著者
岡 真理 宮下 遼 新城 郁夫 山本 薫 藤井 光 石川 清子 岡崎 弘樹 藤元 優子 福田 義昭 久野 量一 鵜戸 聡 田浪 亜央江 細田 和江 鵜飼 哲 細見 和之 阿部 賢一 呉 世宗 鈴木 克己
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

難民や移民など人間の生の経験が地球規模で国境横断的に生起する今日、人間は「祖国」なるものと様々に、痛みに満ちた関係を切り結んでいる。ネイションを所与と見なし、その同一性に収まらぬ者たちを排除する「対テロ戦争パラダイム」が世界を席巻するなか、本研究は、中東を中心に世界の諸地域を専門とする人文学研究者が協働し、文学をはじめとする文化表象における多様な「祖国」表象を通して、人文学的視点から、現代世界において人間が「祖国」をいかなるものとして生き、ネイションや地域を超えて、人間の経験をグローバルに貫く普遍的な課題とは何かを明らかにし、新たな解放の思想を創出するための基盤づくりを目指す。
著者
細見 和之
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.85-93, 2014-08-10 (Released:2019-08-30)

最初に、小学校一年生の生徒が書いた詩、まど・みちおが九十七歳のとき書いた詩、このふたつにそくして「言葉の普遍性」について考察する。つづいて、石原吉郎、金時鐘、永山則夫らの表現について、彼らの作品にとって語りえぬ現実こそが「超越」ではないかと述べる。さらにこのことを、石原のシベリア・エッセイと詩にそくして考察する。一連のシベリア・エッセイよりもそれに先立つ詩篇においてこそ、シベリアの記憶はよく表出されていた、というのが私の考えである。最後に、ベンヤミンの言語論をここでの考察に重ねる。事物の言語‐人間の言語‐神の言葉という三層構造からなるベンヤミンの言語論において、人間の言語は事物の言語を神に報告する位置にある。同様に、語りえぬ現実を表出しようとする言葉は、絶対者に向けてこの世界の出来事を報告しようとする。つまり、現実という超越が絶対者というもうひとつの超越とかすかにふれ合う場、それが言語にほかならない。
著者
細見 和之
出版者
大阪府立大学人間社会学部人間科学科 / 大阪府立大学大学院人間社会学研究科人間科学専攻
雑誌
人間科学 (ISSN:18808387)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.3-19, 2007-03-31

Hannah Arendt und Paul Celan haben, die eine als judische Denkerin, der andere als judischer Dichter, ein schweriges Leben im 20. Jahrhundert gefuhrt, aber sie hatten keinen personlichen Kontakt. Wir fmden in Arendts Texten keine Erwahnungen von Celan und noch in Celans Texten eine von ihr. Wenn wir aber nur den Namen Heidegger dazwischen setzen, so konnen wir die Wichtigkeit ihrer Beziehung leicht erkennen. In dieser vorliegenden Arbeit mochten wir versuchen, einige zwischen Arendt und Celan laufende "Meridiane" zu bestatigen, damit wir das noch umfangreichere Thema uber die Beziehung zwischen Arendt, Heidegger und Celan behandeln konnten. Ein Meridian, auf den wir hier hinweisen, ist die Tatsache, dass beide gesagt haben, was bleibt nach Nazis Zeit, sei die Sprache (Muttersprache). Der andere Meridian ist ihr groBes Intersse an dem russisch-jiidischen Dichter Mandelstam. Der letzte ist die Tatsache, dass sie beide den Erfolg des kunstlichen Satelliten 1957 fur ein "unheimliches Ereignis" gehalten haben.
著者
三島 憲一 徳永 恂 木前 利秋 山口 節郎 細見 和之
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

アドルノの後期思想について、当初は『美の理論』『否定弁証法』などの公刊されている著作から出発して検討を開始した。研究期間中にアドルノの書簡集の一部、また50年代、60年代の講義のノートや速記録の公刊が進み、研究に大いに寄与した。それにより、アドルノの後期においては、<限定否定>の概念がデモクラシーの基本的な思考としてますます重要性を帯びてきたこと、一見エリート的な彼の思想が、実は思想の道具化、イデオロギー化を避ける手段であったことが解明され、今後の社会理論のあり方に重要なヒントとなった。また、主観による認識の構成という点で近代の主観性の哲学の推進者であるように見えるカントが、実は<客観の優位>、<物質性>の重要性を意識していたことを述べ、カントの中に密かに形而上学的救済への夢が宿っていることを指摘するアドルノの議論が、彼にとっていかに重要であるかが、カントについての講義録などからも浮かび上がってきた。また、アドルノとハイデガーの同型性と異形性の問題も論じられた。この点は、現代哲学のあり方を考える上で重要な認識であった。また、後期アドルノにとって、アメリカ時代の権威主義的家族に関わる共同作業が、社会学的思考という点で重要な役割を持ち続けたことも、解明された。
著者
細見 和之
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

イツハク・カツェネルソンがワルシャワ・ゲットーで書いたイディッシュ語作品を読み込むとともに、ワルシャワのユダヤ史研究所、エルサレムのヤド・ヴァシェム、ニューヨークのユダヤ文化研究センター(YIVO)を訪れて関係資料を調査することによって、ゲットー蜂起に象徴される武装による抵抗ではなく、カツェネルソンらの周辺で行われた文化活動を背景としたユダヤ人の精神的な抵抗の意義を確認することができた。
著者
細見 和之
出版者
大阪府立大学
雑誌
人間科学 : 大阪府立大学紀要 (ISSN:18808387)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.3-19, 2006

Hannah Arendt und Paul Celan haben, die eine als judische Denkerin, der andere als judischer Dichter, ein schweriges Leben im 20. Jahrhundert gefuhrt, aber sie hatten keinen personlichen Kontakt. Wir fmden in Arendts Texten keine Erwahnungen von Celan und noch in Celans Texten eine von ihr. Wenn wir aber nur den Namen Heidegger dazwischen setzen, so konnen wir die Wichtigkeit ihrer Beziehung leicht erkennen. In dieser vorliegenden Arbeit mochten wir versuchen, einige zwischen Arendt und Celan laufende "Meridiane" zu bestatigen, damit wir das noch umfangreichere Thema uber die Beziehung zwischen Arendt, Heidegger und Celan behandeln konnten. Ein Meridian, auf den wir hier hinweisen, ist die Tatsache, dass beide gesagt haben, was bleibt nach Nazis Zeit, sei die Sprache (Muttersprache). Der andere Meridian ist ihr groBes Intersse an dem russisch-jiidischen Dichter Mandelstam. Der letzte ist die Tatsache, dass sie beide den Erfolg des kunstlichen Satelliten 1957 fur ein "unheimliches Ereignis" gehalten haben.