著者
鹿児島 崇 山﨑 善隆 坂口 幸治 久保 惠嗣 杉山 広 齊藤 博
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.4, pp.975-977, 2014-04-10 (Released:2015-04-10)
参考文献数
6

ウェステルマン肺吸虫はモクズガニやサワガニを生食することでヒトに感染する.今回,姉妹の感染例を経験した.両名ともプラジカンテルの投与で軽快した.国内で販売されている淡水産のカニの肺吸虫感染率は決して低くなく,加熱なしで淡水産カニを喫食する際には十分な注意が必要と考えられる.また本例はいずれも外国人であり外国人診療においては食習慣の違いによる感染症にも留意する必要があると考えられた.
著者
杉山 広 森嶋 康之 亀岡 洋祐 荒川 京子 川中 正憲
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.927-931, 2004-08-25
被引用文献数
7

関東地方における大平肺吸虫陽性カニの検出は,千葉県内を流れて太平洋に注ぐ河川に限られていた.そこで埼玉県・東京都を流れて東京湾に注ぐ荒川を選び,下流にある東京都の7つの区に12の調査地区を定めて,カニの採集と肺吸虫の検出を試みた.その結果,検査したクロベンケイガニ922匹のうち177匹(19%)から肺吸虫メタセルカリアが検出された.寄生率は葛飾区四ツ木地区が最多(89%)で,陽性カニ1匹当たりのメタセルカリアの平均寄生数(32.9個),および最大寄生数(190個)も最多を示した.メタセルカリアは楕円形を呈するものが大部分で,大きさ(内嚢の外径)は302μm×232μm(50個の平均値),口吸盤背縁に穿棘を,体肉内に赤色顆粒を認めた.試験感染ラットから得た成虫は,卵巣が複雑に分岐し,皮棘は群生していた.このようなメタセルカリアと成虫の形態学的特徴から,虫体を大平肺吸虫と同定した.メタセルカリアを検索材材料として得たリボソームDNA・ITS2領域の塩基配列からも,この結論が支持された.カニからの大平肺吸虫メタセルカリアの検出は,東京都ではこれが初めての報告となる.
著者
山本 詩織 秋元 真一郎 迫井 千晶 山田 研 壁谷 英則 杉山 広 髙井 伸二 前田 健 朝倉 宏
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.77-82, 2022-06-30 (Released:2022-07-07)
参考文献数
24

This study examined the thermal kinetics in wild deer and wild boar meats by low temperature cooking process as well as its bactericidal effect. The thermal processing so as to heat the inner-core of the samples at 65℃ for 15 min, 68℃ for 5 min, 75℃ for 1 min in steam convection oven exhibited faster elevation rate of the internal temperature of wild deer meat than wild boar meat, while their sterilization values after the thermal processes were estimated to be almost equal. Naturally contaminated fecal indicator bacteria were not recovered from all samples after the above-mentioned processing. Spike experiment resulted that approximately 6.6–7.8 log CFU/g of STEC O157 and/or Salmonella spp. were not recovered from the wild deer meats after the three types of thermal cooking. Thus, these data indicated aptitude of these low temperature cooking conditions to minimize the microbiological risks in the game meat.
著者
福田 桂子 杉山 広 熊沢 秀雄 多々良 成紀 金崎 依津子
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.21-24, 2017-03-31 (Released:2017-06-08)
参考文献数
15

高知県立のいち動物公園で飼育されていたマンドリル(Mandrillus sphinx)1頭が死亡し,肺に形成された虫嚢に吸虫の寄生を認めた。成虫と糞便内虫卵の形態および成虫DNAの塩基配列から,虫体は宮崎肺吸虫(Paragonimus miyazakii)と同定された。マンドリルは,飼育施設に侵入したサワガニ(Geothephusa dehaani)を摂食して感染したと考えられた。本事例は,日本においてヒト以外の霊長目が宮崎肺吸虫に自然感染した初めての報告である。
著者
吾妻 健 ウォン Z. ブレーラー D. ロー C.T. イトイ I. ウパタム S. 杉山 広 田口 尚弘 平井 啓久 川中 正憲 波部 重久 平田 瑞城 BLAIR David LO Chin-tson ITHOI Init UPATHAM Suchart WANG Zaihua
出版者
帯広畜産大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

アジアに於ける日本住血吸虫類には、日本住血吸虫、メコン住血吸虫、マレー住血吸虫の3種が知られているが、具体的な相互の類縁関係については、未だ不明である。本研究では、これら3種の系統類縁関係を調べるため、1)ミトコンドリアDNAの塩基配列、2)染色体のC-バンドパターン、3)中間宿主貝の核型、4)中間宿主貝の感受性、5)終宿主の感受性、及び6)終宿主における肉芽腫形成反応、について分析実験を行なった。1)ミトコンドリアDNAの塩基配列:本研究ではチトクロームCオキシダーゼサブユニットI(COI)領域のPCR増幅を試みた。各サンプルはTEバッファーでホモジナイズし、フェノール/クロロフォルムで2回、クロロフォルムで1回、処理した後、エタノール沈殿により、DNAを回収した。回収したDNAはテンプレートとして、PCRを行なった。プライマーは、5'- TTT TTT GGG CAT CCT GAG GTT T -3'及び5'- TAA AGA AAG AAC ATA ATG AAA AT -3'である。PCRの条件は、95℃ 1分、50℃ 1分、72℃ 3分、30サイクルである。得られた増幅断片はTAベクターにクローニングして、ABIのオートシーケンサー(373A)を用いて塩基配列を調べた。ホモロジー検索及び系統樹作成はClustalV(近隣接合法)とPaup(最大節約法)を用いて行なった。その結果、2つの異なる方法とも同じ結論に達した。即ちマレー住血吸虫は日本住血吸虫よりは、メコン住血吸虫に近く、メコン住血吸虫とクラスターを形成することが分かった。比較のために用いたアフリカ産のマンソン住血吸虫とビルハルツ住血吸虫は一つのクラスターを形成し、アジア産の日本住血吸虫類から隔たっていることが分かった。2)染色体のC-バンドパターン:日本住血吸虫、メコン住血吸虫、マレー住血吸虫のC-バンド分析を行ったところ、日本産の日本住血吸虫では、W染色体長腕のC-バンド内だけに真性染色体質の挿入が認められたが、メコン住血吸虫及びマレー住血吸虫では、両腕のC-バンド内に真性染色体質の挿入が認められた。さらにC-バンドの量はメコン住血吸虫及びマレー住血吸虫において日本住血吸虫より増加していることが観察された。このことから、メコン住血吸虫とマレー住血吸虫がより近縁であると推定され、ミトコンドリアDNAの結果と一致した。3)中間の宿主貝の核型と感受性:これは、宿主-寄生虫関係の進化と寄生虫自身の種分化との関係を明らかにするために行われた。まず、宿主貝の染色体について核型分析を行ったところ、a)マレー住血吸虫の第一中間宿主貝Robertsiella gismaniでは2n=34で性染色体はXY型であるが、Y染色体は、点状であること、b)メコン住血吸虫の第一中間宿主貝Neotricula apertaでは2n=34であるが、Y染色体は存在せずXO型であること、c)日本住血吸虫の第一中間宿主貝Oncomelania nosophora(ミヤイリガイ)では、2n=34で、性染色体はまだ未分化であること、等が明らかになった。4)中間宿主貝への感受性:日本産の日本住血吸虫とマレー住血吸虫をOncomelania nosophora(ミヤイリガイ)、O.minima(ナタネミズツボ)、Bythinella nipponica(ミジンニナ)の3種の貝に感染させたところ、両住血吸虫ともOncomelania nosophora(ミヤイリガイ)に感染し、セルカリアまで発育することが明らかとなった。4)終宿主の感受性:メコン住血吸虫及びマレー住血吸虫のセルカリアをマウス(ddY)、ハムスター(シリアン)、スナネズミ(MGS)の3種の終宿主への感染実験を行なったところ、すべてにおいて感染が成立することが分かった。15EA07:終宿主における肉芽腫形成反応:日本住血吸虫、メコン住血吸虫、マレー住血吸虫のセルカリアをマウスとラットに感染させ、肉芽腫形成反応の程度を比較した。まず、マウスでは3種住血吸虫とも著明な細胞反応を示したが、3種に差は認められなかった。しかし、ラットでは各々異なる程度の反応を認めた。即ち、肉芽腫形成反応はメコン住血吸虫で最も弱く、マレー住血吸虫で、最も強い反応を示した。一方、肝内虫体に対する細胞反応は虫卵に対する反応と逆にメコン住血吸虫で最も強く、マレー住血吸虫で、最も弱い反応を示した。このことから、宿主細胞の認識は虫体と虫卵で大きく異なることが分かった。
著者
杉山 広
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.285-291, 2010-12-25 (Released:2011-01-07)
参考文献数
32
被引用文献数
1 2
著者
杉山 広
出版者
[日本食品衛生学会]
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.285-291, 2010 (Released:2012-12-03)
著者
杉山 広 森嶋 康之 賀川 千里 荒木 潤 巖城 隆 小松 謙之 味口 裕仁 生野 博 川上 泰 朝倉 宏
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.103-108, 2020-08-25 (Released:2020-10-02)
参考文献数
20
被引用文献数
2

回虫は土壌伝播蠕虫の代表となる寄生虫で,ヒトは虫卵に汚染された植物性食品を摂食して感染する.日本では少数の国内感染症例が継続的に報告されているが,症例数の推移や感染源となる植物性食品の汚染状況は不明な点が多い.そこで,近年の回虫症例発生状況および感染源を明らかにするため,日本臨床寄生虫学会誌,PubMedおよび医中誌Webを用いた文献検索,および臨床検査機関・食品検査機関を対象としたアンケートによる聞き取り調査を行った.文献検索の結果では,1990より2018年の29年間に計193例の回虫症例が確認された(年平均6.7例).しかし2002年以降の報告数は激減し,年平均1.3例にとどまった.臨床検体における回虫症例数も,2000から2008年の年平均19.7例が,2009年以降2.8例と激減した.回虫の感染源となる植物性食品は12,304検体が検査されたが,アニサキス類の幼虫が検出された(11例)ものの,回虫は検出されなかった.ただしキムチは,173検体中の1検体から虫卵が検出され,回虫の感染源であることが疑われた.回虫症例は減少傾向が明らかだが,いまだに発生は確認され,このために感染源を特定して予防対策を確立するために,食品の調査を今後も継続する必要があると考えられた.
著者
杉山広
雑誌
Clin. Parasitol.
巻号頁・発行日
vol.23, pp.57-59, 2012
被引用文献数
1
著者
多々良 成紀 杉山 広 熊沢 秀雄 斑目 広郎
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.45-47, 2010-03
参考文献数
15

高知県の動物園で飼育されていたミーアキャット(Suricata suricatta)の1例について,左肺の虫嚢から2隻の吸虫が認められ,その虫体と卵の形態学的特徴およびDNA分析から宮崎肺吸虫(Paragonimus miyazakii)と同定された。ミーアキャットの飼育区画に侵入した野生サワガニ(Geothelphusa dehaani)を摂食し感染したと考えられた。本例は,輸入動物であるミーアキャットが動物園飼育下で宮崎肺吸虫に自然感染した初めての報告である。
著者
杉山 広 熊澤 秀雄
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

南米エクアドルで住民を対象に肝吸虫の調査を実施して、太平洋側の3県にAmphimerus属肝吸虫の流行地を見いだした。淡水魚を20種類以上検査して、Guabinaという魚がメタセルカリアの寄生数が多く、感染源として最も重要であることを明らかにした。メタセルカリアの種同定には、患者由来の成虫を用いて解読した遺伝子配列が、マーカーとして役立った。肺吸虫に関しては、エクアドルでの過去の研究成果を紐解き、総説論文をまとめた。陽性地区の淡水産カニから幼虫を分離し、実験ネコへの感染試験で成虫を回収、本虫(メキシコ肺吸虫)の形態と遺伝子に関する知見も得た。