著者
山本 隆一
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.85-93, 2016

我が国は医療の情報化自体は先進的であったし,現在でも情報システムの導入率という観点では世界の最高水準にある。しかし,情報化の目的は,事務処理の合理化が主体であり,情報を公益目的に利用する二次利用の面においては遅れていたと言わざるを得ない。しかし最近になって,我が国にも大規模な医療情報データベースが構築されるようになったが,それに伴い,公益利用とプライバシー保護の対立的な問題が顕在化してきた。例えば高齢者の医療確保に関する法律に基づいて作成されたレセプトおよび特定健診・保健指導のデータベースは一般的な公益利用に関して根拠法には記載がないために,利用に際して厳格な匿名化が求められ,安全管理に関する要求も厳しく,公益研究にとって使いやすいデータベースとは言えない。一般に,公益目的の研究を行う研究者がプライバシーの侵害を意図的に行う可能性はないと考えられるが,法的な要求自体が曖昧であるために,研究が促進されない可能性もある。医学は診療情報の公益利用なしには発展はあり得ないので,明確で研究者にとっても患者にとってもわかりやすい法制度の整備が強く望まれる。改正個人情報保護法が2015年9月に成立したが,政令や指針の整備は2017年と思われる法の実施までに議論される。医療に関するデータベース研究者はこれの議論を注視すべきであるし,必要な場合は適切な提言を行うべきと考えられる。
著者
松浦 桂 山本 隆一郎 野村 忍
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究 (ISSN:03861856)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.17-22, 2009-04-25

本研究では,ストレスークリーナー(SC-SX:株式会社テクノスジャパン製)の心理・身体的リラクセーション効果を検証した.対象者は44名(男性20名,女性24名,平均年齢34.14歳,SD=11.58歳)であった.対象者は,SC-SXの音楽付映像AおよびBを順に視聴した.心理指標の測定には,対象者の気分状態が用いられた.気分状態の測定には,Profile of Mood State短縮版(POMS:横山,2005)を用い,映像視聴前(T1)・A視聴後(T2)・B視聴後(T3)の3時点で回答するよう教示された.POMSは,緊張-不安(Tension-Anxiety:T-A),抑うつ-落ち込み(Depression-Dejection:D),怒り-敵意(Anger-Hostility:A-H),活気(Vigor:V),疲労(Fatigue:F),混乱(Confusion:C)の6つの下位尺度から構成され,総合的な気分状態(Total Mood Disturbance:TMD)は,Vを除く全ての下位尺度を合計した点数からV得点を減じて算出された.生理指標の測定には生体信号(筋電位)が用いられた.生体信号は,周波数解析(FFT)を行われた後,2Hz〜40Hzのパワー値が3時点について記録された.記録された生体信号は,全て積算され,平均を求めたものがPCの画面上へ100指数で表された(以下,NB値:Numerical of biological signal).統計解析には,映像視聴時期を独立変数,POMSの各下位尺度得点平均値・総合得点(TMD)平均値・NB値平均値を従属変数とする1要因3水準の反復測定分散分析を用いられた.全ての下位尺度,TMD,NB値において,映像視聴時期の主効果が確認されたT-A,A-H,F,C,TMD:p<.001,V:p<.01,D:p<.05,NB:p<.10).単純主効果(Bonferoni法)の検討を行った結果,T1-T2において,全ての下位尺度およびTMDの有意な低減が確認された(ps<.05).T1-T3においては,D以外の全ての下位尺度およびTMDの有意な低減が確認された(ps<.01),また,T2-T3においては,T-AおよびNB値に有意な低減が認められた(緊張-不安:p<.01,NB:p<.10).以上の結果から,SC-SXの心理・身体的リラクセーション効果が確認された.
著者
田中 勝弥 山本 隆一 渡辺 宏樹 星本 弘之 土屋 文人 秋山 昌範 大江 和彦
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.183-194, 2010 (Released:2015-02-20)
参考文献数
10

本稿では,地域医療連携を促進すべく,PKIを使用した診療情報交換のためのシステムを開発したので報告する.開発したセンター中継方式の送受信システムを使用して,医療機関等の間で暗号化された診療情報をS/MIME形式でやりとりすることとし,受信先機関のみが対象情報を復号可能な機構を持たせた.診療情報の暗号化に必要な公開鍵は,医療機関を対象とした組織向け公開鍵ディレクトリを開発しこれを利用した.さらに,救急診療向けの患者基礎情報を対象として本システムを活用すべく,一定期間の蓄積可能な機能を構築した.いずれの場合も,伝送システムでの診療情報の授受や蓄積は患者の同意を得て行われなければならず,患者自らが中継システム上の自身の診療情報の登録状態を直接参照し,制御する機能も持たせた.特にPKIをベースとした広域での医療機関間の情報連携を促進するためには,本研究で開発した公開鍵ディレクトリが有用であると考える.
著者
倉田 征児 植田 茂紀 野田 俊治 山本 隆一 角屋 好邦 中野 隆 田中 良典 馬越 龍太郎
出版者
大同特殊鋼株式会社
雑誌
電気製鋼 (ISSN:00118389)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.239-244, 2008-08-25 (Released:2008-12-26)
参考文献数
7

Advanced 700 ℃ class steam turbines require using Ni-based superalloys instead of conventional ferritic 12Cr steel which is insufficient in creep strength and oxidation resistance above 650 ℃. The superalloys, however, possess quite higher coefficient of thermal expansion (CTE) than the 12Cr steel. So far authors examined the influence of alloying elements on CTE and the high temperature strength of the Ni-based superalloys. Consequently “LTES700R” was developed for steam turbine, which has low CTE and sufficient creep strength. LTES700R is corrected Mo amount to inhibit the Laves phase and added W to reduce CTE instead of Mo within the range that alfa-tungsten does not precipitate. In addition, Al and Ti, which form gamma-prime, were increased to make up for deteriorating of the strength by Laves phase free. The creep rapture strength of LTES700R manufactured by laboratory forging is higher than that of advanced 12Cr steel owing to be strengthened by gamma-prime [Ni3(Al, Ti)] phase precipitates. The CTE of LTES700R is lower than that of Refractaloy 26®, and slightly higher than that of 12Cr steel. The phase of LTES700R is stable until 5000 hr heating from 550 ℃ to 750 ℃.
著者
上山 且芳 深田 康人 山本 隆一 辰巳 光正 坂下 積 杉野 和男 鈴木 理三郎 大原 宗行
出版者
一般社団法人 溶接学会
雑誌
溶接学会論文集 (ISSN:02884771)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.87-94, 2003 (Released:2004-06-30)
参考文献数
23

Thermite welding is widely used in the world. In the Japan railway company group, the application ratio of this method is approximately 40 % every year. The reasons why the thermite welding method is widely used are that the equipment has good mobility and the total working time of that is shorter than that of the enclosed arc welding method on site. Moreover, the operating skill, which is required for thermite welding, is less than that for enclosed arc welding. This welding method used now was introduced into Japan from Germany in 1979. After that, the thermite welding technique has been improved and developed. A wide gap method is one of newly proposed thermite welding in Japan. The root gap of this method is three times for that of conventional method. Therefore, it is feared that welds produced by wide gap method have less fatigue strength than those by conventional method. Because a welding heat input of wide gap method is much larger than that of conventional method. In this investigation, a new process with rail head air cooling for wide gap thermite welding is proposed in order to improve fatigue strength of thermite welded joint on rails.