著者
山本 佳世子
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.99-123, 2016 (Released:2017-07-03)

「非宗教者」によるスピリチュアルケアの営みを支えるビリーフを検討するために、臨床現場から逃げずに、ケア対象者の「今」を無条件に受け入れるという営みにおける「祈り」について考察する。その際に、「信仰に基づかない祈り」に言及した論考として、小説家の大江健三郎と写真家の藤原新也の論考を検討する。そこから見えてくるのは、自身の限界が身に沁みるとき、私たちは所詮「なんでもない人」なんだと覚悟を決め、開き直ることで受け入れる祈りであった。それは「それでも世界は続いていく」という確信のもと、「なんでもない人」である私が、「なんでもない人」であるあなたを受け入れたいと、「なんでもない人」として死んでいった小さな存在・無名の存在を愛おしみ、慈しむ「祈り」である。このような確信と行為は、日本独自の無常観と、愛おしみ慈しむことで死者を賦活させ、交流する先祖供養に基づく死生観に支えられている。
著者
山本 佳世子 亀山 秀雄
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1_42-1_55, 2010 (Released:2011-02-04)
参考文献数
32

産学官連携における関係者は新聞の情報コミュニケーションによって相互理解を深められる面がある.本研究では産業専門新聞のひとつである日刊工業新聞を採り上げ,2003-2008年の産学官連携の記事分析を行った.日刊工業新聞の大学・産学連携面を中心とする1761件の記事データベースを作成し,テーマや主体によって6年間の記事数増減の傾向に違いがあることを確かめた.明確な記事数の増加は国の施策ではなく,国の方針を念頭においた連載記事の掲載が主因だった.また重点施策でも専門性が高い内容では専門記者の寄与が欠かせないこと,国の支援が縮小に転じても,専門紙・専門記者のポリシーに基づく情報発信の継続がみられることを明らかにした.
著者
山本 佳世子 葛西 賢太 打本 弘祐
出版者
学校法人天理よろづ相談所学園 天理医療大学
雑誌
天理医療大学紀要 (ISSN:21876126)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.13-23, 2021-03-31 (Released:2021-08-16)
参考文献数
27

日本では終末期医療を中心に,スピリチュアルケアの議論と実践の蓄積がされてきたが,それは宗教的ケアとは切り離した形で進められてきた。では,非信者に対して宗教者による宗教的ケアは不要なのか。本稿では,宗教系病院における死亡した非信者患者及びその家族へのケアの一端を明らかにし,病院における宗教者による非信者患者や家族へのケアの意義や可能性,さらには「無宗教」と言われる日本人の死生観や宗教性の一端について示唆を得る。 天理よろづ相談所病院,キリスト教系病院A及びB,あそかビハーラ病院で活動する宗教者計23名に対し半構造化面接を行った。非信者患者の死後の「死者へのケア」としては,天理よろづ相談所病院およびあそかビハーラ病院では宗教者によるお見送りが,キリスト教系病院A・Bでは希望に応じたチャプレンによる葬儀の司式が行われていた。また,その家族へのケアとしては,キリスト教系病院Aでは月1回の遺族の分かち合いの会が,キリスト教系病院Bでは遺族カウンセリングが行われており,あそかビハーラ病院には院内の仏堂への遺族によるお参りの例があった。 これらの実践からは,「無宗教」を自認する多くの日本人とって,死後の世界や故人の魂につながるために必要な存在が「宗教」ではなく「宗教者」であることが示唆される。これまで地域コミュニティにおいてなされてきた宗教者による「死者へのケア」及び悲嘆者である遺族が「死者へのケア」をできるように宗教者が関わる「『悲嘆者の死者へのケア』をケアすること」が,病院付き宗教者に新たに求められるようになっていることが明らかになった。
著者
井上 美佳 山本 佳世子
出版者
日本社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会全国大会研究発表論文集 日本社会情報学会 第26回全国大会
巻号頁・発行日
pp.345-350, 2011 (Released:2012-03-20)

The allocation of transportation and tourist facilities such as tourist information has been positioned as important measures in urban planning to promote urban tourism. Thus, this study aims to propose the method to evaluate the placements of the above-mentioned tourist-related public facilities in sightseeing spots using GIS (Geographic Information Systems) and GA (Genetic Algorism). Based on the evaluation results, we propose the appropriate allocation of tourist-related public facilities to raise the efficiency of tourists' excursion behavior in sightseeing spots. As for the method, we show the originality in the point that we reflect GA which responses the issue of combination optimization to placement theory into the torists' excursion behavior. Moreover, it is possible to evaluate conformity degree numerically and visually, by the advantages of GA that derives the solutions inductively and reflects neighboring influence sufficiently and GIS that produce the positional information concerning tourist-related public facilities and integrate various kinds of data into digital maps.
著者
吉次 なぎ 阿部 真也 山本 佳世子
雑誌
第80回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.1, pp.425-426, 2018-03-13

日本における自然災害の多さや昨今の国際情勢を鑑みるに, 避難経路の導出に適した手法の開発が必要である. しかし, 避難者が経路長や安全性を考慮して最適な避難先と避難経路を直感的に判断することは難しい. さらに, 非常時には避難場所や避難経路の環境が時々刻々と変化するため, 複数の避難先と避難経路を優先度付きで求める必要がある. 既存の経路探索アルゴリズムは始点と終点を結ぶ最短経路を導くが, 粘菌アルゴリズムは始点と終点を複数設定できる点, 複数の経路を同時に計算できる点で, 前者より優れている. 我々は, 地理情報システム(GIS)を用いて地理データを加工し, 粘菌アルゴリズムを用いた避難経路の導出手法を開発した.
著者
吉次 なぎ 阿部 真也 山本 佳世子
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.2325-2329, 2019-12-15

一般に避難先や避難経路の候補は複数存在し,最適な避難先と避難経路を直感的に導くことは難しい.「安全で迅速な避難」のためには,複数の避難先への複数の避難経路を求め,それらの優先度を比較することが必要である.経路探索アルゴリズムは単一の始点と終点を結ぶ単一の経路を求めるため,複数の避難場所へ向かう複数の避難経路の優先度を定量的に求めることはできない.粘菌アルゴリズムでは始点と終点を複数設定すること,複数の避難経路の優先度を同時に計算することができる.そこで本稿では,粘菌アルゴリズムによる避難経路導出手法を提案する.提案手法により複数の避難先への複数の避難経路の優先度を定量的に比較できることが確かめられた.