著者
山地 弘起
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.2020-031, 2020 (Released:2020-10-16)
参考文献数
14

今日の大学入試改革は,高校教育および大学教育の改革と一体となって,高大接続を円滑化することを目的としている.そのなかで,大学入試センター試験に代わって2021年度入試から実施される大学入学共通テストでは,マークシート式問題で「思考力・判断力・表現力」を評価する工夫・改善がなされる.本稿では,まず大学入学共通テストのねらいを概観したうえで,「思考力・判断力・表現力」のなかでも明確な定義が難しい思考力に焦点を当て,多肢選択式の共通試験において扱うことのできる思考力とはどのようなものかを吟味した.そして,各科目での論理的思考や批判的思考を支える関連づけの技能に着目し,それらを習得知識とともに活用する問題,あるいは思考の成果としての深い理解を問う問題を工夫することで,思考する力を間接的に評価する方向を示した.
著者
柳浦 猛 日下田 岳史 福島 真司 山地 弘起
出版者
独立行政法人 大学入試センター
雑誌
大学入試研究ジャーナル (ISSN:13482629)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.248-253, 2024 (Released:2024-03-31)
参考文献数
20

本稿は,2016 年度に施行された私立大学の定員管理厳格化政策が,志願者の大学進学にどのような影響をもたらした可能性があったのかを考察する。まず,教育経済学的視点から,当該政策と類似した性質を持つと考えられる海外の高等教育政策として,米国の大学選抜におけるアファーマティブアクションの廃止を取り上げ,両者の政策の類似点について論じる。次に,アファーマティブアクションの廃止がマイノリティ志願者に与えた影響に関する実証研究をもとに,定員管理厳格化政策が都市部に比べ地方部の志願者に対してアンダーマッチングのリスクをより高め,地方と都市部の経済格差の拡大のリスク要因を高めていた可能性を指摘する。
著者
山地 弘起 ヤマジ ヒロキ Hiroki Yamaji
雑誌
研究報告
巻号頁・発行日
no.18, pp.1-68, 2000-12

本在外研究の目的は、バーチャル・ユニバーシティ(以下VU)構築の先進事例を欧米圏に求め、とくにこれまであまり知られていなかった北欧を中心として現状を調査し、日本における高等教育諸施策立案の基礎資料として提供することであった。調査先は、最終的に以下の12事例を選び、2000年夏に関係者のヒアリングを行った。1. Eカレッジ・ドットコム(米国)・・・アプリケーション・サービス・プロバイダ(ASP)として先駆的な実績を持ち、すでに全米175の高等教育機関、5万人以上の学生にサービスを提供している。オンラインのFDプログラムも充実している。2.ナショナル工科大学(米国)・・・企業向け教育機関として、全米の優秀な工学教育をアグリゲートし、国際的に配信している。これまでの16年間の実績を背景に、徐々にウェブ上での教材提供を開始している。3.モンテレー工科大学(メキシコ)・・・衛星とウェブを縦横に活用するVUをすでに運用し、企業向け教育とともに教師教育においても定評がある。北米の主要な大学と提携し、ラテンアメリカに1400ヵ所のダウンリンクサイトを持つ。4.アサバスカ大学(カナダ)・・・北米の遠隔教育の先駆であり、ウェブ上での教育提供に徐々に移行しつつある。学習支援の制度、とくにコンピュータ上のコミュニケーション(CMC)の工夫が行き届いている。5.国立遠隔教育センター(フランス)・・・欧州の遠隔教育の先駆であり、キャンパス・エレクトロニックという完全オンラインでの高等教育提供を開始している。フランス語圏での教材バンクの開発にも関わっている。6.欧州遠隔教育ネットワーク(ハンガリー)・・・英国NPOとしてつくられた、欧州で最も大きな遠隔教育ネットワークであり、公開遠隔学習(ODL)のリサーチや情報提供に関して関連諸団体のハブ的役割を担っている。7.ブダペスト工科経済大学(ハンガリー)・・・中欧圏のなかで最も整備が進んだ遠隔教育センターをもつ。国際共同の教材開発とともに、学内のマルテメデイアFD、学外の企業のICT教育にも携わっている。8.VIRTUE(ノルウェー)・・・米国のメリランド大学システム、スウェーデンのヨーテボリ大学、ノルウェーのベルゲン大学の3大学が、海洋生物学に特化した研究・教育の共同体をつくり、ウェブとTV会議による高等教育を開始している。9.ルント大学(スウェーデン)・・・学内で研究開発されたオーサリングツールのLUVITを中心に、諸種の電子ツールを組み合わせ、独自のVUを立ち上げる段階にある。学生向け、教員向けのICT教育も充実している。10.王立工科大学オンライン(スウェーデン)・・・王立工科大学とストックホルム大学の共同で開始したIT大学の遠隔情報学部が、ICTの企業向け教育を開始している。十分なスタッフイングを背景に、学内授業をもとにしたオンライン教材を制作・配信している。11. ヘルシンキ工科大学(フィンランド)・・・工学分野における欧州最大の生涯学習センターを有し、カスタマイズされた企業向け教育を積極的に開発・提供している。2004年度開始の全国規模のVUの拠点でもある。12.ヘルシンキ大学(フィンランド)・・・継続教育およびメディア教育のいくつかのサポート部局を背景に、ICTの教育工学センターが発足し、3Gモバイル環境等での教授スキルの研究開発を進めて、VU整備の準備を行っている。以上のさまざまなVU構築の方向は、それぞれの大学を取り巻く情報環境基盤や高等教育状況、継続教育の伝統などの社会背景を反映したものである。もちろん、米国等に対する市場防衛・市場開拓の危機感も否めない。いずれにしても高等教育におけるICT活用への必然性が高く認識されている。日本においては、その社会背景がかなり異なることから、欧米圏の経験をそのままに参考にすることはできないが、今後のVU整備のためには、教材制作や配信、学習支援などに関するサポート部局ないしサポート機関の充実、並びに、VUにおける教育活動や学習支援のための基礎研究と学習モデルの明確化、の2点が早急に求められよう。ICTの技術的側面に傾きがちな昨今の議論に対して、実際の教育活動を整備するための議論がより必要であり、個々の機関はそれぞれに示唆に富む事例を提供している。
著者
奥村 博司 畠山 元 山地 弘起 石賀 伸太郎 若月 利之
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.71-80, 2007-03-31

The Nara Campus of Kinki University is located in the satoyama of Yata Hills. There are many terraced paddy fields and farm ponds on the campus that were abandoned in the previous six decades. In this study, the existing circumstances of the paddy fields, farm ponds and the surrounding Satoyama forest were investigated in order to complete basic information. These data will be useful for planning the restoration of the Satoyama.As a benchmark watershed, we selected 15-20 ha watershed for detailed survey on abandoned terraced paddy fields, farm ponds and the Satoyama forest. We established one ha Satoyama plot for detailed survey on vegetation, soil, and water condition. Some results of those were described by means of figures. After this, ecosystem model of the Satoyama should be developed for the planning the restoration of the Satoyama.記事区分:原著