著者
山本 雅子 西江 宏行 中塚 秀輝
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.62-66, 2019-02-25 (Released:2019-03-12)
参考文献数
15

三叉神経第III枝領域に発症した帯状疱疹に,顎骨壊死を合併した症例を経験した.患者は77歳の男性で,既往に糖尿病があり,左耳痛と左下の歯の痛み,舌痛を主訴に近医歯科を受診した.症状が改善しないため発症7日目に当院口腔外科を紹介された.左下顎根尖病変に加え,左耳介と頬部から下顎にかけて自発痛を伴う皮膚びらんと腫脹が広がっていた.帯状疱疹の診断で皮膚科に入院となり,アシクロビル投与が開始されたが,翌日に異常行動などが出現したためアシクロビル脳症を疑い,投与を中止し免疫グロブリン投与が行われた.疼痛コントロールが不良であったためペインクリニックに紹介されたが,当科での治療開始後,疼痛が改善したため退院した.発症51日目に左下の歯牙脱落の訴えがあり,当院口腔外科に紹介した.左下顎骨壊死との診断で,全身麻酔下に腐骨除去術が施行された.帯状疱疹が三叉神経第II,III枝領域に発症した場合,続発的に歯の脱落や顎骨壊死を発症する報告があり,帯状疱疹の合併症の一つとして認識しておく必要がある.本症例は帯状疱疹に対して十分な抗ウイルス薬投与が行えなかったことが,発症の一因であった可能性が考えられた.
著者
中塚 秀輝
出版者
特定非営利活動法人 日本血管外科学会
雑誌
日本血管外科学会雑誌 (ISSN:09186778)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.137-140, 2018-04-25 (Released:2018-04-27)
参考文献数
12

閉塞性動脈硬化症に代表される血管疾患は,病状の進行とともに安静時疼痛または潰瘍・壊死を伴う.とくに重症虚血肢の疼痛は強く,管理に難渋するため,薬物療法,交感神経節ブロック,硬膜外ブロック・末梢神経ブロックなどの区域麻酔,脊髄刺激電極,高気圧酸素療法などさまざまな治療を組み合わせて用いる.高齢者や重症心疾患を有する患者が多いため,循環系への影響が少ない治療が望ましい.区域麻酔は必要な範囲にのみ麻酔効果を発揮する点で有利であり,超音波ガイド下末梢神経ブロックでは効果を必要な部位に正確に限定させることができる.さらに体動時の痛みにも効果的である点で,オピオイドなどの全身投与による鎮痛に比べて非常に優れている.重症虚血肢の疼痛管理においては,薬物療法とともに,超音波ガイド下神経ブロックなどの区域麻酔との併用が有用であり,慢性化した場合には心理社会的要因も考慮して治療に当たる.
著者
日本ペインクリニック学会安全委員会 田中 信彦 山蔭 道明 具志堅 隆 關山 裕詩 中塚 秀輝 益田 律子 山浦 健
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.133-142, 2020-06-25 (Released:2020-06-30)
参考文献数
12

日本ペインクリニック学会安全委員会では,2009年より学会認定ペインクリニック専門医指定研修施設を対象に有害事象収集事業を開始した.本稿では2015年の1年間を対象とした第5回調査および2016年の1年間を対象とした第6回調査の結果について報告する.第5回調査では350施設中162施設(46%),第6回調査では348施設中197施設(57%)から回答が得られた.これまでの調査結果と同様に,有害事象のほとんどが鎮痛薬・鎮痛補助薬の副作用と神経ブロック・インターベンショナル治療の合併症であった.鎮痛薬・鎮痛補助薬に関しては,プレガバリン,三環系抗うつ薬およびトラマドール・アセトアミノフェン配合錠の副作用が多く報告された.神経ブロック・インターベンショナル治療に関しては,硬膜外ブロック・カテーテル関連,星状神経節ブロック,肋間神経ブロックおよびトリガーポイント注射による合併症が多く報告された.今後も有害事象に関する情報を学会員間で共有し,痛み診療における安全の確保と質の向上を図る必要がある.
著者
中塚 秀輝 佐藤 健治
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.836-846, 2008-09-12 (Released:2008-10-17)
参考文献数
26

ロクロニウムは効果発現が速いことを特徴とするステロイド系の中時間作用性筋弛緩薬であり, 筋弛緩効果からの回復を考えるときには, 揮発性吸入麻酔薬など筋弛緩薬の効果を増強する因子の影響を考慮する必要がある. 抗コリンエステラーゼ薬により筋弛緩作用の拮抗が可能であるが, 筋弛緩からの必要十分な回復の判断は難しく, 拮抗薬の投与時期とその副作用には注意が必要であり, 筋弛緩モニターによる管理を要する. スガマデクスはロクロニウムを直接包接することで筋弛緩作用を拮抗する直接的筋弛緩拮抗薬である. 臨床試験では深い筋弛緩状態からの迅速な拮抗も可能であり, 重篤な副作用もみられていない. 臨床使用可能になれば, 術中・術後の患者の安全性に寄与すると考えられ, 今後の発展が期待される.
著者
佐藤 健治 溝渕 知司 西江 宏行 中塚 秀輝 佐藤 哲文 水原 啓暁
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

我々はバーチャルリアリティ応用・鏡療法(VR/MVF)を開発し、様々な鎮痛方法でも痛みが軽減しない幻肢痛やCRPS(複合性局所疼痛症候群)患者での鎮痛効果を確認・報告した。当該研究ではVR/MVFの鎮痛効果をより継続させるためVR/MVF治療を音情報に変換し音楽を作成するシステムを開発した。我々はVR/MVF治療では体内に備わる痛みを和らげる機構(内因性オピオイドシステム)が活発になると考えていて、VR/MVF治療中に作成した音楽を家に持ち帰り日常生活の場で聴くことで、体内に備わる痛みを和らげる機構が再び活発となり痛みが和らぐと期待している。