- 著者
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山岸 明子
- 出版者
- 順天堂大学
- 雑誌
- 医療看護研究 (ISSN:13498630)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, no.1, pp.95-101, 2008-03
本研究の目的は,劣悪な環境に長期間置かれて育ってきたにもかかわらず,それにめげずに立ち直った青年について,立ち直りを可能にした外的・内的要因を発達心理学の観点から検討することである。実母から苛酷な虐待を長期間受けながら立ち直ったDave Pelzer氏(「"it"と呼ばれた子」の著者)が書いた5冊の著書を用いて,なぜ彼が立ち直れたのか,何がそれを可能にしたのかについて分析を行った。その結果,まわりからのサポートを得られたこと,本人が心理的強さや肯定的な志向等のresilienceをもっていたこと,そしてサポートや状況要因と本人のもつ逆境に耐えうる資質がうまくかみ合って,マイナス要因を補強しプラス方向に導いたことが示された。また自分の経験を振り返り著書にまとめたり講演をする中で,sense of coherenceをもつようになっていった可能性も示された。更に彼がもつ強さの源はどこにあるのかについても検討を行い,生得的なものもあると同時に虐待を受ける前の幼少期の経験が関連していること,Eriksonの第1,第2段階の発達課題をしっかり達成していたことが強さを培い,その後の劣悪な状況をくぐり抜けさせたことが示唆された。