著者
山口 節郎
出版者
社会・経済システム学会
雑誌
社会・経済システム (ISSN:09135472)
巻号頁・発行日
no.2, pp.7-12, 1984-11-01

The debate between J. Habermas and N. Luhmann on the "program of a theory of society" has stimulated much concern among sociologists because of its intention to grasp the society in its totality against the main trend in sociology to work without society. Some main points of controversy such as "constitution of meaning, " "discourse" and the "unity of theory and practice" are discussed here. It seems that the understanding of "subject" divides the two models of "Gesellschaftstheorie." Luhmann's notion of subject is more convincing and supported by paradigms of contemporary philosophical studies. But once applied to the everyday social life, his system theory seems to bring hopeless heteronomy and powerlessness in individuals confronted with the "world-complexity" and "system rationality."
著者
三島 憲一 徳永 恂 木前 利秋 山口 節郎 細見 和之
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

アドルノの後期思想について、当初は『美の理論』『否定弁証法』などの公刊されている著作から出発して検討を開始した。研究期間中にアドルノの書簡集の一部、また50年代、60年代の講義のノートや速記録の公刊が進み、研究に大いに寄与した。それにより、アドルノの後期においては、<限定否定>の概念がデモクラシーの基本的な思考としてますます重要性を帯びてきたこと、一見エリート的な彼の思想が、実は思想の道具化、イデオロギー化を避ける手段であったことが解明され、今後の社会理論のあり方に重要なヒントとなった。また、主観による認識の構成という点で近代の主観性の哲学の推進者であるように見えるカントが、実は<客観の優位>、<物質性>の重要性を意識していたことを述べ、カントの中に密かに形而上学的救済への夢が宿っていることを指摘するアドルノの議論が、彼にとっていかに重要であるかが、カントについての講義録などからも浮かび上がってきた。また、アドルノとハイデガーの同型性と異形性の問題も論じられた。この点は、現代哲学のあり方を考える上で重要な認識であった。また、後期アドルノにとって、アメリカ時代の権威主義的家族に関わる共同作業が、社会学的思考という点で重要な役割を持ち続けたことも、解明された。
著者
山口 節郎
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.36-53, 1981-12-31 (Released:2010-04-23)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

Aシュッツの「現象学的社会学」は、社会的現実を、それを意味的に構成する諸個人の意識と結びつけて理解する最も確実な方法として、多くの支持者を見出してきている。しかし、一方で、詳しく検討してみると、彼の議論のなかにはいくつかの重大な疑問点が含まれていることがわかる。たとえば、社会的世界の理念型的構成物としての彼の「合理的行為のモデル」という考えは、はたして現象学の基本的視座と両立しうるのかどうか、あるいはそうした行為モデルと人間の自由の問題との関係はどうなるのか、そしてまた、彼のいう「適合性の公準」はそれ自体のなかに矛盾を含んではいないか、等々。こうした問題があらわれてくるのは、彼が社会科学の方法論的基礎を「自然的態度の構成的現象学」に求めようとしたことに原因があるように思われる。本稿では、シュッツの「現象学的社会学」が含むこれらの問題を、彼の主張する科学的構成物の妥当性を保証する三つの公準を中心に、考えてみたい。