著者
小菅 義夫 系 正義
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.86, no.11, pp.2397-2406, 2003-11-01
被引用文献数
18

追尾フィルタは,目標位置を観測値として,位置,速度,加速度など限りなく真値に近いものを推定する.その代表例は,3次元空間の追尾を1個の追尾フィルタで実現するカルマンフィルタを使用したものである.また,α-βフィルタは等速直線運動モデル,α-β-γフィルタは等加速度運動モデルを使用した1次元空間用の追尾フィルタである.なお,カルマンフィルタもα-β(-γ)フィルタも線形フィルタの一種である.ここで,α-β(-γ)フィルタでは,初期値算出から十分時間が経過した場合の位置の定常追従誤差の値が既知である.しかし,3次元空間用の追尾フィルタでは定常追従誤差の算出式が報告されていない.本論文では,3次元空間において,目標位置ベクトル及び目標位置ベクトルのn階までの時間微分値からなる目標運動諸元を推定する線形フィルタで構成される追尾フィルタの定常追従誤差の算出式を導出した.なお,目標は位置ベクトルのn+1階の時間微分値が一定で運動すると仮定した.この結果,位置の定常追従誤差は,サンプリング間隔と追尾フィルタの目標位置ベクトルのn階の時間微分値に対するゲイン行列の逆行列の積に比例することがわかった.
著者
系 正義 辻道 信吾 小菅 義夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1997, no.1, 1997-08-13
被引用文献数
1

追尾フイルタは, 距離, 仰角, 方位角からなる目標位置のレーダ観測値をもとに, 位置, 速度などの目標運動諸元を推定する. 単一レーダを使用して追尾を行う場合, レーダ観測値は時系列データとして得られるため, カルマンフィルタを用いた追尾フィルタの実現が可能である. 一方, 広域に散在する複数のレーダを使用する場合, 各レーダから追尾処理装置への観測値の転送時間は必ずしも同一でないため, 追尾処理装置で処理すべき観測値は図1に示すように非時系列なデータとなる場合がある. この場合カルマンフィルタの適用は困難となる. 本稿では, カルマンフィルタの理論を拡張して, 非時系列なレーダ観測値を処理する追尾フィルタアルゴリズムを導出したので, これを報告する.
著者
小菅 義夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J93-B, no.11, pp.1504-1511, 2010-11-01

追尾フィルタは,センサから得られる観測誤差を含んだ航空機などからの目標位置観測値をもとに,目標の位置,速度などの真値を推定するアルゴリズムである.追尾フィルタの代表例は,線形最小二乗フィルタ,α-βフィルタ,等速直線運動モデルを使用したカルマンフィルタである.本論文では,これら各種追尾フィルタについて概説する.また,設計パラメータが所要追尾性能より直接決定できる,新たな追尾手法であるNPフィルタについて述べる.
著者
小菅 義夫 亀田 洋志 真野 清司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.414-421, 1996-07-25
参考文献数
7
被引用文献数
42

あらまし 目標位置をレーダ観測値として,直交座標により,位置,速度等の目標運動諸元の真値を推定する追尾フィルタについて検討している.その代表例は,カルマンフィルタあるいはα-βフィルタを使用したものである.カルマンフィルタは,追尾精度は良いが演算負荷が重い.α-βフィルタは,追尾精度に問題があるが演算負荷が軽く実用的である.演算負荷の軽いα-βフィルタがカルマンフイルタと同程度の追尾精度をもてば,更に実用的になる.そのため,α-βフィルタがカルマンフィルタに近似できるための条件を検討した.本論文では, 目標位置ベクトルを1軸とするレーダ座標を平滑値(現サンプリング時刻に対する目標運動諸元の推定値)算出に使用する. この場合,目標運動とともに座標軸が回転するレーダ座標の回転および目標の角速度が微少で,駆動雑音(目標運動モデルのあいまいさを示すパラメータ)が座標間で独立で同一の値としたとき,α-βフィルタがカルマンフィルタに近似できることを証明する. この結果は,目標が低速度,目標距離が大,あるいは目標がレーダに向かって直進しているとき,α-βフィルタがカルマンフィルタに近似できることを示すことになる.
著者
松崎 貴史 系 正義 小菅 義夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.536-551, 2003-03-01

不要信号環境下における目標追尾において,目標信号消滅後に,不要信号や他の目標信号に誤追尾してできる誤航跡を解除するための目標消滅判定が必要である。目標消滅の例として,突然の航空機の衝突,船舶の沈没,車が崖から転落した場合などが考えられる。本論文では,追尾目標以外からの不要信号(雲,波,地面からの反射信号)が存在環境下で,PDAで追尾維持を行っている場合のアルゴリズムであるPDA (Probabilistic Data Association)の信頼度を使用して,目標が存在する確率と目標が存在しない確率の比を求め,その確率の比を使用した目標消滅判定法の提案する。計算機シミュレーションによる検討を行った結果,目標が実際に存在するシナリオと目標が実際に消滅するシナリオの両シナリオに対し,提案法は,安定した目標消滅判定を行うことが確認された。
著者
小幡 康 亀田 洋志 系 正義 辻道 信吾 小菅 義夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.654, pp.79-86, 2000-02-25

近年, 多目標追尾のアルゴリズムとして.MHT(Multiple Hypothesis Tracking)が注目されている.MHTは観測データと目標との相関処理に関する仮説を複数維持して追尾処理を行う延期決定型の追尾アルゴリズムであり, 追尾開始機能を持っていることが一つの特長となっている.ただし仮説の扱いについては課題があり, 我々は改良版である航跡型MHTを開発した.この航跡型はMHTでは仮説は航跡を元に構成され, 追尾開始機能の向上が図られている.今回、航跡型MHTによる追尾開始方式の性能評価を、NN(Nearest Neighbor)アルゴリズムで追尾を行いゲート内での観測データの観測頻度により航跡確立の判定を行う追尾開始方式との比較シミュレーションにより行った。本稿ではその性能評価について報告する。
著者
川瀬 徹也 系 正義 小菅 義夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.271, pp.1-6, 2004-08-20

IMM(Interacting Multiple Model)フィルタは,様々な運動モデルを持つカルマンフィルタより構成される追尾フィルタである.複数の異なる運動モデルの残差ベクトルより尤度を算出し,運動モデル毎の尤度比から得られるモデル信頼度により,モデル毎の平滑値の重み付けを行っている.しかし,高サンプリングレート追尾においては,準最適化による平滑値のミキシングにより,モデル毎の尤度に差がつきにくく,追尾精度精度が劣化する問題がある.本報告では,サンプリングレートが高い場合に,モデル毎の尤度に差が生じるまで,一定期間混合処理を延期させる高サンプリングレート追尾に対応したIMMフィルタについて提案する.
著者
小幡 康 亀田 洋志 系 正義 辻道 信吾 小菅 義夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SAT, 衛星通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.655, pp.79-86, 2000-02-25

近年, 多目標追尾のアルゴリズムとして, MHT(Multiple Hypothesis Tracking)が注目されている.MHTは観測データと目標との相関処理に関する仮説を複数維持して追尾処理を行う延期決定型の追尾アルゴリズムであり, 追尾開始機能を持っていることが一つの特長となっている.ただし仮説の扱いについては課題があり, 我々は改良版である航跡型MHTを開発した.この航跡型MHTでは仮説は航跡を元に構成され, 追尾開始機能の向上が図られている.今回、航跡型MHTによる追尾開始方式の性能評価を、NN(Nearest Neighbor)アルゴリズムで追尾を行いゲート内での観測データの観測頻度により航跡確立の判定を行う追尾開始方式との比較シミュレーションにより行った.本稿ではその性能評価について報告する。
著者
川瀬 徹也 系 正義 小菅 義夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.10, pp.1777-1786, 2002-10-01
参考文献数
10
被引用文献数
5

旋回目標追尾アルゴリズムであるM^3フィルタは複数の定数加速度モデルを定義し,各運動モデルの予測位置を中心とした確率密度分布の観測位置における値を評価することにより,各運動モデルの信頼度を算出する.サンプリング間隔が短い近距離レーダの条件下では良好な追尾性能が得られるが,広範囲を捜索するためにサンプリング間隔の長い遠距離レーダの場合,追尾精度が劣化する場合がある.これは,予測値間に各運動モデルの確率密度が極めて低い領域が生じ,モデルの信頼度計算が適切に行われないためである.そこで本論文では,各運動モデルの確率密度分布の重なりを表す指標として誤差楕円体重複度係数を提案し,計算機シミュレーションによる解析を行った.その結果,上記係数が一定の値を下回る場合にモデル信頼度が増減を繰り返し,適当なモデルに収束しない信頼度発振現象が生じることを明らかにした.誤差楕円体重複度係数を監視することで,事前に信頼度の発振現象が生じる可能性を知ることができる.