著者
高橋 成実 小平 秀一 佐藤 壮 山下 幹也 海宝 由佳 三浦 誠一 野 徹雄 瀧澤 薫 野口 直人 下村 典夫 金田 義行
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.124, no.5, pp.813-827, 2015-10-25 (Released:2015-11-04)
参考文献数
52
被引用文献数
6 8

Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology carried out seismic surveys using ocean bottom seismographs (OBSs) and a multi-channel reflection survey system from 2004 to understand the structural characteristics and the continuity of the Izu–Ogasawara Arc crust. The Izu–Ogasawara Arc developed from the oceanic crust and produced andesitic middle crusts. The velocity is similar to that identified in the continental crust, and the initial continental crust might have been produced during development of the arc crust. To investigate the process of the Izu–Ogasawara Arc crust, many 2-D velocity structures are compared using unified specifications of data acquisition and analysis, and structural commonalities and differences are evaluated. The specification was confirmed previously through simulation studies using the structure obtained. These arc crustal structures have common characteristics, which are an upper crust with a Vp of 4.5–6.0 km/s, a middle crust with a Vp of 6.0–6.5 km/s, and a lower crust with a Vp of 6.5–7.5 km/s. The lower crust is composed of two layers; the upper part has a Vp of 6.5–6.8 km/s and the lower part has a Vp of 6.8–7.5 km/s. The uppermost mantle has a Vp of less than 8.0 km/s. Development of the arc crust results in crustal thickening accompanied by rifting. Back arc opening after rifting plays the role of crustal thinning. The Shikoku Basin, which is the older backarc basin, has a relatively thin crust with a thickness of approximately 10 km, and the eastern part has a high velocity lower crust with a Vp of over 7 km/s. In addition, the upper crust of the eastern part of the Shikoku Basin has some intrusive materials and strike slip faults with few vertical displacements. Such a high-velocity lower crust is not distributed in the Parece Vela basin. The Ogasawara Ridge has different characteristics from the above arc crust, which are a crustal thickness of approximately 20 km but a complicated structure including a narrow and thin crust in the N–S direction. Here, we introduce the structural characteristics of the entire Izu–Ogasawara Arc crusts based on unified seismic surveys and data analysis methods.
著者
松島 健 山下 幹也 安原 達二 堀口 浩 宮町 宏樹 戸田 茂 高田 真秀 渡邉 篤志 渋谷 和雄 Takeshi Matsushima Mikiya Yamashita Tatsuji Yasuhara Koh Horiguchi Hiroki Miyamachi Shigeru Toda Masamitsu Takada Atsushi Watanabe Kazuo Shibuya
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.395-408, 2003-11

南極氷床上のクレバス帯等の,地上からは到達困難な地域での人工地震観測を目的とした投下型地震観測装置(南極ペネトレータ)を開発し,第43次日本南極地域観測隊で実施する東南極みずほ高原における人工地震探査で使用するために,22本のペネトレータを昭和基地に持ち込んだ.しかし,開発の遅れに伴う国内試験の不足から種々の不具合が発生し,今回は本観測での使用をあきらめざるを得なかった.当初の目的は果たすことができなかったが,国内では得られない環境でのペネトレータ投下実験を行い,投下姿勢,着地衝撃力,温度変化等の貴重なデータを得るとともに,南極内陸部での実際のヘリコプター運用への知見を得ることができた.これらの成果はペネトレータ型地震計の改良のみならず,今後の各種投下型観測機器の開発・製作に多いに役に立つものと考えられる.
著者
山下 幹也 三浦 誠一 羽角 華奈子 深尾 良夫 勝又 勝郎 小平 秀一
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.111-118, 2013-04-01
参考文献数
20
被引用文献数
1

近年,マルチチャンネル反射法地震(MCS)探査は海底下のみならず海洋微細構造イメージングに適用できることが知られ,&ldquo;Seismic Oceanography&rdquo; という新しい分野として国内外で研究が進められている。しかしながら用いられるデータの多くが地下構造調査を目的としたデータの二次利用であり,必ずしも海洋微細構造を対象としたものではない。そのため様々な調査仕様のデータが存在するため,統一した評価をするのが困難である。そこで本研究では同じ測線に沿った複数のMCS 探査を行ったデータに対してイメージングを行い,調査仕様が海洋微細構造イメージングにどのような影響があるかを評価することを目的とする。仕様によって構造に与える影響を考慮して断面を評価することが可能になることにより,これまでに地下構造探査で得られた膨大なレガシーデータを有効利用することが可能になる。<br> 本研究ではこれまでに取得した既存MCS探査測線の中から海洋中の反射面が卓越している伊豆小笠原海域に着目し,共通する測線のデータで比較を行った。用いたのは同一海域において3つの調査仕様によって得られたデータ,および同一測線・同一MCS 仕様でエアガン・ストリーマー深度が異なる場合のデータである。しかしながら本研究で用いたデータは調査時期が離れているため海洋構造自体の評価は困難であるため,イメージングによって得られる反射断面の特徴にのみ着目して比較を行った。それぞれのデータを用いてイメージング比較を行うことにより,海洋微細構造イメージングに対してMCS探査仕様の違いによる影響が明らかになった。<br>
著者
三浦 亮 井和丸 光 野口 直人 伊藤 誠 山下 幹也 中村 恭之 三浦 誠一
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
JAMSTEC Report of Research and Development (ISSN:18801153)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.84-95, 2018-03-01 (Released:2018-04-24)
参考文献数
7

2011年に海洋研究開発機構で導入された可搬式マルチチャンネル反射法地震探査(可搬式MCS)システムでは,運用を開始して以来,ストリーマーケーブルの複数のアクティブセクションに同時に現れるノイズ(等走時ノイズ)が発生している.この等走時ノイズは,スクリューの回転あるいは電源系に起因して周期的に現れる場合,およびランダムに発生する場合がある.ノイズの発生はストリーマーケーブルの電気的性質に起因すると推定されているが,現在のところ根本的な解決には至っていない.中でもランダム型の等走時ノイズは,反射波シグナルより強い振幅かつ反射波シグナルに近い周波数帯域で現れることが多いため,重合後データに対しての悪影響が大きい.可搬式MCSデータの処理においては等走時ノイズのみを抑制し,シグナルを残すようなデータ処理法を適用する必要がある.等走時ノイズの速度特質を利用し,速度フィルターの一種であるF-Kフィルター(周波数・波数領域フィルター)の適用を試みたところ,完全に除去することはできないものの,ノイズの影響を抑制することができた.
著者
横田 華奈子 勝又 勝郎 山下 幹也 深尾 良夫 小平 秀一 三浦 誠一
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.317-326, 2010-11-05
被引用文献数
1

マルチチャンネル反射法地震探査(Multi-Channel Seismic survey,MCS survey)は,これまで地震学において地下の構造探査に用いられてきた手法である。2003年にこのMCSデータを用いて海洋中の密度構造を可視化できることが指摘されてから,地震音響海洋学(Seismic Oceanography)と呼ばれるMCSデータを用いた海洋物理学が発展してきた。この新しい研究分野を本稿で紹介する。MCSデータとは人工震源から発振された音波の反射強度を記録したものである。ノイズが多いなどの難点はあるが,従来の海洋観測法では様々な制約から取得することが難しい水平・鉛直ともに高解像なデータである(水平分解能6.25〜12.5m,鉛直分解能0.75〜3m)。観測は船舶を停止せずに行われるため,約200kmの測線を前述の分解能で1日で観測できる。MCSデータを用いると広範囲の海洋中のファインスケールの密度構造を可視化することができる。ここでは一例として,伊豆・小笠原海域の1測線に見られた反射強度断面上の低気圧性渦を挙げる。