- 著者
-
山崎 朗
- 出版者
- 経済地理学会
- 雑誌
- 経済地理学年報 (ISSN:00045683)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.4, pp.317-326, 2009-12-30
首都圏においても,人口はまもなく減少に転じる.人口減少,高齢化に対して,どの範囲の地域単位で,いかなる政策主体によって,どのような対応策を検討,実施するのかが問われている.1人当たり県民所得格差を是正する意義は,乏しくなっている.人口減少下において,豊かな生活を維持するための「生活圏」の構築,国際競争力を高めるための広域的な地域での戦略という二面的な対応が求められている.サービス化時代の地域政策への転換が必要である.地域政策の手段をこれまでのように,企業誘致と社会資本整備に限定してはいけない.科学技術政策,大学政策,産業政策,環境政策,医療政策,通信政策,交通政策,税制などを含めて,多様な手段を地域政策として意識的に活用する時代に入ったのである.どの政策を柱とするかは,地域の範囲,地域特性と地域の戦略によって異なる.地域政策の政策主体を地方自治体や国に限定する必要性もない.NPO,NGO,住民組織,あるいは,社会的企業や大企業も地域政策の担い手となる.逆に,廃屋,廃店舗,廃工場などの解体,跡地利用については,行政がより積極的に関与しなければならない.人口密度がきわめて低くなる「低密度居住地域」では,物流機能を地域政策の柱としつつ,インターネットを活用した新しいライフスタイルへとシフトさせることが求められている.長期的な観点からいえば,生活コストの高いエリアから撤退することも選択肢の一つとなる.広域的なエリア(メガ・シティ)における,それぞれの都市,地域,社会資本の機能分担と有機的な連携による,地域全体の競争力強化という視点も,国際化時代の地域政策としてきわめて重要になっている.