- 著者
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田中 司朗
山口 拓洋
大橋 靖雄
- 出版者
- 日本公衆衛生学会
- 雑誌
- 日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.1, pp.66-75, 2005 (Released:2014-08-06)
- 参考文献数
- 13
目的 看護系教育課程を持つ大学において疫学・生物統計学の授業を担当している教官の背景,講義・実習内容など疫学・生物統計学教育の実態と,教官の感じている問題点を調査し,教官の背景と,講義内容・感じている問題点に関連があるか検討した。対象と方法 看護系教育課程を持つ大学における疫学・生物統計学教育の実態について,国公立大学62校および私立大学27校(計89校)の疫学・生物統計学の授業を担当している教官を対象に自記式調査票を用いて調査を行い,対象校89校のうち回答の得られた50校61通を本研究の対象とした。結果 疫学・生物統計学を専門としている教官は20%と少なく,疫学・生物統計学に関係した学会の所属割合も低かった。また,教官の感じている問題点として,良い教科書・実習用の教材・問題集がなく,とくに看護に関する実例を挙げた教科書が望まれている事,教官やチューターの人数が不足している事,学生の意欲,数学やパソコン・情報処理の能力が足りない事が挙げられた。講義内容については「統計における基本概念」や「統計解析」のうちの基本的な分野に関しては90%前後の,「疫学における基本概念」や「医学・疫学研究デザイン」については70%前後の大学で講義されている事などがわかった。結論 疫学・生物統計学の授業を担当している教官の専門分野や所属学会などの背景,感じている問題点,講義・実習・卒業論文指導の内容などが明らかになった。疫学・生物統計学を専門としている教官が講義している大学は少なく,工学部・薬学部・理学部数学科などの他学部所属の教官に頼っている事や教科書に対する要望が強い事,学生に学ぶ意欲や数学とパソコン・情報処理の能力が足りないと感じている教官が多い事が示唆された。これらは看護教育における疫学・統計学教育のあり方を考える上で貴重な資料になりうると考えられる。