著者
山本 さつき 井上 宏
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.282-291, 2003-04-10
参考文献数
25
被引用文献数
5 2

目的: 咬合障害とストレス反応の関連を明らかにするために咬合障害を与えたラットの前頭皮質ドーパミン放出量を測定した. 咬合障害を付与した状態での摂食時ドーパミン放出量の増加は不安を含めた精神医学的なストレス反応に関与しているという仮説を検証するために, 抗不安作用のあるベンゾジアゼピン系薬物ジアゼパムの影響を調べた.<BR>方法: 前頭皮質中のドーパミン放出量の測定はマイクロダイアリシス法を用いて行った. 各実験において対照群と咬合障害群の2群に分け, おのおのをn=6とした. ドーパミン放出量の測定は摂食180分後まで行った. 実験1固形飼料を摂食させ, ドーパミン放出量の経時的変化を測定した. 実験2摂食前にジアゼパムを投与し, その後のドーパミン放出量の経時的変化を測定した. 実験3摂食前に生理食塩水を投与し, その後のドーパミン放出量の経時的変化を測定した.<BR>結果: 実験1咬合障害群は摂食後ドーパミン放出量に有意な増加を認めた.実験2咬合障害群と対照群でドーパミン放出量に有意差は認められなかった. 実験3咬合障害群は摂食後, ドーパミン放出量に有意な増加を認めた.<BR>結論: 咬合障害を付与したラットの摂食時前頭皮質ドーパミン放出は増大し, その反応はジアゼパムにより抑制されることが統計学的に証明された. 本研究により, 咬合障害は不安を含めた精神医学的ストレスを惹起することが明らかにされた.
著者
山本 さつき 鈴木 馨 松浦 友紀子 伊吾田 宏正 日野 貴文 高橋 裕史 東谷 宗光 池田 敬 吉田 剛司 鈴木 正嗣 梶 光一
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.321-329, 2013 (Released:2014-01-31)
参考文献数
35

銃器捕殺の勢子による追い込み狙撃法(n=4),大型囲いワナ(銃)(n=6),出会いがしらに狙撃するストーキング(n=9),シャープシューティング(n=14),および麻酔薬を用いた不動化捕獲の移動式囲いワナのアルパインキャプチャー(n=14),大型囲いワナ(麻)(n=8),待ち伏せ狙撃するフリーレンジ(n=10)を用いてニホンジカ(Cervus nippon)を捕獲した.肉体的ストレスの指標として測定したクレアチンキナーゼは,追い込み狙撃法(2,057±1,178 IU/L)がシャープシューティング以外の全ての捕獲方法より,また交感神経興奮の影響を反映するアドレナリン,ノルアドレナリンは,追い込み狙撃法(アドレナリン:16.500±4.655 ng/ml,ノルアドレナリン:20.375±8.097 ng/ml)が他の全ての捕獲方法より有意に高かった(P<0.05).精神的ストレスの指標として測定したコルチゾルは,囲いワナ(アルパインキャプチャー:2.63±1.90 mg/dl),大型囲いワナ(銃:1.38±0.50 mg/dl)および大型囲いワナ(麻:3.10±1.79 mg/dl)が他の捕獲方法より高い傾向が見られたが,これらは全てGaspar-Lópezほか(2010)により報告されたアカシカ(Cervus elaphus)の正常変動範囲内(1.30~6.49 mg/dl)であった.以上の結果から,追い込み狙撃法は身体的負荷が大きいこと,囲いワナは他の方法に比較して著しいストレス反応を伴う捕獲方法ではないことが明らかになった.よって,大量捕獲が可能な囲いワナで生息密度を低下させることは,アニマルウェルフェアに配慮した適切な個体数管理の手法になりうると考えられた.