著者
巽 博臣 升田 好樹 今泉 均 千原 伸也 澤田 理加 中野 皓太 山本 恭輔 菅原 康介 吉田 真一郎 後藤 京子 髙橋 科那子 山蔭 道明
出版者
特定非営利活動法人 日本急性血液浄化学会
雑誌
日本急性血液浄化学会雑誌 (ISSN:21851085)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.17-22, 2013-06-01 (Released:2022-09-16)
参考文献数
13

電解質異常の補正・治療を目的とした持続的血液濾過透析(CHDF)の透析液/補充液/置換液(以下,置換液)の調製について概説した。市販の置換液にはナトリウム(Na)140mEq/L,カリウム(K)2mEq/L,イオン化カルシウム(Ca)2.5mEq/Lが含有されている。高Na血症の場合,市販の置換液によるCHDFでは急激に補正されて脳浮腫を発症する危険があるため,血中Na濃度より低く正常値(140mEq/L)より高い,相対的低Na濃度の置換液を用いる。市販の置換液中にはイオン化Caが高濃度で含まれているため,高Ca血症をCHDFで治療する場合にはCaフリーの置換液を用いる必要がある。一方,高K血症で循環動態が不安定な場合,Kフリーの置換液を使用しCHDFで補正する。CHDFでは電解質など中分子量以下の有用物質も除去されるため,長期間または大量の置換液によるCHDF施行時には無機リンやマグネシウムなどの電解質のモニタリングも重要である。
著者
佐藤 慧 丹保 亜希仁 奥田 勝博 清水 惠子 南波 仁 一宮 尚裕 山蔭 道明
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.454-457, 2021-09-01 (Released:2021-09-01)
参考文献数
10

要約:急性カフェイン中毒は用量依存性の反応を示し,同じくキサンチン誘導体であるテオフィリン中毒に症状や機序が類似する。致死量の急性カフェイン中毒に対して血液透析(hemodialysis, HD)を施行して改善を認めた症例を経験し,経過中のカフェインおよび中間代謝産物のテオフィリン血中濃度の推移から治療戦略について検討した。本症例のカフェインとテオフィリンの血中濃度は,内服後早期で異なった推移を示した。HD施行後,腸管再吸収に伴うカフェイン血中濃度再上昇時も含め,両者は相似的に推移した。HD効果によるカフェイン血中濃度低下の指標や,再吸収による血中濃度再上昇の指標として,テオフィリン血中濃度の推移は参考となる可能性が示唆された。
著者
日本ペインクリニック学会安全委員会 田中 信彦 山蔭 道明 具志堅 隆 關山 裕詩 中塚 秀輝 益田 律子 山浦 健
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.133-142, 2020-06-25 (Released:2020-06-30)
参考文献数
12

日本ペインクリニック学会安全委員会では,2009年より学会認定ペインクリニック専門医指定研修施設を対象に有害事象収集事業を開始した.本稿では2015年の1年間を対象とした第5回調査および2016年の1年間を対象とした第6回調査の結果について報告する.第5回調査では350施設中162施設(46%),第6回調査では348施設中197施設(57%)から回答が得られた.これまでの調査結果と同様に,有害事象のほとんどが鎮痛薬・鎮痛補助薬の副作用と神経ブロック・インターベンショナル治療の合併症であった.鎮痛薬・鎮痛補助薬に関しては,プレガバリン,三環系抗うつ薬およびトラマドール・アセトアミノフェン配合錠の副作用が多く報告された.神経ブロック・インターベンショナル治療に関しては,硬膜外ブロック・カテーテル関連,星状神経節ブロック,肋間神経ブロックおよびトリガーポイント注射による合併症が多く報告された.今後も有害事象に関する情報を学会員間で共有し,痛み診療における安全の確保と質の向上を図る必要がある.
著者
水上 奈穂美 新谷 知久 山内 正憲 橘 信子 高橋 三佳 山蔭 道明
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
The journal of the Japan Society of Pain Clinicians = 日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.111-114, 2012-06-25

上腕骨悪性腫瘍に対して肩甲帯離断術を施行した患者における,術後の幻肢痛ならびに幻肢感覚に対してガバペンチンが奏効した3症例を経験したので報告する.症例1は切断後5日目にnumerical rating scale(NRS)で2-3/10の幻肢痛が出現し,オキシコドン(10 mg,分2)で対応したが,14日目より幻肢痛がNRSで8/10と増悪したためガバペンチン300 mg/日を開始したところ,痛みはNRSで0-1/10に改善した.症例2は切断前から腫瘍による神経障害痛が出現しており,ガバペンチン300 mg/日の投与によりNRSで5/10から3/10になり痛みの程度の改善を認めた.切断後9日目より生じた右上腕全体の幻肢感覚に対しても,同量のガバペンチンが奏効し幻肢感覚は消失した.症例3は切断後2日目より重量感を伴う幻肢痛が出現したが,ガバペンチン600 mg/日で痛みはNRSで6/10から2/10に改善した.四肢切断後の幻肢痛や幻肢感覚に対して,ガバペンチンは有効であることが示唆された.