著者
高川 晋一 植田 睦之 天野 達也 岡久 雄二 上沖 正欣 高木 憲太郎 高橋 雅雄 葉山 政治 平野 敏明 葉山 政治 三上 修 森 さやか 森本 元 山浦 悠一
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.R9-R12, 2011 (Released:2011-12-09)
参考文献数
7
被引用文献数
8

全国的な鳥類の分布情報データを用いて,各種の分布を決める要因や生息数の増減に影響する要因等を探る上で,どのような生活史・生態・形態的な特性をもった鳥において変化が見られるのかを検討することは,効果的な解析手法の1つである.こうした解析を行なうためには日本産鳥類の形態や生態に関する情報が必要である.そこで,今回,海鳥類を除いた日本でみられる鳥類493種について,生活史や生態,形態の情報についてとりまとめ,データベース化した.このデータベース「JAVIAN Database(Japanese Avian Trait Database)」は,さまざまな研究を行なう上でも有用な情報と考えられるため,ここに公開した.
著者
尾崎 研一 明石 信廣 雲野 明 佐藤 重穂 佐山 勝彦 長坂 晶子 長坂 有 山田 健四 山浦 悠一
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.101-123, 2018 (Released:2018-08-02)
参考文献数
168
被引用文献数
4

森林は人間活動に欠かすことのできない様々な生態系サービスを供給しているため、その環境的、経済的、文化的価値を存続させる森林管理アプローチが必要である。保残伐施業(retention forestry)は、主伐時に生立木や枯死木、森林パッチ等を維持することで伐採の影響を緩和し、木材生産と生物多様性保全の両立をめざす森林管理法である。従来の伐採が収穫するものに重点を置いていたのに対して、保残伐は伐採後に残すものを第一に考える点と、それらを長期間、少なくとも次の主伐まで維持する点に違いがある。保残伐は、皆伐に代わる伐採方法として主に北アメリカやヨーロッパの温帯林、北方林で広く実施されているが、日本を始めとしたアジア諸国では普及しておらず、人工林への適用例もほとんどない。そこで、日本で保残伐施業を普及させることを目的として、保残伐施業の目的、方法、歴史と世界的な実施状況を要約した。次に、保残伐の効果を検証するために行われている野外実験をレビューし、保残伐に関する研究動向を生物多様性、木材生産性、水土保全分野についてとりまとめた。そして、2013年から北海道で行っている「トドマツ人工林における保残伐施業の実証実験(REFRESH)」について紹介した。
著者
高山 範理 讃井 知 山浦 悠一
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.102, no.3, pp.180-190, 2020-06-01 (Released:2020-09-16)
参考文献数
59
被引用文献数
1

主伐の時代を迎えた日本で林業が社会的に受け入れられるためには,伐採地の風景的価値を考慮した上で,生物多様性の保全や林業としての経済的合理性に配慮して,適切な主伐方法を選択する必要がある。そこで本研究では,針葉樹(トドマツ)人工林の皆伐地,群状に植栽木を残した伐採地(群状保持),ha当たり10本,50本,100本の広葉樹を単木的に残した伐採地(単木保持),広葉樹老齢木を残した伐採地,伐採前の人工林の7種類の異なる林分状況からなる写真を刺激として,非専門家が伐採地に懐く風景的価値(認知・評価)を調べ,さらに非専門家と専門家間で生物多様性の保全および林業としての経済的合理性に対する伐採地の評価を比較した。その結果,1) 非専門家は皆伐や老齢木保持をポジティブに認知する一方で,群状保持はネガティブに認知する可能性があること,2) 非専門家は樹木の伐採に抵抗感があるため,主伐の実施にあたってはその必要性や生態系保全への配慮,植林の実施等の情報を供与し理解を求めることが有効であること,3) 林業としての経済的合理性の評価については,非専門家と専門家の間にギャップがあり,非専門家の理解を得るためには情報交換や議論を重ねる必要があることなどが明らかになった。
著者
山浦 悠一 先崎 理之 河村 和洋 大谷 達也
出版者
国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所
雑誌
森林総合研究所研究報告 (ISSN:09164405)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.35-40, 2023-03-24 (Released:2023-03-24)
参考文献数
25

高知県東部の6年生のスギ新植造林地に赤外線式自動撮影カメラを設置したところ、フクロウ類の一種オオコノハズク Otus semitorques と昼行性猛禽類のサシバ Butastur indicus が撮影された。画像は4月から6月に撮影され、採食のために当地を訪問していたと考えられた。幼齢人工林は昼行性猛禽類だけでなく夜行性猛禽類の狩場にもなりうる。
著者
山浦 悠一 天野 達也
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.261-276, 2010-07-31
被引用文献数
6

マクロ生態学は、大きな時空間スケールで生物の個体数・分布・多様性を扱う分野である。近年、人類が引き起こしている地球規模での環境変化が生物多様性に及ぼす影響が注目を集めるなか、マクロ生態学の重要性が認識されつつある。本稿では、まずマクロ生態学で扱われてきた課題とマクロ生態学の特徴を整理する。そして、マクロ生態学を発展させるための有望なアプローチの一つとして、生物の生態的特性の活用を挙げる。生態的特性とは、生物の形態的・生理的・表現的な特徴ことのを指し、生物の行動や環境への反応、資源(生息地)要求性、生態系内での機能、他の生物に及ぼす影響力なども含まれることもある。生態的特性を活用することにより、マクロスケールでの生物-環境の関係性の理解・予測が促進されるだろう。マクロ生態学の今後の課題として、局所生態学との統合や時間的視点の考慮などが挙げられるが、生態的特性の活用はこれら課題の解決に大きく貢献するだろう。人類が地球上で優占する現在、生物多様性を理解、予測、保全するうえで、マクロ生態学の更なる発展が望まれる。