著者
尾崎 研一 明石 信廣 雲野 明 佐藤 重穂 佐山 勝彦 長坂 晶子 長坂 有 山田 健四 山浦 悠一
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.101-123, 2018 (Released:2018-08-02)
参考文献数
168
被引用文献数
4

森林は人間活動に欠かすことのできない様々な生態系サービスを供給しているため、その環境的、経済的、文化的価値を存続させる森林管理アプローチが必要である。保残伐施業(retention forestry)は、主伐時に生立木や枯死木、森林パッチ等を維持することで伐採の影響を緩和し、木材生産と生物多様性保全の両立をめざす森林管理法である。従来の伐採が収穫するものに重点を置いていたのに対して、保残伐は伐採後に残すものを第一に考える点と、それらを長期間、少なくとも次の主伐まで維持する点に違いがある。保残伐は、皆伐に代わる伐採方法として主に北アメリカやヨーロッパの温帯林、北方林で広く実施されているが、日本を始めとしたアジア諸国では普及しておらず、人工林への適用例もほとんどない。そこで、日本で保残伐施業を普及させることを目的として、保残伐施業の目的、方法、歴史と世界的な実施状況を要約した。次に、保残伐の効果を検証するために行われている野外実験をレビューし、保残伐に関する研究動向を生物多様性、木材生産性、水土保全分野についてとりまとめた。そして、2013年から北海道で行っている「トドマツ人工林における保残伐施業の実証実験(REFRESH)」について紹介した。
著者
須佐 千明 三串 伸哉 尾崎 研一郎 村田 志乃 鈴木 瑠璃子 高島 真穂 梅田 慈子 柴野 荘一 中根 綾子 植松 宏
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.91-95, 2011 (Released:2012-01-20)
参考文献数
12

定型抗精神病薬の長期服用によって, オーラルジスキネジアが発現することが知られている。オーラルジスキネジアは口腔領域に認められる不随意運動であり, 難治性である場合が多い。今回, われわれは咀嚼時のみにジスキネジアを生じた症例を経験したので報告する。患者は64歳の女性で, 舌の不随意運動による咀嚼困難を主訴に来院した。既往歴として, うつ病があり10年以上抗精神病薬を服用していた。咀嚼ができないため食事摂取量が減少し, 体重が減少していた。他院にて遅発性ジスキネジアと診断され薬物治療が行われていた。当科初診時の評価では, 安静時および舌の随意運動時にジスキネジアは出現せず, 水分など咀嚼を伴わない食塊の嚥下は正常であった。一方, 固形物は咀嚼中に口腔周囲および舌にジスキネジアが出現し, 食塊形成が困難であった。そこで栄養摂取量を確保するために食事摂取方法の指導を行った。神経内科にて薬物治療を継続しながら, 機能訓練としてガム咀嚼の訓練を指導したが, 明らかな症状改善を認めなかった。しかし初診から5カ月後, ハロペリドールの内服開始直後にジスキネジアが消失し, 常食摂取可能となり体重増加を認めた。本症例では, ジスキネジアが咀嚼時のみに出現した点で希有な症例であった。ジスキネジアによる摂食·嚥下障害を生じ, また治療に長期間を要したことから, 機能状態に応じた食事摂取方法の指導を行うことが重要であった。