risk perception. According to the 2009 questionnaire survey for academic professionals and the general public, professionals estimate that there is a larger difference in risk perception of the technology that they study between themselves and lay people than the general public does. The professionals who hold this feeling perceive the risk of technology as being lower and estimate lay people' s risk perception to be higher. They also focus on positive more than negative aspects of the technology, evaluate its benefits, and tend to presume that negative media coverage greatly affects public perception.
著者
谷口 武士
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.311-318, 2011-11-30
被引用文献数
3

森林生態系における植物の種多様性の維持には、非生物的要因(光環境や土壌環境)が大きく影響しており、この点を中心にそのメカニズムが説明されてきた。しかしながら、近年、植物の病原菌や共生菌がこの森林の植物群集に関与することが示されてきている。菌根菌は、植物と相利共生する菌の一つであり、菌根共生によって宿主植物の養水分吸収や耐病性、各ストレス(乾燥、塩類、重金属など)耐性が向上する。このような菌根菌の効果は宿主植物種によって異なるため、菌根菌が宿主植物の種間競争の結果を変え、植物群集に影響を与えうる。また、野外では同一クローンの菌根菌と複数種の植物が菌根を形成し、菌根菌の菌糸によって植物根が連結された菌糸ネットワークが存在する。菌糸ネットワークは、実生の定着に影響し、森林における植物群集に影響を与えている可能性がある。これらの影響を通して、菌根菌が植物種間の競争を緩和する場合には多種共存が促進され、菌根菌が優位種の競争力を高める場合には種多様性が減少すると考えられる。しかし、菌根菌が森林の種多様性に与える影響に関する研究は実生を対象としたものが大部分であり、草本と比べて寿命が長い森林生態系では、実生更新時の菌根菌の影響が成木の植生にどの程度寄与するのかについては不明である。従って、ミクロコズム実験と野外調査の結果を組み合わせて考察するなどして、今後、この点を明らかにしていく必要がある。
著者
班目 春樹 木村 浩 古田 一雄 田邉 朋行 長野 浩司 鈴木 達治郎 谷口 武俊 中村 進 高嶋 隆太 稲村 智昌 西脇 由弘
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

わが国における原子力開発利用の歴史はおよそ半世紀になる。この間、わが国における原子力規制はその規制構造を殆ど変えることなく今日にいたっている。このため、現在の原子力規制は合理性・実効性を欠き、信頼醸成を阻害する原子力システムをもたらしている。そこで、本研究では、原子力安全規制に関する知的インフラに関連する論点に焦点をあてて分析を実施し、原子力規制に関する適切なガバナンスを実現するためのフィールドの創出と論点の整理・政策提言を行った。
著者
鈴木 史明 谷口 武 庄野 明子 富山 俊彦 小野 雅昭 谷口 定之
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.71-76, 2007
被引用文献数
2

近年,男性の喫煙率は減少傾向にあるが,女性の喫煙率は増加傾向にある.妊婦の喫煙率は,約20%である.妊婦の喫煙は,胎児発育遅延,常位胎盤早期剥離等の原因になる.従来の禁煙指導は,成果が十分でない.そこで当院では,多くの喫煙者が禁煙できるように,外来診察中に短時間(約2分30秒間)の禁煙指導(「ライト」)を開始した.「ライト」と禁煙外来の禁煙成功率を比較し,効果的な禁煙指導法を考察した.妊婦の場合,禁煙成功率は「ライト」で27.8%,禁煙外来で88.9%であった.妊婦1人の禁煙に要する指導時間は,「ライト」で9分,禁煙外来で1時間41分であった.禁煙指導1時間当たりの禁煙成功妊婦数は,「ライト」で6.7人,禁煙外来で0.6人である.このように短時間の禁煙指導である「ライト」でも,禁煙指導の効果は期待できる.「ライト」は,多忙な日常診療のなかで行う禁煙指導として意義は十分ある.さらに,「ライト」,禁煙外来,その他の禁煙指導法を組み合わせることよって,多くの喫煙者の禁煙が期待できる.〔産婦の進歩59(2)71-76,2007(平成19年5月)〕<br>
著者
前田 英三 三宅 博 石原 愛也 武岡 洋治 河野 恭廣 谷口 武 和田 富吉
出版者
名古屋大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1989

イネについて、in vivoにおける受精胚の発達様式と、in vitroであるカルスの再分化過程を詳細に比較したが、in vitroでの不定胚形成は認められなかった。アブサイシン酸(ABA)や高濃度の糖はカルスの再分化を促進した。数種イネ科作物を異なった土壌水分条件下で生育させ、根の形態を比較した結果、乾燥条件下で皮層内厚壁組織の発達が顕著であった。+ABAやブラシノライドがイネ科作物やマメ科牧草の老化種子の発芽促進効果を持つことを明らかにした。熱量計を用いて種子の活性を迅速かつ非破壊的に判別する方法を開発した。高温・乾燥などの異常環境下で生育させたイネの生殖器官に現れる形態異常を明らかにし、ジベレリン(GA)とABAの関与を推察した。イネの花粉と葯内緒組織の発達過程を調べ、タペ-ト肥大が発生する際には、当初は小胞子の細胞も活性化することを明らかにした。リンゴの胚珠内胚培養、葯培養からの不定胚発生、葉カルスからの再分化について最適条件を明らかにした。またリンゴ台木マルバカイドウの胚珠内胚培養を行い、高蔗糖濃度の培地で胚の生長が起こり、GAを含む培地に移すことにより実生を得ることができた。イネカルスやダイズ懸濁培養からプロトプラストを分離し、電気的に融合させ、融合過程の微細構造を明らかにした。レ-ザ光による植物細胞への色素導入を行い、生細胞に色素が導入されていることを確認した。マツバボタンの緑色カルスにおける葉緑体のグラナ構造を観察し、カルス内に維管策鞘が分化するとそこではグラナ形成が抑制されることを明らかにした。シコクビエのジャイアントド-ムからの花芽形成に成功した。またジャイアントド-ムとバミュ-ダグラスの体細胞胚の微細構造を明らかにした。Nicotiana glutinosaのカルスより分化能を持つ細胞のみを分離して継代培養することに成功した。このカルス系統の組織構造と遊離アミノ酸含量の特徴を明らかにした。
著者
土屋 智子 谷口 武俊 小杉 素子 小野寺 節雄 竹村 和久 帯刀 治 中村 博文 米澤 理加 盛岡 通
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.16-25, 2009 (Released:2010-05-14)
参考文献数
20
被引用文献数
3 2

温暖化対策としての原子力の重要性が高まる中で, 信頼回復の切り札のひとつと考えられているのがリスクコミュニケーションの実施であるが, 原子力分野でこれを意図した活動が幅広く行なわれているとはいえない. 本稿では, 東海村を実験地として行われたリスクコミュニケーション活動の設計意図と実施内容を示すとともに, リスクコミュニケーションに対する住民と原子力事業者の評価を分析し, 原子力技術利用に伴うリスクに対する住民の視点を明らかにする. また, これらの住民の視点がどのように原子力施設の安全に関与するかを示し, リスクコミュニケーションにおける課題を論じる.