著者
増田 賢嗣 今泉 均 橋本 博 小田 憲太朗 古板 博文 松成 宏之 照屋 和久 薄 浩則
出版者
水産総合研究センター
雑誌
水産技術 (ISSN:18832253)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.7-13, 2011-10
被引用文献数
2

現在ウナギ仔魚用飼料としてはアブラツノザメ卵を主体とする飼料 (SA)が用いられている。この飼料により飼育が可能になったが,サメ卵の中でも特に本積の卵が優れていることは確認されていなかった。加えて,シラスウナギ量産に対応するためには新たな飼料原料を見出す必要がある。本研究ではイタチザメ卵主体飼料(GC)およびアイザメ卵主体飼料(CA)を調製し、 SAとの初期飼育の比較試験を行った。その結果GC区、CA区ともにふ化後21日まで生残が認められ,GC区の生残率および両試験区の終了時全長はSA区に劣ったものの、CA区の生残率はSA区に匹敵した。これにより複数のサメ卵が飼料原料として利用可能であることが明らかとなった。
著者
巽 博臣 升田 好樹 今泉 均 千原 伸也 澤田 理加 中野 皓太 山本 恭輔 菅原 康介 吉田 真一郎 後藤 京子 髙橋 科那子 山蔭 道明
出版者
特定非営利活動法人 日本急性血液浄化学会
雑誌
日本急性血液浄化学会雑誌 (ISSN:21851085)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.17-22, 2013-06-01 (Released:2022-09-16)
参考文献数
13

電解質異常の補正・治療を目的とした持続的血液濾過透析(CHDF)の透析液/補充液/置換液(以下,置換液)の調製について概説した。市販の置換液にはナトリウム(Na)140mEq/L,カリウム(K)2mEq/L,イオン化カルシウム(Ca)2.5mEq/Lが含有されている。高Na血症の場合,市販の置換液によるCHDFでは急激に補正されて脳浮腫を発症する危険があるため,血中Na濃度より低く正常値(140mEq/L)より高い,相対的低Na濃度の置換液を用いる。市販の置換液中にはイオン化Caが高濃度で含まれているため,高Ca血症をCHDFで治療する場合にはCaフリーの置換液を用いる必要がある。一方,高K血症で循環動態が不安定な場合,Kフリーの置換液を使用しCHDFで補正する。CHDFでは電解質など中分子量以下の有用物質も除去されるため,長期間または大量の置換液によるCHDF施行時には無機リンやマグネシウムなどの電解質のモニタリングも重要である。
著者
巽 博臣 升田 好樹 今泉 均 吉田 真一郎 坂脇 英志 後藤 京子 原田 敬介 信岡 隆幸 平田 公一
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.1245-1250, 2013 (Released:2013-12-25)
参考文献数
17
被引用文献数
2

【目的】重症患者における早期経腸栄養開始後は便秘・下痢が問題となる。排便量から緩下剤の継続・休止や必要な処置・検査などを決定する排便コントロール基準 (以下、本基準) の効果について検討した。【対象および方法】ICUで経腸栄養を7日以上継続した53症例 (導入前群24例、導入後群29例) を対象とした。「一日排便量≥300g」を下痢、「48時間以上排便がない状態」を便秘と定義し、経腸栄養開始後1週間の排便状況を両群間でレトロスペクティブに比較検討した。【結果】一日排便量の1週間における推移は導入前後で交互作用がみられた。7日間における下痢の頻度は導入前群2.5±0.3日、導入後群2.0±0.3日と有意差はなかったが、便秘の頻度は1.5±0.3日から0.7±0.2日に、便秘または下痢の頻度は4.0±0.3日から2.6±0.3日に有意に減少した。【結語】排便量に従って薬剤投与や浣腸処置の追加を判断できる本基準の導入により、排便量および下痢・便秘の頻度が減少した。本基準の導入により適切な排便コントロールが可能となり、経腸栄養管理を有効かつ安全に実施できると考えられた。
著者
西岡 豊弘 森 広一郎 菅谷 琢磨 手塚 信弘 武部 孝行 今泉 均 久門 一紀 升間 主計 中井 敏博
出版者
日本魚病学会
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.69-72, 2010-06-15

クロマグロの種苗生産中に発生した大量死の原因についてウイルス学的に検討した。大量死は主にふ化20日齢までの仔魚に発生し、一部の事例では死亡魚の中枢神経系および網膜組織に顕著な空胞形成が認められ、それらの病変部にベータノダウイルスの抗原が蛍光抗体法により検出された。またPCRおよびウイルス分離試験においても本ウイルス(RGNNV遺伝子型)の存在が確認された。これらの結果から、VNNがクロマグロ仔魚の大量死に関与していると考えられる。
著者
友田 努 黒木 洋明 岡内 正典 鴨志田 正晃 今泉 均 神保 忠雄 野村 和晴 古板 博文 田中 秀樹
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.715-721, 2015 (Released:2015-08-15)
参考文献数
25
被引用文献数
12

マリンスノーの供給源となる可能性のある餌料生物を培養し,それらの産生物質を含んだ培養水について,ふ化後 5-28 日齢ウナギ仔魚に対する給与効果を観察した。微細藻類 4 種を用いた事例では,10-28 日齢仔魚が藻体とともに増殖過程で産出される透明細胞外重合体粒子(TEP)を摂取することを確認した。一方,尾虫類を用いた事例においても,9 日齢仔魚が発生段階初期の幼生と放棄ハウスを摂取することを確認した。これにより,飼育条件下の人工仔魚が天然仔魚と同様にマリンスノーの起源物質を摂取することを追認できた。
著者
黒田 浩光 土屋 滋雄 杉野 繁一 七戸 康夫 山根 真央 升田 好樹 今泉 均
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.163-168, 2005-04-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
10
被引用文献数
1

急性膵炎と急性肝不全に陥った急性バルプロ酸(valproate sodium; VPA)中毒の1例を経験した。症例は53歳の男性で妻とともに倒れているところを発見され,当院に搬入された。搬入時意識レベルはJCS 300で嘔吐,尿失禁がみられた。血液検査では,高ナトリウム血症と高乳酸血症,高アンモニア血症があった。搬入8時間後に妻がVPAを処方されていたことが判明し,搬入6時間後のVPA血中濃度1,555(治療域100μg/ml以下)μg/ml,アセチルサリチル酸(acetylsalicylate; ASA)濃度114μg/ml(治療域150-300μg/ml)だった。臨床症状と併せて急性VPA中毒と診断し,搬入15時間後に直接血液灌流を施行した。第2病日には膵酵素と肝逸脱酵素の上昇,DICを認めた。腹部造影CT上,肝部分壊死と重症急性膵炎であることが判明した。患者は多臓器不全が進行し,第3病日死亡した。他院に搬入された妻も搬入6時間後のVPA血中濃度は1,534μg/mlだった。搬入8時間後に直接血液灌流を施行し,意識レベルの改善がみられた。経過中,膵酵素の上昇,DICがみられたものの肝障害や急性膵炎の所見は認めず,順調に回復し第18病日ICUを退室した。本症例のようにVPAの大量服用にASAを同時に服用した場合には,VPAの中毒症状が増強される可能性が示唆された。また,重症急性VPA中毒では早期の血液浄化が救命に繋がるのではないかと考えられた。
著者
巽 博臣 升田 好樹 今泉 均 杉山 由紀 本間 広則 黒田 浩光 浅井 康文
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.187-190, 2009-04-01 (Released:2009-10-15)
参考文献数
12
被引用文献数
2 4

重症患者では,胃蠕動の低下から胃内容の停滞,逆流をしばしば経験する。高度侵襲後の胃内容停滞が生じた重症患者に対し,六君子湯(以下,本剤)が著効した3症例を経験した。症例1は63歳女性で,Wegener肉芽腫症に合併した重症肺炎のため人工呼吸管理中であった。胃管排液量が500 ml·day−1前後と増加したため本剤を投与し,投与3日目から急速に排液量が減少した。症例2,症例3は胸腹部大動脈瘤術後の患者で,空腸チューブおよび胃管から経腸栄養を開始したが,胃管排液量が250~500 ml·day−1に増加したため本剤投与を開始し,投与2日目から排液量が減少した。いずれの症例も本剤投与による排液量減少から,円滑な経腸栄養の施行が可能となった。従来,本剤の薬理効果として胃運動機能改善,胃粘膜血流量増加,胃粘膜防御因子増強などが報告され,集中治療を要する重症患者で胃内容停滞症例にも有用であると考えられた。
著者
今泉 均 角田 一眞 渡辺 明彦 升田 好樹
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.343-347, 1988-07-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
12

虚血性心疾患の既往のない, 69歳男性の腹部大動脈瘤破裂の緊急手術前に, 中心静脈カテーテル挿入のため右内頸静脈穿刺時, 突然STの上昇と共に徐脈, 血圧低下を認めた. 腹部大動脈瘤患者では高率に冠動脈疾患を合併することから, 冠動脈硬化による冠動脈血管の tonus の亢進した状態下に, 中心静脈穿刺時の迷走神経刺激が誘因となって冠動脈スパズムが発生したものと考えられた.明らかな虚血性心疾患の既往がなくても全身的に高度な動脈硬化性疾患を有する患者の麻酔管理においては, 冠動脈硬化病変の存在並びに冠動脈血管の tonus の亢進によって, 冠スパズムや重症な不整脈の発生し易いことを十分に念頭におくべきである.
著者
澤田 健 黒田 浩光 升田 好樹 今泉 均 巽 博臣 小濱 卓朗 秦 史壯 浅井 康文
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.71-75, 2007-01-01 (Released:2008-10-24)
参考文献数
9
被引用文献数
6 4

試験開腹術にて早期診断できなかった非閉塞性腸管虚血症 (nonocclusive mesenteric ischemia, NOMI) の一例を経験した。症例は76歳男性で, 腹痛を主訴に来院し, S状結腸憩室穿孔に対して, 発症から9時間後にS状結腸切除と人工肛門造設を行った。入室24時間後にショックとなり, 腸管壊死を疑い試験開腹術を行った。術中, 腸管壊死を示唆する所見はなかった。その後も血清乳酸値が上昇し, 再手術から30時間後の胸腹部造影CTでは腸管全体の造影効果の低下を認めたが, 腸間膜動脈・門脈などに血栓を示唆する所見はなかった。その後, 血清乳酸値は低下傾向を示した。しかし, 創が離開し腹腔内を観察したところ, 十二指腸から大腸まで壊死しており保存的治療としたが, 多臓器不全により死亡した。開腹による一回の腸管漿膜面からの肉眼的な判断では, NOMIの診断を見誤る可能性がある。血管造影はもちろんであるが, 開腹にて判断がつかない場合には, 滅菌ドレープを用いて被覆した状態での腹壁開放創とした腸管観察も一つの手段と考えられた。また, 腸管虚血による血清乳酸値の上昇を示す症例で, 上昇後にみられる血清乳酸値の低下は腸管虚血の病態改善を示すものではない可能性が示唆された。
著者
田中 秀樹 野村 和晴 風藤 行紀 今泉 均 増田 賢嗣
出版者
農林水産技術情報協会
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.18-22, 2011 (Released:2012-12-06)

ウナギは盛んに養殖されているが,飼育下で自然に産卵しない魚であり,その一生には多くの謎が残されている。そのため,人工的に成熟させて受精卵を得ること,ふ化後,餌を与えて育てること,長期にわたるレプトセファルスと呼ばれる幼生期を経て透明な稚魚,シラスウナギに変態させることなど,すべてが困難であった。水産総合研究センターではこれまでの研究成果を基に,2002年に世界で初めて人工的にシラスウナギを作り出すことに成功し,昨年春には人工ふ化ウナギを育てて親とし,さらに次世代を得る「完全養殖」を達成した。この技術により,天然資源に依存しないウナギの養殖が理論的には可能となり,将来はウナギの育種も期待される。