著者
山野井 徹 門叶 冬樹 加藤 和浩 山田 努 鎌田 隆史 今野 進
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.12, pp.637-652, 2016-12-15 (Released:2017-03-15)
参考文献数
72
被引用文献数
1 5

庄内砂丘のイベント堆積物は古砂丘(縦列)と新砂丘(横列)の間に挟まれるが,その最高位は37.9mに達する.イベント層は,北部砂丘ではTo-a(915年)の下,南部砂丘では上にあり,14C年代は,北部は700年代後半から800年代,南部は1000年代から1100年代前半にある.イベント層の成因は現世津波堆積物との比較などから津波と考えられる.この津波は遡上流の滞留で泥質,戻り流れで粗粒な堆積物を残した.対応する古地震は,北部では「850年出羽地震(嘉祥地震)」があるが,南部で相当する記録は見当たらない.ただし,周辺遺跡を変形させた地震が対応するであろう.イベント堆積物は新砂丘の下底に極めて良好に保存されているが,それは各イベントの直後に海浜環境が急変し,飛砂が堆積を再開したからである.すなわち,庄内砂丘の新砂丘は,両イベントを契機に堆積を始め,我が国有数の規模の海岸砂丘へと成長している.
著者
山野井 徹
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.102, no.6, pp.526-544, 1996-06-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
50
被引用文献数
20 16
著者
高橋 清 山野井 徹
出版者
〔長崎大学教養部〕
雑誌
長崎大学教養部紀要 自然科学篇 (ISSN:02871319)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.p187-220, 1992-01

The junior author, Yamanoi, collected and analyzed 22 siltstone and claystone samples from the Katsuhira Formation spanning the Cretaceous/Tertiary (K/T) boundary in Kawaruppu area of eastern Hokkaido. The K/T boundary was decided on the basis of planktonic foraminifera by Saito et al. (1986). Recently, the senior author, Takahashi, has examined 66 slides which were prepared by Yamanoi and recognized 64 triprojectate, 6 oculata, and 14 other pollen grains which are palynostratigraphically useful (Tables 1 and 2). However, a remarkable palynofloral change at/near the K/T boundary in Kawaruppu afea is not recognized. Especially, many kinds of the triprojectate-oculata pollen did not disappear at the K/T boundary. On the other hand, the major palynofloral change at the K/T boundary in western North America occurred, including the abrupt disappearance of all species of Aquilapollenites except A. spinulosus, as well as the disappearance of Wodehouseia spinata, Cranwellia striata, Proteacidites spp., and others. They are replaced by such species as Wodehouseia fimbriata, Alnus trina, and Carpinus subtriangula (Lerbekmo et al., 1979). In this region the palynomorph break takes place a few meters above the highest occurrence of dinosaur bones, notably Triceratops. In short, the K/T boundary in this region is defined by the palynofloral change. A climatic condition of biotic change at Kawaruppu in eastern Hokkaido may be different from that in western North America. This problem must be solved in the near future.
著者
山野井 徹
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.17-25, 2005-05-25 (Released:2010-06-28)
参考文献数
6

道路開設によって地すべり地の頭部に良好な露頭が現れ, この露頭の観察を行った。この区域での堆積物の地質学的記載を行い, 成因的に3つの相に区分した。それらの相は地すべり侵食の1サイクルとしての堆積シーケンスである。すなわち,(1) 斜面にマスムーブメントとしての地すべり事件が発生する (「事件相」の形成) 。この際, 凹凸のある低地ができて堆積の場が生ずる。 (2) 低地の凹凸は, そこに流入する水の作用が主体となって, 侵食と埋め立てが速やかに進行して平滑化が進む (「修復相」の形成) 。 (3) やがて侵食物質の供給が弱まると風成層の堆積が卓越し, ゆっくりとした堆積により表層が覆われていく (「被覆相」の形成) 。地すべり地のシーケンスや多重シーケンスを解析することにより地すべり地の詳細な履歴を知ることができる。
著者
山野井 徹
出版者
山形応用地質研究会
雑誌
山形応用地質
巻号頁・発行日
vol.20, pp.19-26, 2000-03-31 (Released:2015-08-24)

はじめに 今年は2000ということで,タイムカプセルを何年ぶりかで掘り出し,過ぎた日々を懐かしむ光景が各地で報道されている.そしてまた今年もあちこちで新たにタイムカプセルが埋められていると聞く.そうした楽しい行事に水を差すつもりはないが,タイムカプセルはなぜ土の中に埋めるのか,その意味は考えておく必要があろう.なぜなら,そうしたことが主に学校など教育現場で行われているからには,「なぜ埋めるの?」という生徒の質問に的確に答えられる準備を要するからである.答えが「埋めないと紛失するから」では適切な答えとはいえない.それなら「昔のものは土の中から出てくるから」との答えでは,昔の土器などは当時の人たちが土の中に捜めたのか,という疑問が残る.いや,いちいち埋めるはずがない.ならば土器が自ら土の中にもぐり込んだのか?そんなはずもない.ではどうして土器は土の中から---? かつて井尻(1966)は大学生からの同様の質問に,とっさの苦しまざれに「そりゃ,落ち葉や枯れ葉がつもって土になるからだよ」答えて,なんとお粗末な回答であったかと自省している.生物の遺体はまれに化石となって残るが陸上では土にはならず,大部分は水と炭酸ガスに分解してしまう.このように,地表の動植物は土にはならないので,土器がどうして土の中から出てくるかは,分かっているようで,分かっていないことである.タイムカプセルを土の中に埋めることの意味の適否は,土の根本的な性質にかかわることのように思える. ところで,こうした土器や石器を埋積している土についてであるが,旧石器時代の石器は赤土の中から,縄文時代の遺物は黒土の中からでてくることが多い.また,縄文期のものが赤土から出てくることはあっても,旧石器のそれが黒土から出ることはない.すなわち,黒土に埋没する土器は縄文期以降に限られるという不思議な必然性がある.この理由を的確に答えた考古学者もいない.そこで,小論では黒土と縄文時代はどんな関係にあったのであろうかということを考えるが,それには先ず黒土とは何かを明らかにしなければならない.従来黒土は「クロボク土」とよばれ,「火山灰土」と考えられてきた.地質学でいう「火山灰」とは「テフラ」と同義で,火山の噴出物が直接堆積したもので,日本列島上では酸性のマグマに由来する優白色もののが多い.火山灰が黒色であることは伊豆やハワイのような玄武岩質のマグマからなる火山活動であれば理解できるが,日本列島上の大部分の火山は安山岩や石英安山岩質のマグマからなるので,灰色の火山灰はあってもクロボク土のように黒色である火山灰が広く分布していることは地質学的に理解し難いことである.それにもかかわらず,土壌学においては,クロボク土とは「火山灰土」とされている.地質学で火山灰とはいえないものが土壌学ではなぜ火山灰土になるのか.そうしたことの検討を通し,黒土の成因が明らかにし,さらにまた黒土と縄文人との関係についても考えてみたい.
著者
山野井 徹
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.102, no.6, pp.526-544, 1996-06-15
参考文献数
51
被引用文献数
21 16 20
著者
高橋 清 山野井 徹
出版者
〔長崎大学教養部〕
雑誌
長崎大学教養部紀要 自然科学篇 (ISSN:02871319)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.p187-220, 1992-01

The junior author, Yamanoi, collected and analyzed 22 siltstone and claystone samples from the Katsuhira Formation spanning the Cretaceous/Tertiary (K/T) boundary in Kawaruppu area of eastern Hokkaido. The K/T boundary was decided on the basis of planktonic foraminifera by Saito et al. (1986). Recently, the senior author, Takahashi, has examined 66 slides which were prepared by Yamanoi and recognized 64 triprojectate, 6 oculata, and 14 other pollen grains which are palynostratigraphically useful (Tables 1 and 2). However, a remarkable palynofloral change at/near the K/T boundary in Kawaruppu afea is not recognized. Especially, many kinds of the triprojectate-oculata pollen did not disappear at the K/T boundary. On the other hand, the major palynofloral change at the K/T boundary in western North America occurred, including the abrupt disappearance of all species of Aquilapollenites except A. spinulosus, as well as the disappearance of Wodehouseia spinata, Cranwellia striata, Proteacidites spp., and others. They are replaced by such species as Wodehouseia fimbriata, Alnus trina, and Carpinus subtriangula (Lerbekmo et al., 1979). In this region the palynomorph break takes place a few meters above the highest occurrence of dinosaur bones, notably Triceratops. In short, the K/T boundary in this region is defined by the palynofloral change. A climatic condition of biotic change at Kawaruppu in eastern Hokkaido may be different from that in western North America. This problem must be solved in the near future.
著者
山野井 徹
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.307-318, 2002-12-25
参考文献数
11
被引用文献数
3

道路開設によって現れた地すべり地の頭部の露頭の堆積物 (砂質層と黒土層) が解析された。地すべりが発生すると頭部のIII Aブロックには, その凹凸を埋めるように砂質層が堆積し, 平坦化されると黒土層が堆積した。それらの堆積物の荷重が次の地すべりを生むというサイクルが数次にわたりくり返されていた。このブロックの地すべりの進展は地すべり地全体が地形的な老年期化に向かう中で位置付けられた。こうした地すべり地の歴史的変遷の解明の上に予防対策について言及された。
著者
阿子島 功 山野井 徹 川邊 孝幸 八木 浩司
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.110, 2003

<B>1.問題点</B> 山形盆地南部の上山断層は、酢川火山岩屑流台地を上下2面に分ける、地形的には比較的明瞭な活動度B級の断層である。 山形盆地西縁断層群については、科技庁の平成9から11年度交付金による山形県の調査によって活動歴に関する資料が増えた。 地震調査研究推進本部の平成14年5月評価では、予想される最大地震規模7.8、活動間隔約3,000年、最近30年間の地震確率は ほぼ0から7%と 社会的にも影響の大きい評価となった。 その根拠のひとつは、総延長を上山断層を含めて約60kmとしたことである。 しかし、盆地南半西縁の山辺町から山形市村木沢の一連の南北性の断層群と上山断層との連続性には問題がある。 西側隆起という共通性はあるが、上山断層の走向はNE-SW方向で、両者は斜交し、上山断層の走向方向からはむしろ山形盆地東縁の断層に連なる。上山断層の詳細な活動歴・活動様式はわかっていなかった。 地域整備振興公団の協力を得て調査した。 <B> 2.調査手法</B> 上山断層北半部でトレンチ3ケ所、ボーリング2本、酢川火山岩屑流上位面の凹地の堆積層中の広域火山灰検出のためシ゛オスライサーによる採取3本である。<B> 3.調査結果</B><BR> <B> 1) 断層の累積変位量と長期的平均変位速度</B> ボーリングb-1は 断層崖の中腹にあり、上位面頂部より約25m低い。-30mまで粗大な岩屑よりなる火山岩屑流堆積物で断層破砕帯はない。<BR> 下位面のb-2はGL-1から-4mが表層堆積物、-4から-43mまでは一部に木片を含み、やや泥質な部分を含む火山岩屑流堆積物、 -60mまでは岩屑流堆積物である。 -49m付近にせん断面あり。 b-1,2とも第三紀凝灰岩に着岩しなかった。 断層の累積変位量:断層崖両側の酢川火山岩屑流堆積層の頂部の比高(b-1頂+25mとb-2の-4mとの比高)は約46mである。 酢川岩屑流の年代:b-2の-23m,-32mの木片(周辺に腐植層などが挟まれていないので岩屑流に巻き込まれたものと解釈)の14C年代は 後述T-1の年代よりも新しくなり上下逆転した。 上位面の凹地堆積層6mのうち2枚の火山灰をそれぞれNm-Kn,Ad-N1に対比し(八木が別報とする)、2層の火山灰年代を外挿すると、火山岩屑流台地面が形成された年代は 約75,000年前となる。 よって、長期的平均変位速度は約0.6m/1000年(1.8m/3000年)となる。<B>2)最新の断層運動</B> トレンチT-3(探さ3m、延長6m)では、黒ボク土を含む礫層と締まった砂礫質粘土層が 逆断層状に接している。イベントは2回以上、変形を受けた礫層の年代は3,430+_50(yrBP)、覆土の年代は270+_40(456から5 Cal yrBP)である。 上下方向の単位変位量は1.5m程度。<B>3)未固結堆積層の塑性変形</B> T-1、T-2では、断層破砕帯は認められないが、顕著な地層の変形がみられる。 T-1(8m深、20m長)に酢川火山岩屑流堆積層の2次堆積層がみられ、地表面傾斜が約10°、 トレンチ上部の地層の傾斜が約20°である。高角度の明瞭な断層破砕帯はないが、3種類の変形構造が認められる; 1)層理面の変形で波高1.5m程度の波状および炎状の断面形を示す。 2)層内の微小なせん断構造。 3)幅数cmで、延長が数m以上つづく低角度・南傾斜のせん断面である。 T-2(6m、30m長)では、岩屑流堆積層の2次堆積層のなかに著しい変形構造が認められる。 最大波高2mで、地層のひきずり変形構造、 褶曲構造、礫の配列異常など。変形のひきずり方向は南側へ押し出すような方向である。変形している地層の年代測定を行った結果、変形の時期はT-1では46,300±630(yrBP)以降、T-2では27,870±190(yrBP)以降であった。断層活動の強振動によって未固結の堆積層が塑性変形した可能性がある。<BR>図1 上山断層北部の調査地点 CTO-76-19に記入