著者
山内 大輔 川村 善宣 本藏 陽平 小林 俊光 池田 怜吉 宮崎 浩充 川瀬 哲明 香取 幸夫
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.159-166, 2020 (Released:2021-04-05)
参考文献数
25

上半規管裂隙症候群は,1998年マイナーによって最初に報告され,これまでいくつかの手術法について報告されてきた.正円窓閉鎖術はいわゆる“third window theory”に基づいた術式であるが,その効果は限定的であることが報告されている.一方,中頭蓋窩法によるpluggingまたはresurfacingの場合は,ほとんどの症例で裂隙部を直接確認できる.しかし,裂隙部が上錐体静脈洞に位置している場合は困難となる.さらに頭蓋内合併症のリスクのため,安易には手術を勧められないジレンマがある.そのため,耳鼻咽喉科医にとって中頭蓋窩法よりも経乳突洞法によるpluggingの方が容易な術式であるが,下方からでは裂隙部を確認しづらく,また感音難聴の合併症のリスクが潜んでいる.著者らは経乳突洞法によるpluggingに水中内視鏡を用いることで安全性を高める方法に改良した.乳突削開術後,浸水下に内視鏡を用いることで,膜迷路と裂隙部を明瞭に観察することが可能であった.たとえ裂隙部が上錐体静脈洞に位置していても,内側からアプローチできるので有用であった.本術式の方法や適応,術後成績について報告する.
著者
山内 大輔
出版者
日本マイクロサージャリー学会
雑誌
日本マイクロサージャリー学会会誌 (ISSN:09164936)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.217-225, 2018 (Released:2018-12-25)
参考文献数
11

The reverse digital artery flap (RDAF) is useful for skin coverage of the finger, but postoperative flap congestion is a serious problem. The degree of flap congestion varies with the type of injury and may affect the treatment for congestion. We examined the treatment outcomes of 24 fingertips by separating them by the type of injury based on the presence of a narrow skin bridge. There were 13 cases in the crush group and 11 cases in the avulsion group. Congestion was confirmed in half of the crushed skin bridge ( - ) group. In the crushed skin bridge ( + ) group, congestion was not observed. In the avulsion skin bridge ( - ) group, congestion was observed in all cases. In the avulsion skin bridge ( + ) group, low grade congestion was observed. A RDAF will adequately survive without the skin bridge in crush injuries, but congestion can be avoided by attaching the skin bridge. In the case of avulsion injury, the flap can survive, but congestion cannot be avoided only with a skin bridge, and it is likely that a wider skin bridge or subcutaneous venous network will be needed.
著者
山内 大輔 福田 安希 唐原 一郎 峰雪 芳宣
出版者
日本植物形態学会
雑誌
PLANT MORPHOLOGY (ISSN:09189726)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.3-7, 2016 (Released:2017-04-14)
参考文献数
15
被引用文献数
1

種子は一般的に乾燥状態で,その中に休眠している幼植物(胚)が含まれており,適当な条件が揃うと発芽する.発芽過程における種子中の形態的変化の観察では,その周りを覆う種皮が支障となり,光学顕微鏡観察のための切片作製では固定・樹脂包埋等による試料の変形も問題となる.そこで著者らは,種子を非侵襲で観察するために放射光施設SPring-8においてX線マイクロコンピュータートモグラフィー(CT)を利用している.マメ科ミヤコグサの種子をBL20B2で撮影した結果,胚の輪郭や将来維管束になる前形成層等を捉えることができた.この前形成層周辺にはX線の透過しにくい構造が散在していたが,それはシュウ酸カルシウム結晶であり,種子形成過程中期に現れ,吸水後10日目の子葉中でも消失しないで残ることがわかった.発芽種子の子葉には乾燥種子で見られないX線の透過し易い部分が散在していた.これは細胞間隙であり,吸水後60分になると出現することが分かった.一方,より高分解能での観察が可能なBL20XUを使ってシロイヌナズナ種子を撮影した.その結果,幼根から胚軸にかけての領域を構成する細胞の形が把握でき,胚の表皮,皮層,内皮を構成する大部分の細胞輪郭が抽出できるようになった.これら著者らの結果をふまえ,本総説ではX線マイクロCTの有効利用法や問題点についても言及したい.