著者
市橋 正一
出版者
愛知教育大学
雑誌
教養と教育
巻号頁・発行日
vol.7, pp.95-102, 2007-03-31

愛知教育大で筆者が行う基礎教育科目[科学・技術と人間]の内容の紹介と、その授業を通じて行ったアンケート調査の結果をまとめた。この講義では、農業分野の科学技術が人類の生存に果たす役割について学び考えることを意図してきた。授業では、人間が生きていく上での装飾用植物(花)の必要性について紹介し、花に興味を持つ学生が増えてくれることを望んでいる。また、食用作物の歴史、個別の作物に関する説明も行っている。学生の食に関する興味を喚起する意味で行った、日常食べている野菜の種類の調査では、受講生の食べた野菜の種類の合計は112種であった。これは、日本人が大正時代までに食べてきた植物の種類数127に比べると多いと見られた。しかし、一人当たりの平均の種類数で見ると3種類前後であること、また皆がよく食べる野菜がある一方、食べられる頻度の少ないものも多いことからも、必ずしも多くの野菜が食べられているのではないと推測された。この112種のうち伝統的なものは61種(54%)であり、日常食べる野菜果物の半数以上は、過去に食べられていた食材と共通するものであった。3年間の調査を通じて、食べられた頻度の最も高い野菜はニンジンであった。続いて、キャベツ、レタス、タマネギ、ネギがよく食べられる野菜であることが明らかになった。これらの学生の嗜好の形成には、食生活の変化と、野菜の生産方法、育種的進歩が関係していることが推測された。学生の持っている知識の貧弱さ、知的好奇心の希薄さは、すべての授業の中で良く感ずることであるが、アンケートなどの回答からすれば、必ずしもすべての受講生が興味を持っていないわけではなかった。食に関する興味関心は誰もが持つものと思われ、愛知教育大生も、筆者の授業を通じて、少しでも食に関する興味を増大し、豊かな食生活を送ってくれることを望んでいる。
著者
イスラム オバイドル M. 松井 鋳一郎 市橋 正一
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.1132-1138, 1999-11-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
24
被引用文献数
11 17

光質がCattleyaの発芽と発育に及ぼす影響を明らかにするため, C. walkeriana種子を京都培地に無菌播種し, 異なる光質条件で16時間日長, 室温25℃で培養した.その結果, 播種70日後の発芽率は赤, 黄および青色光下で高かったが, 緑色光では低かった.その後, 植え替えて同様に異なる光質で培養を続けたところ, シュートと根の発育は赤, 黄色光ですぐれた.青色光では実生の新鮮重とシュートの発育は増大したが乾燥重は小さかった.緑色光ではシュート長が大となり, 葉数は増加し, シュートと葉軸からの根の発育は促進された.一方, 新鮮重や乾物重, 葉の長さ, 葉の幅や根の伸長は他の区より劣った.TTC反応で見た根のデヒドロゲナーゼ活性は青色光で最も高く, 赤色光で最も劣った.
著者
市橋 正一 福井 博一 金 勲
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.403-407, 2006 (Released:2006-12-27)
参考文献数
13

ミズゴケで栽培したドリテノプシスの乾物重と成分含有率に及ぼす培養液のイオン組成の影響について検討した.茎葉,根,花序などの乾物重と乾物割合は,処理区間での差は比較的少なかった.しかし,K+濃度の増加は茎葉の乾物重の増加に,Ca2+濃度の増加は減少につながった.乾物率は器官間での違いが大きく,茎葉部では6.4~7.4%であったのに対し,根部は8.5~10.4%,花序部では7.0~8.4%となった.各成分の含有率は培養液中の特定のイオン比率が上昇すれば同種元素含有率は増加したが,陽イオンあるいは陰イオン群内の他種のイオンの吸収は抑制された.本実験の陽イオン処理区では茎葉のCa含有率,花序のP含有率に違いが見られた.また,陰イオン処理区では根のP,Ca含有率,花序のN,Ca含有率に違いが見られた.これは,各イオンの吸収と移動が,培養液組成によって影響を受けたことによるものと考えられた.K+はH2PO4−の吸収・転流を阻害し,NO3−はCa2+の吸収を促進したが,その機作については不明であった.