著者
山下 幹也 三浦 誠一 羽角 華奈子 深尾 良夫 勝又 勝郎 小平 秀一
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.111-118, 2013-04-01
参考文献数
20
被引用文献数
1

近年,マルチチャンネル反射法地震(MCS)探査は海底下のみならず海洋微細構造イメージングに適用できることが知られ,&ldquo;Seismic Oceanography&rdquo; という新しい分野として国内外で研究が進められている。しかしながら用いられるデータの多くが地下構造調査を目的としたデータの二次利用であり,必ずしも海洋微細構造を対象としたものではない。そのため様々な調査仕様のデータが存在するため,統一した評価をするのが困難である。そこで本研究では同じ測線に沿った複数のMCS 探査を行ったデータに対してイメージングを行い,調査仕様が海洋微細構造イメージングにどのような影響があるかを評価することを目的とする。仕様によって構造に与える影響を考慮して断面を評価することが可能になることにより,これまでに地下構造探査で得られた膨大なレガシーデータを有効利用することが可能になる。<br> 本研究ではこれまでに取得した既存MCS探査測線の中から海洋中の反射面が卓越している伊豆小笠原海域に着目し,共通する測線のデータで比較を行った。用いたのは同一海域において3つの調査仕様によって得られたデータ,および同一測線・同一MCS 仕様でエアガン・ストリーマー深度が異なる場合のデータである。しかしながら本研究で用いたデータは調査時期が離れているため海洋構造自体の評価は困難であるため,イメージングによって得られる反射断面の特徴にのみ着目して比較を行った。それぞれのデータを用いてイメージング比較を行うことにより,海洋微細構造イメージングに対してMCS探査仕様の違いによる影響が明らかになった。<br>
著者
横田 華奈子 勝又 勝郎 山下 幹也 深尾 良夫 小平 秀一 三浦 誠一
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.317-326, 2010-11-05
被引用文献数
1

マルチチャンネル反射法地震探査(Multi-Channel Seismic survey,MCS survey)は,これまで地震学において地下の構造探査に用いられてきた手法である。2003年にこのMCSデータを用いて海洋中の密度構造を可視化できることが指摘されてから,地震音響海洋学(Seismic Oceanography)と呼ばれるMCSデータを用いた海洋物理学が発展してきた。この新しい研究分野を本稿で紹介する。MCSデータとは人工震源から発振された音波の反射強度を記録したものである。ノイズが多いなどの難点はあるが,従来の海洋観測法では様々な制約から取得することが難しい水平・鉛直ともに高解像なデータである(水平分解能6.25〜12.5m,鉛直分解能0.75〜3m)。観測は船舶を停止せずに行われるため,約200kmの測線を前述の分解能で1日で観測できる。MCSデータを用いると広範囲の海洋中のファインスケールの密度構造を可視化することができる。ここでは一例として,伊豆・小笠原海域の1測線に見られた反射強度断面上の低気圧性渦を挙げる。
著者
安田 一郎 羽角 博康 小松 幸生 西岡 純 渡辺 豊 中塚 武 伊藤 幸彦 建部 洋晶 勝又 勝郎 中村 知裕 広江 豊 長船 哲史 田中 祐希 池谷 透 西川 悠 友定 彰
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

千島列島やアリューシャン列島海峡域において、中深層に及ぶ通常の数千倍の乱流鉛直混合の存在を、観測によって実証した。この大きな潮汐鉛直混合は、鉄や栄養塩等の物質循環を通じて、親潮など北太平洋亜寒帯海域の海洋生態系に大きな影響を与える。さらにその潮汐混合が18.6年周期で変動することによって生じる海洋変動が、日本東方海面水温とアリューシャン低気圧等の大気海洋相互作用を通じて増幅し、太平洋規模の気候・海洋の約20年変動に影響することが、観測・モデルの両面から明らかとなった。