- 著者
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柳沢 幸夫
山口 龍彦
林 広樹
高橋 雅紀
- 出版者
- 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
- 雑誌
- 地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.1-2, pp.29-47, 2003-02-28 (Released:2015-01-19)
- 参考文献数
- 26
- 被引用文献数
-
4
7
福島県南部の東棚倉地域に分布する海成の上部中新統の久保田層から,生痕化石Rosseliaの試料を採取して珪藻分析を行い,計数可能な数の珪藻化石を検出した.これにより 従来曖昧であった後期中新世における珪藻化石層序と放散虫・石灰質ナンノ化石・浮遊性有孔虫層序との直接的な対応関係を明らかにできた.久保田層中部の凝灰岩鍵層Kt-1の直上からKt-4BとKt-4Cの中間までの区間と,久保田層上部の基底部は,Yanagisawa and Akiba (1998)のThalassiosira yabei帯(NPD 5C)の上部に相当する. 久保田層における珪藻化石層序と放散虫・石灰質ナンノ化石・浮遊性有孔虫層序との対応関係は,斎藤 (1999) の標準微化石年代尺度とほぼ一致するが,一部問題も残されており今後の検討を必要とする.久保田層中部は,全体としては外部浅海帯の環境にあったものの,3回の相対的海水準の変動があり,3層準に海氾濫面が認められる.このうち凝灰岩鍵層Kt-3の直上にある最初の海氾濫面が最大のものであり,この層準で外洋性珪藻が多産して珪藻深度指標が最大値を示す.久保田層で認められた古水深(相対的海水準)の変化のイベントは,生層序によって栃木県烏山地域の荒川層群上部に対比できる.相対的海水準の変化は,両地域でほぼ同期している.このことは,この相対的海水準の変化がローカルなものではなく,より広域のイベントであり,グローバルな静海水準変動に支配されている可能性もあることを示唆する.