著者
浅野 浩一郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.10, pp.2067-2073, 2018-10-10 (Released:2019-10-10)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

喘息において,気管支平滑筋収縮や気道過敏性の背景に気道炎症が存在するという病態の理解が1990年代以降の喘息治療とその効果を大きく変革した.さらに,2000年代に入ると,吸入ステロイド薬ではコントロールできない重症喘息の病態解明が精力的に行われ,表現型解析,2型自然リンパ球の同定,抗体医薬の臨床応用とそれによる2型免疫応答に対する再評価等が行われ,喘息の病態理解はさらに深まっている.
著者
浅野 浩一郎 山口 佳寿博 河合 章 森 正明 高杉 知明 梅田 啓 川城 丈夫 横山 哲朗
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.2098-2104, 1992-12-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
20

急性低酸素症における臓器レベルの代償機構を検討するため, 麻酔犬に室内気または13%酸素を吸入させ各種血行動態指標および動脈血, 混合静脈血, 頸, 冠, 肝, 腎静脈血の血液ガス諸量を測定した. これらの測定諸量を用いて室内気ならびに低濃度酸素吸入下における生体全体ならびに主要臓器の酸素利用・輸送に関する諸指標を解析した. 低濃度酸素吸入時には生体全体の酸素供給量が減少したが, 酸素摂取率の増加により酸素消費量は有意な変化を示さなかった. 臓器レベルでは低酸素吸入時に酸素摂取率が肝・門脈系臓器で室内気吸入時の1.5倍に, 腎臓で2倍に増加したが, 心臓, 脳では有意な変化を認めなかった. 一方低酸素吸入時の臓器血流量は肝・門脈系で34%減少したのに対し心臓, 脳では各々11%, 22%増加した. 腎血流量には有意な変化を認めなかった. 以上の結果より急性低酸素症時には肝・門脈系, 腎臓の腹部各臓器はその酸素摂取率を増加させることによって, 脳, 心臓は血流量の増加によって臓器レベルの好気性代謝を維持することが示唆された.
著者
浅野 浩一郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.6, pp.1149-1155, 2019-06-10 (Released:2020-06-10)
参考文献数
8

標準的治療でコントロールできない喘息を重症(難治性)と判定する前に,本当に喘息か,正しい薬物療法を行っているか,併存症は適切に管理されているか,増悪因子は同定され排除されているかを確認する必要がある.一方,末梢血好酸球数や呼気NO(nitric oxide)濃度等の2型炎症バイオマーカーが上昇している場合には,アスピリン喘息(aspirin-exacerbated respiratory disease:AERD)や好酸球性副鼻腔炎(eosinophilic chronic rhinosinusitis:ECRS),アレルギー性気管支肺真菌症(allergic bronchopulmonary mycosis:ABPM),好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)等の鑑別が重要である.
著者
加畑 宏樹 浅野 浩一郎
出版者
医学書院
雑誌
呼吸と循環 (ISSN:04523458)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.944-950, 2015-10-15

はじめに 気管支喘息は,慢性的な気道炎症と可逆的な気道狭窄,気道過敏性の亢進を特徴とした呼吸器疾患である.気管支喘息の病態を解明するため,これまでに様々な喘息モデルマウスが作成されてきた.最も頻用される喘息モデルマウスとしては,卵白アルブミン(OVA)を用いた喘息モデルマウスが知られている.このモデルマウスの作成方法は,まずOVAと一緒にアジュバント(免疫反応を増強させる物質)である水酸化アルミニウム(アラム)をマウスの腹腔内に投与することにより,OVAに対する感作を成立させる.そして,この感作が成立したマウスに吸入や点鼻などの方法で気道内にOVAを投与(曝露)すると,好酸球性の気道炎症や気道上皮細胞の杯細胞過形成,気道過敏性の亢進といった喘息様の病態が生じる.この喘息モデルマウスを用いて様々な研究が行われ,喘息の病態にはTh2細胞が重要な役割を担っていることが明らかになった.また,Th2細胞が産生するIL-4やIL-5,IL-13などはTh2サイトカインと呼ばれ,IL-4はB細胞からのIgE抗体の産生,IL-5は好酸球の遊走や生存,IL-13は杯細胞過形成や気道のリモデリングに関与していることなども明らかになった.これらの喘息モデルマウスによって明らかになった知見は,実際に喘息患者の治療に応用され,Th2サイトカインを標的とした抗体治療が重症喘息に対する新しい治療薬として現在開発されている. 一方,喘息の病態は,上記のようにアレルゲンがはっきりしたアトピー型の喘息患者と,アレルゲンがはっきりしない非アトピー型の喘息患者が存在することが古くから知られていたが,非アトピー型喘息の病態はこれまでよく理解されていなかった.しかし,近年,獲得免疫やTh2細胞を介さずに,好酸球性気道炎症や気道過敏性などの喘息様病態を生じる喘息モデルマウスが作成され,そのような病態ではグループ2自然リンパ球(Group 2 innate lymphoid cell;ILC2)がTh2サイトカインの産生源として重要な役割を担っていることが明らかになった. 本稿では,ILC2に関しての概略を解説した後に,喘息モデルマウスにおけるILC2の関与と実際の喘息患者におけるILC2の役割について私見を含めて解説したい.