著者
巖城 隆 佐田 直也 長谷川 英男 松尾 加代子 中野 隆文 古島 拓哉
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.129-134, 2020-12-24 (Released:2021-02-24)
参考文献数
25
被引用文献数
1 2

2011年から2019年に西日本各地で捕獲された4種のヘビ類(シマヘビ,アオダイショウ,ヤマカガシ,ニホンマムシ)の口腔から吸虫を採取した。これらは形態観察と分子遺伝子解析によりOchetosoma kansenseと同定した。この種は北アメリカのヘビ類への寄生が以前から知られているが,日本に生息するヘビ類での確認は初であり,今回の結果は新宿主・新分布報告となる。
著者
中野 隆文
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.2-10, 2013-02-28 (Released:2018-03-30)
参考文献数
39

Macrophagous leeches consist of two families of the suborder Hirudiniformes: viz., Americobdellidae and Cylicobdellidae; and all four families of the suborder Erpobdelliformes: viz., Orobdellidae, Gastrostomobdellidae, Erpobdellidae, and Salifidae. Among those six families, all species of Americobdellidae, Cylicobdellidae, Orobdellidae, and Gastrostomobdellidae are terrestrial and feed on terrestrial oligochaetes (earthworms). Orobdellid and gastrostomobdellid leeches were formerly included among the Hirudiniformes on account of their euthylaematous pharynx; however, recent molecular phylogenetic study has shown that these two families belong to the Erpobdelliformes. The most common recent ancestor of this suborder may have had a euthylaematous pharynx, and if so, strepsilaematous pharynx is an apomorphic character within Erpobdelliformes. The species of Orobdellidae and Gastrostomobdellidae possess a muscular gastroporal duct, the morphology of which has recently been shown to differ between the two families. In addition, three kinds of orobdellid-type ducts can be recognized: 1) bulbous; 2) tubular; and 3) rudimentary. To provide a framework for reviewing recent progress in evolutionary studies on terrestrial macrophagous leeches, the classification and phylogeny of the infraclass Hirudinida is briefly outlined.
著者
中野 隆文
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.19-29, 2017 (Released:2018-04-27)

陸棲捕食性ヒル類の分類群であるクガビル属について,その分類形質と分類学史を概説した.更にクガビル属既知 17 種の各種について, 判別形質や命名法に係る項目について紹介すると共に,全 17 種のための検索図を示した.
著者
日置 佳之 須田 真一 百瀬 浩 田中 隆 松林 健一 裏戸 秀幸 中野 隆雄 宮畑 貴之 大澤 浩一
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.43-89, 2000-08-10 (Released:2018-02-09)
参考文献数
97
被引用文献数
3

東京都練馬区にある東京都立石神井公園周辺の1930〜40年代と1980〜90年代における生物相を50余点の文献から明らかにした.また,同地のランドスケープを地図と空中写真を用いて縮尺1/2,500で図化した.2つの年代間で生物相の比較を行ったところ,すべての分類群で種の多様性が顕著に低下していることが明らかになった.また,ランドスケープの変化を地理情報システムによって分析した結果,樹林地は比較的高い率で残存していたものの,草地,湿地は大きく減少し,水路などの流水域と湧水はほぼ完全に消失していた.開放水面の面積は微増し,市街地は大幅に増加していた.同地域における種多様性の変化要因を明らかにするためにギルド別の種数変化と生育(息)地の規模変化の関係を求めた結果,種数の変化は生育(息)地の規模変化に対応していることが認められた.また,ギルドによって,生育(息)地の分断化に対する抵抗性に差異が認められた.研究の結果,地域において種多様性を保全するためには,生育(息)地として機能するランドスケープ要素(生態系)の多様性を確保することが不可欠であることが示唆された.
著者
佐藤 好恵 藤井 徹也 佐伯 香織 新實 夕香理 篠田 貢一 小澤 由紀 中野 隆
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.91-96, 2009-06-05 (Released:2016-08-25)
参考文献数
13
被引用文献数
1

殿部筋肉内注射部位である 「四分三分法の点」 および 「クラークの点」 における上殿動脈 ・ 静脈, 上殿神経損傷の危険性について, 実習用遺体 29 体 53 側を対象に形態学的検討を行った. 「四分三分法の点」 は, 皮下組織の直下に大殿筋が分布していた例, および大殿筋の上外側縁部に近接していた例が 24 側 (45. 3%) で認められた. また, この 24 側のうち, 注射針を中殿筋表層まで刺入した場合, 中殿筋表層を走行する上殿動脈 ・ 静脈に近接する例が 10 側 (41. 7%) でみられた. さらに, 「四分三分法の点」 では中殿筋深層まで注射針を刺入した場合, 中殿筋深層を走行する上殿動脈 ・ 静脈, 上殿神経への近接例が 40 側 (76. 9%) でみられ, 「クラークの点」 に比べて 1. 7 倍多かったことから, 神経 ・ 血管損傷の危険性が二重に高いことが示唆された. よって, 大殿筋を貫通する頻度の少ない 「クラークの点」 が, より神経 ・ 血管への注射針刺入の危険性が低い安全な注射部位であることが考えられた.
著者
中野 隆文
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.7-18, 2010-08-20 (Released:2018-03-30)
参考文献数
30

Leeches (subclass Hirudinida) are very famous as blood-suckers. But taxonomic studies of leeches in Japan have been scarcely advanced after Dr. Asajiro Oka's death. In addition, Japanese morphological terms of leeches have been also confused for a long time. Therefore, this paper clarifies their Japanese morphological terms with briefly reviewing their morphology for the purpose of improving the taxonomic studies of leeches in Japan. Leeches possess two suckers and 34 somites with subdivided annuli. They have eyes and an anus on dorsal, and a male and female gonopore on ventral. Their internal morphology, such as digestive system or reproductive system, is as important as their external morphology for the taxonomy of leeches. Haematophagous species have crop and intestinal ceca for storing and digesting blood. In contrast, macrophagous taxa, like Erpobdelliformes, have simple tubular digestive system. They have the male and female reproductive system located ventral to the digestive system. Each Japanese term is connected with English equivalents and illustrations in this paper in order to prevent further confusion of the Japanese morphological terms.
著者
中野 隆文
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.54-66, 2013-02-28 (Released:2018-03-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1

An amendment to the International Code of Zoological Nomenclature was passed on 4th Sept 2012 that formally establishes ZooBank as the online version of the Official Register of Zoological Nomenclature, and allows valid publication of new nomenclatural acts in electronic-only journals as well as electronic-first works. The amendment requires electronic-only, and electronic-first works to be registered in ZooBank, and to include the registration number ('ZooBank LSID') in the publication. Although registration of the names and nomenclatural acts themselves is not yet required for their availability, the amendment encourages authors to register all new names and nomenclatural acts, whether they are introduced in e-only publications or in standard paper publications as well as publications, names and acts that have been previously published. This paper provides a practical instruction manual in Japanese to assist taxonomists to register their work in ZooBank based on its new version 3.1.
著者
佐藤 好恵 成田 伸 中野 隆
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1_45-1_52, 2005-04-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
19

殿部筋肉内注射実施時の安全性について検討するため,代表的な殿部筋肉内注射部位である「四分三分法の点」および「クラークの点」において,実習用遺体18体33側の皮脂厚および筋の構造,各点と上殿神経との解剖学的位置関係について調べた。また,健康な成人女性32名(20~55歳)64側の殿部について皮脂厚を計測した。「四分三分法の点」では「クラークの点」よりも皮脂厚が有意に厚く(p<0.001),そして12側に皮脂の直下に大殿筋が分布していた。中殿筋の厚みは「クラークの点」(2.1±0.8㎝)の方が「四分三分法の点」(1.7±0.7㎝)より厚かった(p<0.01)。また「四分三分法の点」では,注射針を直角に小殿筋表層まで刺入した時,上殿神経への刺入が10側(30.3%)あった。このことから,「クラークの点」の方が,「四分三分法の点」よりも中殿筋に安全に注射針を刺入できると考えられた。
著者
山本 昌樹 林 省吾 鈴木 雅人 木全 健太郎 浅本 憲 中野 隆
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100444, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに】上腕筋は,上腕骨前面下半部に単一の筋頭を有するとされるが,Gray’s Anatomy(2005)においては「2 〜3 部からなる変異が見られる」と記載されている.一方,Leonello et al.(2007)は,「上腕筋は,全例において浅頭と深頭の2 頭を有する」と報告している.我々は,第16 回臨床解剖研究会(2012)において,上腕筋が3 頭から構成されることを明らかにするとともに,肘関節屈曲拘縮との関連について報告した.今回,これら3 頭の形態的特徴と機能について考察する.【対象および方法】愛知医科大学医学部において,研究用に供された解剖実習体15 体24 肢を対象とした.上肢を剥皮後,上腕二頭筋,腕橈骨筋,長・短橈側手根伸筋を展開した.上腕筋を起始部より分離して筋頭を同定し,筋頭の走行や配列を詳細に観察した.【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,死体解剖保存法に基づいて実施し,生前に本人の同意により篤志献体団体に入会し研究・教育に供された解剖実習体を使用した.観察は,愛知医科大学医学部解剖学講座教授の指導の下に行った.【結果】全肢において,上腕筋は,三角筋後部線維から連続する筋頭(以下,外側頭),三角筋の前方の集合腱から連続する筋頭(以下,中間頭),上腕骨前面から起始する筋頭(以下,内側頭)に区分することができた.外側頭は,上腕骨の近位外側から遠位中央に向かって斜めに,かつ,浅層を走行して腱になり,尺骨粗面の遠位部に停止していた.中間頭は,最も薄く細い筋束であり,内側頭の浅層を外側頭と平行して走行し,遠位部は内側頭に合流していた.内側頭は,最も深層を走行し,停止部付近においても幅広く厚い筋腹から成り,短い腱を介して尺骨粗面の近位内側部に停止していた.これら3 頭は,上腕中央部においては,外側から内側へ順に配列していた.しかし肘関節部においては,外側頭と中間頭は浅層に,内側頭は深層に配列していた.また,内側頭の縦断面を観察すると,一部の線維が肘関節包前面に付着する例が存在した.これらの例において肘関節を他動的に屈曲させると,内側頭とともに関節包の前面が浮き上がる様子が観察された.【考察】上腕筋を構成する3 頭は,内側から外側へ配列しているだけではなく,各頭が特徴的な走行や形態を呈するため,それぞれ異なる機能を有することが推測される.上腕筋外側頭は上腕骨の近位外側から遠位中央へ,一方の上腕二頭筋は近位内側から遠位中央へ斜走する.そのため肘関節屈曲時,上腕筋外側頭は前腕近位部を外上方へ,一方の上腕二頭筋は内上方へ牽引すると考えられる.すなわち肘関節屈曲時,外側頭と上腕二頭筋は共同で,前腕軸の調整を行うと考えられる.また外側頭は,3 頭の中で最も遠位に停止し,肘関節屈曲における最大のレバーアームを有するため,肘関節屈曲における最大の力源になることが示唆される.さらに,外側頭は三角筋後部線維から連続するため,三角筋の収縮によって,作用効率が変化する可能性がある.換言すれば,外側頭の作用効率を高めるためには,三角筋後部線維を収縮させた上で肘関節屈曲を行うことが有効であると思われる.内側頭は,肘関節部において深層を走行し,幅広く厚い筋腹を有する.したがって,肘関節屈曲時に収縮して筋の厚みが増すことによって,外側頭のレバーアームを維持または延長し,その作用効率を高める機能を有すると考えられる.また,肩関節の腱板が上腕骨頭を肩甲骨へ引き寄せる作用と同様に,内側頭は,尺骨滑車切痕を上腕骨滑車に引き寄せ,肘関節の安定性向上に寄与すると考えられる.さらに,内側頭が関節包前面に付着する例があることから,肘関節運動に伴う関節包の緊張度を調節する機能が示唆される.換言すれば,内側頭の機能不全によって,関節包前面のインピンジメントや肘関節屈曲拘縮が惹起される可能性が推測される.中間頭は,最も薄く細いため,その機能的意義は小さいと思われる.しかし,上腕中央部においては外側頭と並走し,遠位部においては内側頭に合流することから,外側頭と内側頭の機能を連携する,文字通り‘中間的な’役割を担うと考えられる.上腕筋は,3頭を有することによって,肘関節屈曲における前腕軸の調整,作用効率の向上,肘関節包の緊張度の調節など複合的な機能を担うと考えられる.また,肘関節屈曲に関しては,主として外側頭が機能することが示唆される.【理学療法学研究としての意義】根拠に基づく理学療法を行うためには,とくに筋骨格系に関する機能解剖学的かつ病態生理学的な研究が不可欠である.本研究は,上腕筋の筋頭構成を詳細に観察し,肘関節運動に対する関与について考察を加えたものであり,肘関節拘縮の病態理解や治療の発展にも寄与すると考える.
著者
池田 浩二 中野 隆之 米元 俊一 藤井 信 侯 徳興 吉元 誠 倉田 理恵 高峯 和則 菅沼 俊彦
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.11, pp.875-881, 2012 (Released:2017-12-15)
参考文献数
27

「芋焼酎粕飲料(新飲料)」の生体防御能亢進効果に関する試験を行った。新飲料のガン抑制能試験では,サルコーマを接種したマウスに新飲料区の摂取によって腫瘍の重量増加が抑制されており,両者間は5%水準の有意差であり,ガン細胞増殖抑制効果が認められた。このときの脾臓のNK活性はコントロール区に比べて高い値を示し,この両者間では0.1%水準で有意な差が認められ,非常に強いNK細胞活性を示した。新飲料の摂取によって生体防御能が高く維持され,また,新飲料に含まれるポリフェノールの抗酸化作用によっても腫瘍の増殖が抑制されたと考えられた。
著者
橘田 正人 林 省吾 國田 佳子 浅本 憲 中野 隆
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
巻号頁・発行日
pp.48100562, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】肩甲上神経は,棘上筋および棘下筋を支配する運動神経として知られているが,肩関節包および肩鎖関節包への枝(以下,知覚枝)や皮枝を含むとする報告も散見される(Aszmann et al. 1996, Horiguchi 1980).しかしながら,知覚枝がどの部位において分岐し,どのように走行するかについては,明確な記載が見当たらない.今回,肩甲上神経知覚枝について,分岐部と分布域を解剖学的に観察し,両者の対応関係を明らかにすることを試みた.さらに,肩関節包に分布する神経終末の組織学的所見を含めて報告する.【方法】愛知医科大学医学部において,研究用に供された解剖実習体9 体17 肩を対象とした.僧帽筋・三角筋を切離し,棘上筋・棘下筋・小円筋を剖出した.小円筋を切離した後,棘上筋・棘下筋を肩甲骨の骨膜とともに剥離,反転した.上肩甲横靭帯の腹側を通過する肩甲上神経を同定し,その分岐部および分布域を確認した.肩関節包,肩鎖関節包,肩峰下滑液包に付着する肩甲上神経の分枝を知覚枝と同定し,その分布域を解剖学的に確認した.さらに,棘窩切痕より上部および下部の領域において肩関節包とともに知覚枝を摘出し,薄切切片を作成してHE染色を行い,組織学的に観察した.【倫理的配慮、説明と同意】本研究は,死体解剖保存法に基づいて実施し,生前に本人の同意により篤志献体団体に入会し研究・教育に供された解剖実習体を使用した.観察は,愛知医科大学医学部解剖学講座教授の指導の下に行った.【結果】知覚枝は,17 肩中15 肩(88.2%)で確認できた.知覚枝は,15 肩において計33 枝が存在し,上肩甲横靱帯通過前で分岐するもの(以下,パターン1)2 枝(6.1%),上肩甲横靱帯通過直後で分岐するもの(以下,パターン2)6 枝(18.2%),棘上筋の腹側面(深層)で分岐するもの(以下,パターン3)21 枝(63.6%),下肩甲横靱帯通過直後で分岐するもの(以下,パターン4)4 枝(12.1%)に分類された.また,棘下筋の腹側面で分岐するものは観察されなかった.それぞれの主な分布域は,パターン1 および2 は肩鎖関節包および肩関節包の後面上部,パターン3 は肩峰下滑液包および関節後面の上部から中央部,パターン4 は肩関節包の後面中央下部であった.知覚枝が肩関節包に進入する部位の組織学的観察において,神経線維およびPacini小体様の固有知覚受容器が認められた.【考察】Aszmannら(1996)は,肩関節包の知覚について,前方部は肩甲下神経・腋窩神経・外側胸筋神経が,後方部は肩甲上神経・腋窩神経が支配すると報告している.また,肩甲上神経知覚枝として,上肩甲横靱帯通過付近で分岐し肩鎖関節・肩峰下滑液包・肩関節包後面上部に分布する枝,および棘窩切痕付近で分岐し肩関節包後面中央部から下部にかけて分布する枝を図示している.さらに,肩関節包にはPacini小体,Golgi-Mazzoni小体,Ruffini小体等の固有知覚受容器が存在し,圧力変化や加速度,とくに振動などの深部知覚の感受に関与することが知られている(Rowinski 1985).今回の観察では,肩甲上神経知覚枝は,棘上筋の腹側面(深層)において分岐する例(パターン3)が多く,主に肩関節包上部から後面中央部に分布していた.さらに,知覚枝が肩関節包に進入する部位において,Pacini小体様の固有知覚受容器が認められた.今回の結果および先行研究から,肩甲上神経知覚枝は,主に肩関節包上部から後面中央部の深部知覚を司り,それを中枢神経系へフィードバックすることによって,肩関節の内旋や水平屈曲のコントロールに関与することが示唆される.一方,今回の観察において,肩関節包後面下部に分布する知覚枝は確認されなかった.肩関節後面下部の知覚は,主に腋窩神経が司り,肩関節の外旋や挙上のコントロールに関与すると推測される.【理学療法学研究としての意義】肩関節可動域の改善を目的とする理学療法において,肩関節後面にアプローチする上で,肩関節包に分布する脊髄神経の走行および知覚枝の分布域を考慮することは重要である.さらに,根拠に基づく理学療法を行うためには,解剖学的所見だけではなく組織学的所見を含めて,機能解剖学的かつ病態生理学的な考察が不可欠である.本研究は,肩甲上神経知覚枝が肩関節運動のコントロールに関与する可能性を示唆するものであり,肩関節運動障害の病態理解や治療の発展にも寄与すると考える.
著者
駒澤 伸泰 寺﨑 文生 中野 隆史 河田 了
出版者
日本シミュレーション医療教育学会
雑誌
日本シミュレーション医療教育学会雑誌 (ISSN:21879281)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.76-78, 2020 (Released:2021-10-22)

継続的な変化を続ける医療環境において医療安全を担保し、患者予後を改善するためには、多職種協働が必要である。円滑な多職種協働推進のためには、適切な多職種連携教育が必要不可欠である。しかし、多職種連携教育導入では、倫理的問題、参加人数制限、教育空間確保が課題となる。本稿では、1. 多職種連携教育の課題、2.多職種連携教育におけるシミュレーション教育法の可能性について述べる。
著者
芹澤(松山) 和世 安田 泰輔 中野 隆志 芹澤 如比古
出版者
富士山科学研究所
雑誌
富士山研究 = Mount Fuji Research (ISSN:18817564)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.13-18, 2009-03

2007年9月に山中湖で大型藻類の潜水調査を行ったところ、湖北岸東部のママの森地先の水深1-5mと北東端の平野ワンドの水深2mの湖底で、礫上に着生する糸状緑藻を発見した。その外部形態および内部形態の詳細な観察を実体顕微鏡および生物顕微鏡を用いて行なったところ、マリモの特徴と一致し、フジマリモであると判断した。山中湖ではフジマリモの発見以来、その分布に関する調査が数回行われているが、その分布範囲の縮小や生育環境の悪化が懸念されてきた。そして1993年の調査を最後に本湖ではフジマリモは確認されなくなった。今回、わずかではあるが山中湖では絶滅したと思われていたフジマリモが再発見され、本種の保護と回復のための何らかの対策の必要性が感じられた。
著者
早川 和重 三橋 紀夫 岡崎 篤 中野 隆史 玉木 義雄 山川 通隆 伊藤 潤 平岡 成恭 原 富夫 新部 英男
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.17-24, 1984-02-20 (Released:2009-11-11)
参考文献数
21

From January 1970 to June 1982, among 4, 294 patients with malignant neoplasms, herpes zoster (HZ) occurred in 87 (2.0%) after irradiation. The incidence of HZ infection was rather high in patients with malignant lymphoma (8.3%), epipharyngeal cancer (8.2%), ovarial tumor (4.8%) and testicular tumor (4.2%). Most of these patients received extensive radiation therapy along the spinal cord and/or nerve root.The location of HZ infection was devided as follows : HZ infectious lesion located in the area of (I-A) innervated segment of the irradiated nerve root (74%), (I-B) irradiated dermatome (3%) and (II) not associated with radiation field (23%).In 55 (86%) of 64 patients of I-A, HZ infection occurred within one year, particularly in six months (41 cases (64%)) after the complesion of radiation therapy. This incubation period between completing irradiation and the manifestation of HZ infection was likely to be compatible with the period between radiation therapy and earlier radiation injury. Among 20 patients in Group II, 12 patients (60%) developed HZ infection over a year after irradiation.The cumulative 5-year survival of these patients except for the patients with malignant lymphoma was 42% and HZ infection was considered to have no prognostic significance.In 19 cases treated with 3-Germylopropionic acid sesquioxide (Biositon-8), all were free of severe neuralgia and 11 patients were cured within 2 weeks. Ongoing clinical trial investigating the use of Biositon-8 appears promising against HZ infection.