著者
山口 佳寿博 大森 久光
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.59-65, 2012

喫煙に起因する疾患として最も重要なものはCOPDと肺癌である.近年施行された網羅的ゲノム解析(GWAS:genome-wide association study)の結果,両疾患には共通の疾患感受性遺伝子(促進,抑制)が存在することが明らかにされた.これらの事実は,FEV1.0を中心とする肺機能の測定は喫煙関連COPDの診断/管理に不可欠であるばかりではなく,COPDに合併する喫煙関連肺癌の発生を予測する臨床的に重要な指標を求めていることを意味する.しかしながら,肺機能の測定値をそのまま提示しても一般市民あるいは患者の理解を得ることが難しいことが指摘されている.この問題を解決するため,肺機能をわかりやすい年齢に変換して提示する"肺年齢"なる指標が導入された.しかしながら,現在使用されている肺年齢はFEV1.0の正常基準値を与える回帰式にFEV1.0(肺機能因子)と身長(体型因子)を代入し年齢を逆算するものであり,この方法には種々の問題が存在し肺機能の情報を正しく患者に伝達しているとはいいがたい.本稿では肺年齢がなぜ必要であるかの背景(COPDと肺癌の関連),その基礎的概念ならびに正しい評価法について理論的検討を加えた.
著者
浅野 浩一郎 山口 佳寿博 河合 章 森 正明 高杉 知明 梅田 啓 川城 丈夫 横山 哲朗
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.2098-2104, 1992-12-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
20

急性低酸素症における臓器レベルの代償機構を検討するため, 麻酔犬に室内気または13%酸素を吸入させ各種血行動態指標および動脈血, 混合静脈血, 頸, 冠, 肝, 腎静脈血の血液ガス諸量を測定した. これらの測定諸量を用いて室内気ならびに低濃度酸素吸入下における生体全体ならびに主要臓器の酸素利用・輸送に関する諸指標を解析した. 低濃度酸素吸入時には生体全体の酸素供給量が減少したが, 酸素摂取率の増加により酸素消費量は有意な変化を示さなかった. 臓器レベルでは低酸素吸入時に酸素摂取率が肝・門脈系臓器で室内気吸入時の1.5倍に, 腎臓で2倍に増加したが, 心臓, 脳では有意な変化を認めなかった. 一方低酸素吸入時の臓器血流量は肝・門脈系で34%減少したのに対し心臓, 脳では各々11%, 22%増加した. 腎血流量には有意な変化を認めなかった. 以上の結果より急性低酸素症時には肝・門脈系, 腎臓の腹部各臓器はその酸素摂取率を増加させることによって, 脳, 心臓は血流量の増加によって臓器レベルの好気性代謝を維持することが示唆された.
著者
山口 佳寿博
出版者
慶應医学会
雑誌
慶應醫學 (ISSN:03685179)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.23-30, 2004-03-25
参考文献数
36

緒論COPDの疾患概念と定義喫煙関運COPDの分子発症機序COPD発症と喫煙感受性規定遺伝子喫煙量規定遺伝子講座